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静かな午後、光のやわらかく差し込むカウンセラールーム。
ソファの隅に小さく座る涼ちゃんは、
膝をぎゅっと抱え、目も合わせず、じっと床を見つめていた。
カウンセラーの先生は、やさしい声で問いかける。
「涼ちゃん、体は少し楽になった?」
…返事はない。
涼ちゃんはただ、膝の間に顔を埋め、
一度も目を上げようとしなかった。
先生は少し困ったように、けれど決して急がせることはせず、
机の上の小さなぬいぐるみやカラフルな折り紙をそっと手元に並べてみる。
「好きなことや、やりたいことがあれば教えてくれたら嬉しいな。
無理に話さなくても大丈夫だから、ね?」
しばし沈黙。
時計の針の音だけがやけに大きい。
先生は、困ったようにつぶやく。
(どうすれば、心を開いてもらえるのだろう……)
それでも、
ゆっくり、ゆっくり――
今日も涼ちゃんの隣に優しく座り、
焦らず静かに寄り添い続けた。