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夕食を終え、身を清めた私は寝間着ではなくメイド服を着て、オリバーに会いに来た。

夜、オリバーに呼ばれているのだとメイドの先輩たちに話すと、恋の話に飢えている彼女たちは私に色々な話をしてくれた。


今の体型のオリバーは、貴族の夜会へ参加するごとに焦がれる令嬢が多く、それはモテたのだという。

オリバーが十八の成人の際に結婚の話が一度出たのだが、父親の急逝によりその話も無くなっただとか。

その後、オリバーはソルテラ伯爵家の当主として領地の管理、魔法の研究、過度な食事による体重の増加など様々な要因が重なり、誰とも恋仲になれなかったらしい。

そんなオリバーが夜に異性である私を呼ぶのは何か起こるに違いないと、メイドたちは私に期待していた。


(あんなに冷やかされたら、変に意識してしまうじゃない)


私はオリバーが好きだ。

だけど、今の私はただのソルテラ伯爵家のメイドでオリバーと恋仲になることはない。

伯爵貴族であるオリバーはきっと、同程度の貴族の令嬢と結婚する。

容姿端麗で気立ての良い少女と。

私はもう、少女と名乗れる年齢ではない。結婚の適性年齢をとうに過ぎている。


それに私はマジル王国軍元帥の娘で、アルスという婚約者がいる状態で家出をしてきたという事情をオリバーは知らない。

素性の知れない”行き遅れ”の私をオリバーが気に入るわけがない。


コンコン。


私は二度、ドアをノックした。


「エレノア、さあ入って」


オリバーに招かれ、私は部屋の中に入った。


「オリバーさま、体調の方は――」

「少し寝て、食べたら元気に……」


別れ際、オリバーは立っているのがやっとの状態だった。

心配した私は、オリバーの体調を心配する。


オリバーは私の心配を笑って吹き飛ばそうとするも、気が抜けたのか、ふらっと体勢を崩し、ベッドに仰向けに倒れた。


「ごめん、エレノアが来たのが嬉しくて見栄を張った」

「心臓が止まってしまうところでした。ご気分がすぐれないのでしたら、ベッドに横になってはいかがでしょうか」

「いいや、僕はベッドに横にならないよ」

「え、でも具合が悪いのでしょう?」

「悪いけど! 君を呼び出して、僕がベッドで横になっているなんて恰好悪いだろ!!」


私の心配をはねのけ、オリバーはベッドから起き上がった。

そして、私の身体をぎゅっと抱きしめる。


「大丈夫。エレノアをぎゅっとしてるから」

「えっと……、オリバーさま?」

「エレノアは柔らかくて甘い香りがするなあ」

「え、あ、あの!!」

「しばらくこのままでいさせて」


突然オリバーに抱きしめられ、私の身体は硬直する。

耳元で私の感触や香りについて囁かれ、心臓がバクバクと跳ね上がった。

大好きなオリバーが私に甘えている。

ベッドに押し倒されるのかしら。

そのまま一夜を過ごすのかしら。


「あの……、本当にお痩せになったのですね」

「うん。骨と内臓と皮しかない」


黙っていると色々なことを想像してしまう。

何か話そうと話題を探していると、以前私がふくよかな体型のオリバーに抱きついたことを思いだした。その時と違って、オリバーの身体は骨ばっている。


「今回の戦争は勝利を収めることが出来たけど、また、カルスーン王国はソルテラ家の秘術を盾に政治をする」

「また、無茶な食事をしてふくよかな体型に戻られるのですか?」

「……エレノアは、そんな僕でも好きでいてくれる?」

「もちろんです。私は、貴方のメイドですから」


今のオリバーもバランスの良い、適量の食事を摂れば、肖像画のようなほっそりとした姿を維持できるだろう。

しかし、ソルテラ家の秘術は常に放てるように備えておかないといけない。

何故なら、マジル王国に勝利したカルスーン王国が凝りもせずソルテラ家の秘術を盾に各国と政治をするからだ。


強国に二度打ち勝った魔法大国として名声をあげたカルスーン王国。

強気にでて、数年後、数十年後かに他の国と軍事衝突を起こすかもしれない。

危機に陥れば、国王はオリバーに頼る。

その時に秘術を撃てるよう、彼は再び身体に沢山の脂肪を蓄えないといけないだろう。

秘術の内容を知らないほとんどの人間にとって、ふくよかな体型というのは”だらしない””醜い”象徴。

オリバーは再びその体型に戻っても自分を好いてくれるか、私に問う。


「オリバーさまが望むのであれば、私はずっとお傍でお仕えします」

「……なら、太るのやめる」

「え?」


私はオリバーの問いに素直に答えたつもりだが、彼の納得する答えではなかったらしい。

ぎゅっと強く抱きしめられ、オリバーのふてくされた声が聞こえた。


「僕は……、痩せたままでいる」

「どうしてですか?」

「君が『仕える』って答えたから。あの体型は、君の好みではないだろう」

「いえ、オリバーさまは――」

「正直に答えて」

「その――」

「エレノア」


あの体型のままでも、オリバーは魅力的な男性だ。

優しく、包容力がある。

私は今のオリバーでも、ふくよかな体型のオリバーでも素敵だと答えようとした。

しかし、オリバーはそれが私の本心ではないと決めつける。


「オリバーさまと出会う前は、筋肉がついている男性が好みでした」

「ほら! だったら僕はエレノア好みの体型になる。筋肉をつけて男らしくなるんだ」


仕方なく、私はオリバーに出会う前の好みの男性の体型を答えた。

それを聞いたオリバーは、私の理想の体型に近づくのだと言う。


「僕は……、エレノアが好きだ」

「っ!」

「だから、君の好みの姿でいたい」

「オリバーさま……」

「ずっと、僕の傍にいてほしい」


これは、告白だ。

オリバーが貴族でもないただのメイドの私に好意を寄せている。

それにずっと傍にいてほしいというプロポーズまでされた。

嬉しい。

私とオリバーは両想いなんだと分かって、とても嬉しい。


「その……、メイドとしてではなく、私と一緒にいたいということですよね」

「うん」


オリバーの告白の意図を間違って解釈しているのではないか。

不安になった私は、オリバーにわざわざ確認をとった。

オリバーの返事が返ってきて、私は人生の岐路に立たされているのだと理解する。


「私も――」


私はオリバーとの抱擁を解き、彼の表情を見た。

オリバーは平民同然の私を妻にしたいと本気で言っているんだ。

伯爵貴族であり、戦争の英雄であるオリバーと結婚するためには様々な障害があるだろう。

身分の差と私の実家の問題。

特に後者は解決に困難を極めると思う。

けれど、今は――。


「オリバーさまのお傍にずっといたいです。メイドとしてではなく、生涯のパートナーとして」

「エレノア」

「はい、オリバーさま」


私とオリバーは互いに見つめ合う。

互いの顔を近づけ、唇を重ね合わせた。


この夜から、私はオリバーの婚約者として生活を共にすることになる。

けれど、私たちを阻む障害は沢山あり、結婚までの道のりはとても長かった。


その間に何度【時戻り】をしたことか。


私はオリバーを最愛の人の運命を変えるためなら何度だって【時戻り】をする。

”ずっと傍にいる”という約束をし、初めてオリバーと口づけをした思い出を糧に。


【時戻り】の力があれば、運命を変えられると、この日、証明することが出来たから。


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