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どこへ行こうかと迷っていたとき、ひとつの事を思い出した。
 ̄動物たちが動き出す前、確か、遠くから鐘の音がなっていたな……
これを伝えるのを忘れていた。
要になるかもしれない。
大事な要点を伝え忘れてしまっていたのだ。
「帰ったら言わないと……」
そんなことを考えながら、無意識にもさっきの泉に足が進んでいた。
歩き続けると、やっと泉に着いた。
あの時の面影は全く感じられず、穏やかな限りだ。
泉の綺麗な水を上から見つめる。
すると、自分の耳飾りに目が向く。
 ̄そうだ、思い出した。
あの時、あの鹿が自分を救ってくれたんだ。
それに気づいた途端、心が一瞬にしてざわめき始めた。
さっきまでの気持ち悪さなどとは違う、ドキドキするなんとも言えない好奇心。
リンデェンは急いで小屋へ向かっていった。
小屋へ着くと、勢いよく扉を開けた。
そこにはもう、リンシィーとロンレイがいた。
リンデェンの帰りを待っているところだったようだ。
「なにかありましたか?」
大きな扉の音を聞いて、リンシィーが心配そうにリンデェンに聞く。
ロンレイは椅子を引き、座るよう促した。
リンデェンは、仕草のままに椅子へ座りながら落ち着くよう自己暗示をする。
ゆっくり深呼吸をすると、話し始めた。
「思い出したんだ。何故、風に飛ばされたのに、無傷なのか。」
そう言い終わると、一息つき、丁寧にゆっくり話し続けた。
「飛ばされた後、あの青く光る鹿に助けられたんだ。確かに、あの鹿だったはず。
泉へ行ってきたんだけど、反射したこの耳飾りを見て思い出したんだ。」
そう言って説明し終わると、2人は何かを考えているようだった。
にわかに信じ難いだろう。
ただ、記憶が蘇ってきたこの感覚からするに、間違っては居ないと思った。
「お兄さんがそう言うなら、そうかもしれないね。ただ、現実味はないけど。」
冗談混じり からの言葉だった。
でも、芯を付いていて、確かに現実味はない。
「本当にあの鹿だったんですか?不思議が多すぎて、もしかしたらそうかもしれませんが…」
最後を濁すことで、なんだか気まづい感じになってしまった。
「信じられないかもしれないけど、本当なんだ。確かに、あの鹿だった。
それともう1つ。伝えそびれていたことを思い出した。」
それはなに? とロンレイが身を乗り出してリンデェンに聞く。
「鳥たちが動き出す前、遠くから鐘の音がしたんだ。ここに聞こえているか分からないけれど
彼処からは、しっかり聞こえた。」
それを聞いて、リンシィーは眉間を抑え、
考え込んでしまった。
「その鐘はどんな音だった?」
そこロンレイの口調は、どこか楽しんでいるような、調子良い話し方に聞こえた。
「はっきりは分からないけれど、重めの響き渡るような音だった。
どこか遠くの街からの音だろうかな?」
ロンレイに尋ねる。
今まで、沢山話してきて思っていたのだが、ロンレイは物知りだ。
分からないことを聞くと、なにかと答えてくれる。
どこからそんな知識が出てくるのか、不思議に思っていた。
「もしかしたら……」
そう言いかけて、ロンレイは言うのを辞めてしまった。
なにか言いにくいことなのだろうか。
「もしかして?」
思わず、気になって聞き返す。
ロンレイは、何かを決めたようにリンデェンの方を向き直った。
「話せば長くなる。それは、もしかしたら鬼の仕業かもしれない。」
 ̄鬼の仕業?
「鬼の仕業……どういう事だ?」
意味がわからず、ロンレイの方を向いた。
リンシィーも、顔にはてなが浮かんでいるようだった。
「お兄さん、鬼には種類があるのを知っているる?特に四恐死鬼とか。」
少し考え、昔学んだことを思い出していく。
「たしか、化燃奇死《かねんくし》ギヂェン。 月怪空死《げっかいくし》 コクヨウ。
藍水來死《あくすいぎし》リハク。
陸楽異死《りっかいし》 ハクリン だ。
それと関係があるのか?」
ゆっくり、リンシィーと確認しながらロンレイに伝えて言った。
ロンレイはそれを聞き終わり、1呼吸する。
「その鐘の音、もしかすると最後の鬼、
ハクリンの仕業かもしれない。」