myak
幽霊になった君
my『 』
ak[ ]
今日もない影を追う
ずっといない虚像を見る
まゆが消えた
突然消えた
付き合ってニ年の記念日から
『 出かけてくる』
の一言を残して
そのまま帰ってこなくなった
警察に連絡して、捜索願いをだしても
もう一年近く、まゆは見つからない
ピピピ
[んぁ…]
今日もアラームの音で目が覚める
[おはようまゆ]
シーン
なんて、帰ってこない挨拶をする
いつまで経っても
まゆと暮らしていた頃の癖が抜けない
歯を磨いて、支度をして
大学行って帰って寝て
そんな変わらない日々
君がいないこと以外は何の変哲もない日々
いつか、
いつか、もどってくるよね
あの日、まゆがいなくなった日
俺は初めてまゆと喧嘩をした
せっかくの記念日なのに
どこかへ行こうとするまゆをみて
“いかないで”って”そばにいてって”
わがままを言ってしまった
酷いことも…たくさん言ってしまった
その時のまゆはどんな顔してたっけ
怒ってたっけ、呆れてたっけ
そんなことを考えながら
また涙を流して布団に入る
止まらないな、いつまでたっても
『 どうして泣いてるの?』
あぁ限界だ
幻聴まで聞こえてくるようになった
『 おーい明那』
ここにまゆはいないってわかっているのに
『 ねぇってば』
[あぁ!もう!幻聴のくせにうるさいぞ!]
『 え、幻聴?』
あれ、会話ができている
というかさっきから鮮明に右の方から声がする
まさかと思い俺は飛び起きて右を見る
[まゆ…]
そこにはまゆの姿があった
会いたかった、ずっと
どこに行ってたの、ずっと探したんだよ
心配したよ
[まゆ!]
俺は飛び起きてまゆに抱きつこうとした
あれ
触れることができない
抱きつこうとした腕は空振りし
自身の体を抱きしめる形になってしまった
[は…?]
『 幽霊になった、かも』
『 まぁ幽霊って表現が正しいかはわからないんだけどとにかく実態がない』
そんな
せっかく会えたのに
触れることができないなんて
幽霊になった?ってことは…
[ま、まゆし、死んじゃったの…?]
『 それが、わからないんだよね』
『 俺、記念日の記憶があやふやで俺の体はどこにあって今どうなってるのかわかんないんだ』
[じゃあもしかしたら霊体離脱っていう可能性もあるってこと…?]
『 そういうことになるね…』
まゆがまだどこかで生きているかもしれない
確証がないことだけど俺はそれがとてつもなく嬉しかった
[まゆ、ずっと、ずっと会いたかった]
[まゆがいなくなってから一日も欠かさず
まゆのこと考えてたよ]
『 俺もずっと明那と話したかった』
『 この状態になってから、みんな俺のこと見えなくなっちゃって』
『 明那も今この瞬間までずっと俺のこと見えてなかったんだよ?』
どうして急にまゆのことが見えるようになったのだろう
[うーん何か原因があるのかな]
『 そうなのかな…』
いくら考えても理由はわからなかった
とにかく今は目の前のまゆと失った時間を
取り戻していきたい
[まゆ!久しぶりに会えたことだし一緒にお出かけしよ!]
『 あぁいいよ出かけよう』
[やった!!久しぶりだ!!]
『 明那はしゃぎすぎ』
[そりゃはしゃぐでしょ!ほら早くいこ!]
いつもの見慣れた街を歩く
いつもと同じ道なはずなのに
何だか今日はやけに綺麗に見える
道だけじゃない、花も人もお店も
全てが輝いて見える
[ねーまゆ、まちってこんなにキラキラしてたっけ?]
『 んー?いつもと変わらないけど、』
[そんなことないよー!]
あぁまゆがいなくなってから街を見渡すことなかったな
こんなに綺麗だったんだ
まゆが隣にいると
全てが輝いて見える
楽しいな
しばらく歩くと
人混みの多い道に出た
『 あっ、すみませ、』
スッ
…
まゆがぶつかりそうになる人に注意していても
その人は何事もなかったかのように
まゆの体をすり抜けていく
『 …そっか、おれ、』
まゆは暗い顔をする
[まゆ!それ便利じゃん!]
『 え、』
[人にぶつからないってことは怪我しないってことでしょ!?いいね!それ]
『 …そうだね』
まゆは優しく笑った
下手くそなフォローだったな…
まゆはきっとお見通しだろう
でもまゆにあんな顔して欲しくない
いつも笑っていて欲しい
笑顔が1番素敵だから
そこから俺たちはいろんなお店を回った
ショッピングしてカラオケ行ってご飯食べて
まゆにはご飯が出てこないし、買い物もできないから
全てを楽しめたわけではなかったけど
それでも久しぶりにまゆとお出かけできて
幸せだった
[あー!楽しかった!]
『 俺は疲れたよ…』
[まゆ体力無さすぎ〜!]
幸せだ
こんな時がずっと続いて欲しいな
帰り道
まゆは急に足を止めた
[?まゆどうかしたの?]
『 この道、見覚えがある』
[見覚えがあるっていつも通ってる道じゃん、あって当然でしょ]
『 違う、記念日の日、ここの道を通った記憶がある』
まゆは一生懸命何かを思い出そうとしていた
あれ、
このまま、まゆが何かを思い出したら
どうなるんだろう
成仏する?それとも元の体に戻る?
生死が定かでない分
どうしようもない不安が俺を襲ってきた
もし、もしもまゆが全て思い出したら
俺の元を離れてしまうのではないか
また孤独に戻るのではないか
[ま、まゆ!]
[今日は疲れたし、難しいことは考えずにさ!
早く家に帰ろ?]
『 ん?あぁそうだね、』
ごめんね、まゆとしてはモヤモヤするかもしれないけど
それでも今は一緒にいたいよ
コメント
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まゆぅぅぅ……あきなぁぁぁぁ……幸せになってくれぇぇぇ(泣)