白い息を吐きながらある人と会うために約束の場所へ向かった。
光り輝くイルミネーションと暖かな光を放つ街、そして次々と降り注ぐ真っ白な雪
12月25日はアイドルとして、メンバーとしてではなく恋人として会う特別な日
年に一度だけ。
365日あるうちの1日
"クリスマス"という特別な行事を恋人と過ごせるたったその1日
『仁人ごめん!ちょっと遅れそう…なるべく急ぐ』
「全然大丈夫」
ほんのり桃色に色付く指先から振動が伝われば、勇斗からの1件の連絡だった。
去年も、その前の年も、俺の恋人はいつだって人気者だから今年もきっとそうなんだろうなぁって
前までは俺との時間が…なんてちょっぴり寂しい気もしてたのに、勇斗の努力を毎日のようにそばで見ていたら、今となってはなんだか誇らしい
周りを見渡せば、ケーキを売るお兄さんやお花を売るお姉さん、窓から見える大きなクマさんにはサンタの帽子が被せてあって
一気にクリスマス仕様に変わるこの街並が何よりも好き
街をふらっと歩いていると、木造建ての小さなお店が目に止まった。
ドアを開けるとチリンチリンと鈴の音がなり、サンタの格好をした店員がいらっしゃいませと微笑んだ。
傘をたたみ、コツコツと歩き回る
アメ車の模型や昔ながらの看板のスタンド、木で作られた写真立て… いかにもレトロ感溢れる店内だった
「あっ、可愛い…笑」
手に取ったのは、手のひらサイズのマフラーを巻いたクマのマスコットキーホルダーだった
ピンクのマフラーを巻くクマの隣には偶然にも黄色のマフラーを巻いたクマが並んでいて、躊躇わずレジへ持っていった。
流石に幼稚すぎ?なんて買った直後に恥ずかしくなる
すると2度目の振動が体に伝わった
『あと10分くらいでつくよ』
「わかった。___の前にいるね」
やっと仕事が終わり、愛しの恋人の元へ一分一秒でも早く会うために車を走らせた。
来年は絶対に遅れない!なんて約束を今年もまた破ってしまって
『あぁもう、仁人ほんとごめん。絶対寒い中で待たせてるわ』
近くの駐車場に車を停めて、仁人から送られてきた店へと全力で走った。
大きなイルミネーションも、イチャイチャするカップルも横目に流して、足を前にまえに運んだ。
傘なんてさしてないから、白い息と共に次々と雪が顔を突撃してきた
段々と増える人集りに必死に目を凝らして仁人を見つける
『はぁはぁ___っ…いた、、!』
白く染まる景色とは反対に黒コートとマスクをつけ、スマホとにらめっこをする恋人の姿
呼吸を整えようと大きく息を吸うと、空気の冷たさが喉に痛みを与えた
もう一度息を吸い、勢いに身を任せて仁人に飛びついた。
「うわっ…!びっくりした」
『ごめん仁人!ほんとにごめん!今年も…約束破った…。こんな寒い中ずっと待たせて…ごめん!』
「いや、ほんとよ。マジで寒い笑てか、そろそろ離せ」
『わり…』
いきなり体が窮屈になったかと思えば、畳み掛けるような謝罪の言葉が耳を通った
去年のデジャブのようなこの光景に小さな笑いが込み上げる
『ごめん、ほんっとに』
「マジで許さない。何回目よ。ってか何度目よ」
『すみません…』
「うそうそ笑仕事お疲れ様。忙しかったのに急いできてくれてありがとう」
掬い上げた勇斗の顔を見ればどれだけ急いで来てくれたのかが分かるほどに、頬や鼻先が赤く染っていた
『仁人の手…冷たい。』
「そりゃあこんな寒い中外にいたら冷たくなるわな。てか、勇斗傘は?」
『車ん中』
「なんでさしてこないんだよ」
『邪魔だった』
「笑笑笑じゃあ、ふらっと歩いて家帰りますか」
『仁ちゃんケーキ買ってこ!』
「うん」
『何にしよーかなー、やっぱショートケーキかなぁ…でもチョコレートケーキを捨て難いよなぁ、、うわっこのイルミネーションすごっ』
なんて子供のようにはしゃぐ勇斗はいつ見ても可愛くって
なのに、凍った俺の手をさりげなく繋いでポッケで温めてくれる男らしさにドキドキしちゃって
「どっちも買ったら?両方1個ずつ買って半分こすればいいんじゃない?」
『えっ、いいの!?仁ちゃんやるぅ!』
「笑笑笑」
半分こする時はいつも食べさせてくれるから、それが目的ってのは内緒の話
お目当てのケーキを買い、煌びやかな街並みを抜けると満天の星が広がっていた
こうやって並んで歩いている時、さりげなく俺のペースに合わせてくれるところとか、荷物をさりげなく持ってくれるところとか、、、
ほんと出来た男だよなぁ
これが俺の彼氏かぁ…///
「あっ!」
『ん?どした?』
「あ、いや… 」
買ったクマのキーホルダーって渡すべき…?
そもそもクマって…笑子供じゃあるまいし、喜ぶのか?
それに、お揃いとか恥ずかしすぎ
『なになにどーしたの。言ってみんさい』
「これ…勇斗にって思ったんだけど…流石にこどm…」
『まじ!?ありがとー!!!ちょー嬉しい!』
どうやら余計な心配は要らなかったようで、予想外の反応に笑いと喜びと、そして愛おしさが零れた
「俺のもお揃いで買っちゃった」
『お揃いなの!?なにそれちょー嬉しいじゃん!早速つけちゃおー』
地面に映る2人の影が年を回る毎に近づいて、こうして喜びも寂しさも二人で分け合える時間が愛おしくて
生まれ変わっても出会えますように…なんて流れてもいない星に願ったりしちゃって
繋がる手を強く握り締めた。
「ふふっ笑」
『何笑ってんの笑』
「なんでもない」
『ほんとに?』
「ほんとに。」
恥ずかしさを隠すようにスマホを弄る
来年は何渡そうかな
思い切って家の鍵でも渡してみる?
いやいや、流石にそれはないか
やっぱお揃いのがいいのかなぁ…
『この後俺ん家でいいんだよね?』
「うん」
『DVDでも借りてこうか?』
「うん」
『お酒買ってく?』
「うん」
『仁ちゃん話聞いてる?』
「うん」
『今日抱いていい?』
「うん」
『いいのー?笑やったー』
「あ、ダメダメダメダメ笑このえろガキめ」
『話聞いてない仁人が悪い。もう返事しちゃったし、決まりー』
「はあ…」
『そんなため息つくなって、仁ちゃんも正直期待してたでしょ』
「うん…笑」
『笑笑かーわいー』
「うるさい」
『サンタコスでもしてみる?』
「…やっぱりするのやめよっか」
『うそうそ!ごめん!』
「笑笑笑いーよ」
DVDを借りて、お酒を買って、家へと向かった。
助手席に座る仁人はカクンっと今にも眠そう
『仁ちゃん寝ててもいいよ』
「でも…」
『大丈夫だよ、おやすみ』
こんな仁人に甘い俺、メンバーきっと想像つかないだろうな
普段も一緒にいるのに、やっぱりこうして"恋人"として意識するとどうも違った特別な情が湧いてくる
くれたプレゼントも"仁人が俺のために"っていうのがなによりも嬉しくて、恥ずかしがる表情も、安心しきった表情もどんな表情も俺だけが見れる特権で。
眠る仁人の頬を優しく撫でた
『仁人〜?着いたよ』
「ごめん勇斗。ありがと」
『んーん。仁人の寝顔も撮れたし』
「はい?」
『なんでもなーい笑あ、仁人』
「ん?」
『生まれ変わっても会えるよ、絶対に。』
サンタさんへ
今年も世界一愛する仁人と一緒に居させてくれてありがとう。
来年もどうか、一緒に居させてください。
よろしくお願いします。
p.s.来年は絶対に遅刻しません!!
end.
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