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某中核都市の夕方。駅近い繁華街と歓楽街の中間に位置する俺のアルバイト先、焼き鳥かのえは、午後五時ジャストに開店した。と、ほぼ同時に24の席は埋まり、どこか優雅で笑顔の絶えない客席側とは違い、厨房の中は苛烈極まる戦場と化した。しかもカウンターに座る8名のお客さまの視線を気にしつつ、追加の注文などにも対応しなければならない。疲れる。
「はぁい。おまたせしましたぁ♪。レオさぁん?生大さん2つでお願いできるぅ?。はぁい、ただいまぁ。…すずめぇ?お任せ3つ。お願いえ?」
「あーい!よろこんでーっ!。……こら!獅子神っ!返事しろっ!」
「は?はーい!よろこんでえー!。(いきなり蹴られた。厳しいなぁ…)」
開店して3時間。洗い場の食器が山積みで気になってはいるのだが注文が止まらない。しかし何よりすずめ軍曹の手際の良さには酷く驚かされた。声高な返事よりも早く必要な器を取り出し、背後の盛り付け台に並べる。そして定番のサイドメニューも素早く冷蔵庫から取り出して捌き終えた。彼女は全ての商品の調理時間を完全に記憶していて、早く提供できる料理から確実に熟しているのだ。これぞプロ料理人の創意と工夫と技だろう。しかも軍曹殿は2コも歳下で美少女なのだ。余りに非現実すぎて笑えた。
「へぇ。おおきにぃ。すずめちゃん?。お任せさん、ひとつ追加なぁ?」
「あーい!喜んでー!。こらっ!お前も返事しろって!。あいお待ち♪。次だ獅子神!お任せのセットを急げよ?。もう焼き上がっている!」
「はっ?はーいっ!喜んでーっ!。(また蹴るんだ。痛くはないけれど、蹴るたびにおっぱい弾んでるでますよ?。…ブラくらい着けてくれよ…)」
俺は並べた茶色い陶器の皿に、ちぎったキャベツを乗せて軍曹殿へと渡した。その脇ではフライヤーと呼ばれる揚げ物専用の器械に入った4人分の鶏のカラアゲの仕上がり具合を確認しつつ、銀色のビールサーバーから凍らせた大きなジョッキへと生ビールを注いでいる。社会人1年生の初仕事としてはかなりハードだが少し楽しい。いつもならもう一人、ホール回りと調理補助を熟す女の子がいるらしいのだが…今日は遅れてくるそうだ。
「すずめちゃん?。カウンターさんの出汁巻きさんはまだですのん?」
「ああっ!。あと5分くださーい!。おい!獅子神!。おまえ巻けっ!。ウチは焼き鳥から目が離せないんだっ!。できるだろっ!?急げよ!?」
「えっ!?。すずめ軍曹殿っ!。…れ、レシピはあるのでしょうかっ?」
「卵が3個!。あそこにある昆布出汁がその半分っ!。そしてみりんが小さじ二分の一と!薄口醤油を同量だっ!。よく混ぜて強火で焼けよっ!?わかったらさっさとかかれっ!。あと4分しかないっ!。急ぐんだッ!」
「はいっ!喜んでっ!。(む!無茶振りが過ぎるぞ!?すずめ軍曹殿!。出汁巻きってえ〜と?ハイレベルな卵焼きだっけか。焼くしかないな…)」
そんなこんなでバタバタとしながらも俺は次第とコツを掴んでいった。無茶を言う割には面倒見の良いすずめ軍曹殿と、ホールのお客様に綺麗な笑顔で愛想を振りまきつつ、そつなく注文を取る、店のオーナー七月かのえさん。これまた驚くほどの黒髪美人で、控え目な柄の着物姿がよく似合っていた。しかも老若男女なお客様たちのハートをガッツリ鷲掴んでいる。
「かのえさぁん。すずめちゃあん。遅くなってごめんなさぁい。あれ?この男が新人?。えー?女の子しか雇わないんじゃなかったんで…す…か?」
裏口から誰かが入ってきた。厨房に入るとそう言って二人に謝っている。俺は注文の合間を縫って焼き鳥皿などを洗っていた手を止めた。恐らくは遅れて来ると聞いていた先輩だろう。社会人1年生として、そして今日からお世話になる新参者として、きちんと挨拶だけはしておかないとだ。支給品の朱色な前掛けで簡単に手を拭いて振り返る。何事も最初が肝心だ。
「あ。はじめまして先輩。俺、今日からお世話になる獅子神……あ…れ?」
「えっ?。…………現実…なの?……これ。…………夢じゃ……ないよね?」
俺とその蒼い瞳の先輩は見つめ合ったまま固まってしまう。かのえオーナーやすずめ軍曹殿と比較すれば見劣りもするが、紛うことなく美女の域には入るだろう。赤の効いた長い髪を太く一本に編み込んでいるその独特なヘアスタイルには嫌と言うほどに見覚えがある。俺の背筋が凍りついた。
「えーーーっ!?。なんでレオがここにいるのよぉ♡。もうっ!もの凄く探してたのよぉ♡。死ぬほど会いたかったんだからぁーっ♡ああーん♡好き好き好き好き好き好き好き大好きぃ♡。もう離さないんだからねー♡」
「うわっ!やめろ!こんな所でマズイってばカリンっ!。うむぐっ!?」
またモロに抱きとめてしまった。俺の背後はカウンター席だ。もしも避ければ座るお客様たちが大惨事になることは間違いがないだろう。しかも今日は就職の初日。かのえオーナーに迷惑だけはかけられない。まるで靭やかな獣の様に、卑猥に乳房を弾ませながら飛びかかってくる紅い髪のケモノビト。またも喰らったハードなバストプレスに…俺の呼吸は止まった。
「………なんだ獅子神ぃ。きさま…カリンちゃんと恋仲だったのかぁ?」
「ぷはっ!。違います軍曹殿!幼馴染みってだけで。ほら!離せって!」
「うふふぅ♡離して欲しかったらおっぱいハムってしなさいよ。ほら♡」
両腕と両足で俺に抱きつき、カリンが落ちない様に俺は尻を支えている。相変わらず張り良く素敵な感触なのだが、今はそれどころではないっ!。
うっとりとした眼で見下ろす彼女に血の気が引いてゆく。こんな事は二度と起こらないと思っていたのに。俺の生活はまたこの女に蝕まれるのか?
あまりにも場違いな濡れ場もどきに、ガヤガヤと賑やかだった店内が静寂に包まれた。カウンターやボックス席の老若男女が俺を凝視している様な気がする。この冷ややかな静けさと突き刺さる視線は、高校や中学でも経験したことがあった。またあの頃のように誰とも話さない日々が訪れるのか?息もできないあの孤独が。ひどい胸焼けがする。早く逃げ出したい!
「おっぱいをハム♡。だってぇ。なんかヤラシー♪。いーの?これぇ。」
「あの二人、確実に付き合ってるよねぇ?。でも職場でいちゃつくぅ?」
「最近の若いもんは場所も弁えん。そんなスケベな事は他所でやれ…」
「……バカップルは迷惑だよねぇ。……これは拡散だよね?。…ポチポチ。」
さらには耳を突く傍観者達の憶測混じりな非難の呟き。それは俺の心をさらに深くえぐった。そうだ。このエロい身体をした幼馴染みの不意を突く大胆な行動で…中学2年生から高校を卒業するまでの五年間、俺はひどく毛嫌いされて孤独になったのだ。学食と言わず廊下と言わず、ところ構わずに飛びついては、頰や首筋に口づけてくるコイツのせいで!俺はクラスメイトにも!他の生徒達にも残酷なほどに距離を置かれていた!だからこの女には何も告げずに施設を出たんだ。それなのに、なんで再会するっ!
「はいはぁい♪。ラブコメみたいな奇跡もええけどぉ、お客さんたちをお待たせするんは絶対にあきまへんえぇ。すずめぇ?レオさぁん?カリンちあゃん?。さっさと働きよしっ!。すずめっ!焼き鳥さん焦げてるえ!」
「はっ!?はいっ!かのえ姉さまっ!。ほら!カリンちゃんも離れて!。獅子神は洗い物をサッサと終わらせろっ!。あとお任せ皿を3枚セットだ!。ジョッキを冷凍庫に補充するのを忘れるなっ!?。ほら急げッ!」
「ああん♡。わかりましたぁ。…レオ?お店が終わったら話そ?。ね?」
「ああ、そうだな。俺もお前に言っておきたいことがある。…はい、お任せ皿3セット!置いておきます軍曹殿!。…ホール側に行けよ…かりん…」
「はぁい、おおきにぃ♪。ほらぁカリンちゃん?。お会計してなぁ?」
「はぁい♪ただいまぁ♡。逃げないでよ?。…ありがとうございます♡」
就職初日にやらかしてしまった大失態。知らなかったとは言え俺は当事者だ。かりんを見る目よりも俺を見る眼のほうが多かった気がする。これは持論なのかも知れないが、スタートで躓くと、その修復には信じられないほどに多大な労力と鋼にも似た精神力が必要となる。そう知っていても俺は学生時代の五年間を修復できなかったのだ。また暗黒が…訪れるのか…
「そっか。…おいで?うずめちゃん。抱っこしてあげる。…痛かった思い出しかないのね。…よしよし……つらかったね。…ぐす。……ほんとに…」
「…ぐしゅ。…だから…こわいの。……痛いしか…わからなかったら…ぐす。うずめは…きっと……ぐしゅ。レオを……うっ…ぅうぇえええええ〜ん…」
「…うん。今日は泣いちゃおうね?。…ぐすっ。…たくさん…泣いて…もういちど…ぐしゅっ。…みんなで笑お?。…すん。…ね?…うずめちゃん…」
「ええええ〜ん。ぐすっ、えええ〜ん。…うっうっ…うぇえええ〜〜ん!」
「………ぐすっ。……うずめ…ちゃん。……(女であることで崇められ、女であることで傷を負い、女であることで金に替えられた。…そのうえで…そんな酷い目に。…こんな華奢なからだで…全部…受け止めてきたのね…)」
あたしとウズメちゃんの初めての女子会は、聞くに耐えない男たちの非道から始まった。彼女は母と二人でここから南側にある河を崇める神社を護っていたと言う。宮司であった父は時の領主に召し抱えられて、鎮守の神の名の下に軍の士気向上に努めた。そして母娘は、領地や賑やかな街の安寧を日々その大河に祈り続けていたらしい。しかし数年後、この地は戦場となっていた。時の世を揺るがした大飢饉により国盗りが始まったのだ。
血で血を洗う毎日。しかし幸いにもこの領地が奪われることは無かった。しかし父は二度と帰らぬ人となってしまう。それも定めと領主の代理人に諭されたそうだ。父の祈祷が兵士達の士気向上に役立ったのは違いないと言われても何も嬉しいわけがない。それでも母と共に受け止めたと言う。
そして1年後、ウズメちゃんが15歳になった年に神社が御神体とする南の大河が氾濫を起こし街の半分が被害を受けた。河の神を鎮められなかった彼女に領主は怒り狂い、罰としてウズメちゃんと母は男達に辱められ、現代の街に未だ名残りを残す…歓楽街の売春宿に閉じ込められたそうだ。
そうなってからは、神社を崇めていた男たちさえも挙って買いに来たらしい。昼夜を問わず客を着けられ辱められる日々に涙しない日は無かった。当時15歳のうずめちゃん。苦しい現実から逃げる為に自決してしまえば楽だっただろう。たけど巫女であった彼女が自死を選べば…己の信心や神に捧げた誠さえ否定する事にからと。…それだけは出来なかったらしい…
「ぐしゅっ。……ぐしゅ。……ありがとう…はじめさん。…ぐす。…すん…」
「大丈夫?ウズメちゃん。…ぐすっ。…ほら、もっと泣いてもいいのよ?」
「ん〜ん。ぐしゅ。ありがと。…でも…こんなに泣いたの…はじめてです。あの頃はいちど泣いちゃうと…ぜんぜん止まらなくなるから、ぐすっ。泣かないようにしていたの。…すん。…すごく…気持ちが軽くなりました。」
「そう。でも遠慮しないでよ?。もっともぉ、アタシのお胸よりも〜レオくんの胸の方が良いのは分かってるんだけどね?。はい、お鼻かんで?」
「え?ん。…すぅ。…ぶぅーーー!。ぐしゅ。すん。…あ、ありがとう…」
「どういたしまして♪。いやぁーん♡。うずめちゃんカワイイーっ♡」
こうして胸に抱いている可愛らしい紅い瞳の娘さん。そして直接伝わる温かさと柔らかさに、まさか幽霊だなんて思えない。あのお硬いレオくんが見初めただけあって、うずめちゃんが持つ類い稀な美しさに女のアタシでもときめいてしまった。更にはこの抱き心地♡。癖になっちゃいそう♡
そして長い間、たった一人で抱え込んできた心の傷や恨みや辛みも少しだけ聞いてあげられた。できるならば今夜の思い出が全てであって欲しい。現代では絶対に許されない男達からの尊厳無視や性暴力が、彼女の生きた時代には常識として横行していたのね。もしも今のあたしならきっと生きていられない。だけどいつの世も弱者は虐げられるのよ。強くなりたい…
「へぇ〜?。女の子と二人で暮らしてるんだぁ。あのレオがねぇ〜。もしかしてアパート?それともマンション?。ワンルームとかなのかな?」
「そうだよ。だからお前とは付き合えない。これが答えで現実だ。だから着いてくんなって。…ワンルームの安いアパートだよ。…お前んちは?」
「えー?。あるわけ無いじゃん。先月学校辞めて、この街で暮らすらしいって先生に聞いてレオを追いかけて来たのに♡。今はネカフェで寝てる。でも1日2500円だからけっこう厳しいのよねぇ。飲み物無料だけど自販機高いし、朝ご飯食べたら全部で3000円だもん。…ね?泊めて?。お金がそろそろヤバいのよ。洗濯物も溜まってるし。ねっ?お願いっ!。」
まだネオンサインや四角い置き看板がチラホラと光っている深夜の繁華街のアーケードを、俺は迷惑系な幼馴染みと並んで歩いている。ホントにコイツは、いちど走り出したら止まらないんだから。ネカフェと言われてもピンとこないし、何だかんだで13年も一緒にいたんだし、宿や金が無いとか言われたら無視はできないよなぁ。そこそこ大きい街で女の子が1人で彷徨くなんて『襲ってください♡』って言ってるようなもんなんだし…
「…………ちょっと待ってろ。………あ、うずめ?。初めてかけた。ははは。実は相談があるんだ。……うん?ハジメさん居てくれてるんだ。……ああ。古い友だちと会っちゃってさ、行くとこないんだって。……うん。……え?いいの?。…………わかった。…ちょっと待ってね?。…ほら。……話せよ。」
「え?!。あっ!?。なっ何を話せばいいのよっ!。レオの意地悪っ!」
「はぁ。………ごめん聞こえた?。すごい人見知りなんだよ。……うん。……部屋に着いたら挨拶させるから。…………うん。………ハジメさん?なんで怒るのさ?。……いやいやいや!そんなんじゃないから。……それじゃ後で。おい?荷物も預けてあんだろ?。いけるなら取りに行くぞ?。ったく。俺の彼女の優しさと心の広さに感謝しやがれ。それと…早く離せよ俺の腕。」
「やだ。…あ、あそこの青いロッカーに入れてあるの♪。え〜鍵はっと。」
「はぁ。早くしてくれよ?。(あー俺は馬鹿だっ!。あれだけ会いたくなかったのに!顔を見るとほっとけなくなんだしっ!。酷い腐れ縁だな…)」
現在の時刻、午前1時18分。ラストオーダーが午後23時45分なのに閉店12時の5分前にはお店が空になっていた。厨房内の掃除はお客さんの様子を見ながら、すずめ軍曹殿に教えてもらいつつボチボチと進めて、0時20分頃には完了した。それから客席側の掃除を手伝って、ちょっとした反省会が開かれる。今日はバタバタで賄いを食べ損ねたが仕方ない。
幼馴染みの急襲があっても、それなりに上手くやれた方だと思っている。『どんな時でもハプニングは付き物やえ?。』と、生ビールのジョッキを片手に、ご機嫌で言ってくれたオーナーの気遣いが嬉しかった。気掛かりなのはカリンとすずめ軍曹殿が、ちょっとギスギスしていたようで近寄り難かった。まぁスタッフが増えればやり難くもなるか。…放っておこう。
「はっ!はじめましてっ!。…おっ!折神かりん《オリガミ、カリン》と申しますっ!。17ですっ!。や!夜分遅くにお邪魔いたしましたこと!平にご容赦をっ!。今宵、一宿の許しを賜りまして!馳せ参じました!」
「はあ。まぁそんなに畏まらずに。おりがみ、かりんちゃんね?。アタシは初神はじめ。まるで時代劇みたいな喋り方をするのねぇ?面白い娘。」
「は!。あ、ありがとうございますっ!。…え、ええと?。レオ君と同棲してるんですよね?。あ、でもうずめさんじゃないんだ。!?。まさかレオ君。もう一人…女の子を連れ込んでたりするんですか?。…あいつめ〜」
「あははは♪。ホント面白い娘ねぇ。アタシは隣人♡。まぁ普通のお隣さんではないんだけどねぇ?。…うずめちゃんなら獅子神くんと、お・フ・ロ♡に入ってるわよぉ♡。あの二人、憧れちゃうほど仲がいいのよね♡」
「……ふたりで…お風呂?。あの。…うずめさんって…女の子ですよね?」
「ん?。決まってるじゃない。アタシも一緒に入ってみたいわぁ、獅子神くんと♪。ほら?彼って脱ぐと凄いじゃない?。ギャップ萌えよねぇ♡」
アタシは初神さんの言葉に戦慄を覚えた。学生時代の獅子神獅子はあんなに硬派だったのに。あたしがラブ・レターを渡そうが、校舎裏で告白しようが、思い切って抱きつこうが、1ミリも揺らがなかったのに!。そのくせ『かりんが嫌いじゃないんだよ?。ただ他人が苦手なだけなんだ。』とか言ってさんざんアタシに期待させておきながらっ!。…でも…大好き♡
アタシは父を知らない。そして七歳になる前に母も消えた。そもそも育児放棄されていたのに、よく七年も生きていたものだと自分でも感心する。そして保護された孤児院であの子に出逢った。獅子神獅子だ。最初は何も話してくれなかったけど、傍にいると安心できた。他の男の子はアタシが近づくと逃げていくのに彼だけはずっと居てくれた。アタシが何かで泣いていると直ぐに来てくれて、心配そうな顔で、いつも頭を撫でてくれた。
そのうち、どこに行くのも一緒になって、いつも並んでご飯も食べて、まるで優しいお兄ちゃんができたようで嬉しくて。でも小学四年生から別々の寮になって距離ができちゃった。そうなってから獅子神獅子をひとりの男の子として意識するようになったんだけど、あたしがマセてたのよね。