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羊と亀のお遊戯会
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#名探偵
空蝉 桜
136
おきつね
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34 ◇これからは自由だ
こうなってしまったからには、妻の気持ちを考えると一日でも早く家を
出たほうがいいのではないかと思うものの、この先娘や息子と頻繁に会え
なくなると思うと伸之は踏ん切りがなかなかつけられなかった。
養育費や慰謝料の話など互いに弁護士を通してこれから話を進めていく
わけだが、出来る限りのことをするのだから頻繁にとはいかないだろうが
子供たちとはこの先も会えるはず。
だが息子はともかくとして娘はもう中学生だ。
実際問題、異母兄弟など作り自分の母親を捨てるようにして出て行く自分と
果たして会ってくれるだろうか。
そんなことを考えるとなかなか即日家を出るということができない
伸之だった。
そんなこんなで、その後伸之は一月余りしたあと、自宅を
出て行った。
約一ヶ月の間、百子が子供たちには何も告げてなかったので今まで通りの
波風立たない日々を、最後の日々を、四人で過ごすことができた。
◇ ◇ ◇ ◇
伸之が自分たちを置いて完全に家を出てからも百子は子供たちには
夫の単身赴任という態で臨み、その後もしばらくの間、離婚の話をすることはなかった。
1日でも長く、娘たちには無邪気な子供時代を過ごさせて
やりたかったからだ。
正直、別れ話をされたあとの伸之との一ヶ月はキツいものがあった。
だがその伸之も師走を前に家を出た。
さて、これからは自由だ。
主婦業は終わったのだ。
もちろん子供たちがいるので家事をすることはこれからも続くが
伴侶のいる主婦業は終わった。
予てより考えていた小説を書くために、多くの時間を自分のために
使うのだ。
後は伸之の出してくる離婚の条件と自分の条件のすり合わせを待つのみ。
長引いても自分はちっとも困らない。
伸之はこれまで給料やボーナスなど、全て自分にまかせてくれていた。
夫がお金に鷹揚なのは性格もあると思うが、不労所得などがあったことも
一因ではなかろうか。
夫は結婚直後にはすでに給与が年収換算で700万円以上あり
不動産や株などの資産も併せると現在では年収総額が3000万円弱ある。
なんといっても不労所得分の占める割合が大きい。
贅沢もせずせっせと14年間の間に励んだ貯蓄の額は
相当のものだ。
へそくり以外の夫が認識している正規の貯蓄もかなり貯めてあるので
自分が密かにせっせと貯めたへそくりの額を知ったら驚くだろう。
まぁ、夫が知る日は永遠にこないだろうが。
その正規の貯蓄もガラス張りにしてあるので離婚の暁には折半となろう。
すでに子供たちの学資保険も一括で済ませてある。
さぁ、どう出るのか……『かかってこい、カモーン』の気分である。
35 ◇重治から
さてと、夫のことや不倫相手のことなど諸々考えずに過ごすためにも以前から
考えていた小説を書くという作業を始めることにしますか。
そう意気込んだものの、漠然と小説を書くということだけ決めていたけれど
どんな話にするのかは全く考えておらず、早々執筆は不調な出だしとなる。
なかなか良いアイディアが浮かばず頭を捻る日々の中、意外な人から
電話連絡が入る。
伸之の父親で重治からだった。
『弁護士を通してということだからマナー違反になるがこれが最後なので
許してくださいよ。
今回の報告は弁護士同士で確認後、百子さんへ連絡が行くと思うので、
同じ内容になると思うが私からも百子さんへ謝罪したくてね。
今回の息子の不始末、申し訳ない。
息子は最初からあちらとの再婚を望んでいたというわけでもないのだが、
私が勧めたこともあって、今回のような選択をしたということです』
『どうして……』
私はそんなに致らない嫁でしたか、と問い詰めそうになった。
昨年義母が右手首にヒビが入った折には、子供たちに留守番をさせて
病院までの送迎や家事の手伝いにと、出来る限りの精一杯をしたというのに、
義父に自分の誠意は届かなかったというのか!
『その代わりと言ってはなんなのだが、伸之にはスッテンテンになっても
まとまった額を譲るよう言いつけてあって、それ相当のものはお渡ししようと思っている。
あなたへの慰謝料1000万円、ふたりの子らの養育費に一人
月額80000円として一括で1150万円、土地家屋名義変更、
財産分与1臆4000万円』
義父が定時してきた額は悪くはない、というか破格の額だと思う。
しかし、ここで礼を口にするのはおかしいよね。
『承知しました』
『ほんとに、すまんかったね。
ただ、来期会社を息子に譲ることにしたのでね、仕事のできる
伊達百合子さんの手が必要になる。
だから百子さんに不満があってのことではないし、あなたが相手の女に
負けたなどと思う必要もないよ。
伸之のことだから、この辺のことをきっとあなたにちゃんと
伝えてないだろうと思いましてね』
ふ~ん、これが義父なりの私への気遣い? 心配り?
だと言いたいわけなのか。ふっ。
『はい、そのような経緯があったとは、存じ上げませんでした。
わざわざご連絡いただきありがとうございます。お義父さんもお元気で』
『ン、あなたもな。じゃあ……』
気前よくポンっと手切れ金を出してくれる意味がここにきて
クリアーになった。
この先、息子と新嫁とで会社を盛り上げ、ジャンジャン儲けるという
取らぬ狸の皮算用があるからなんだと。
この頃、義父の会社の業績は飛ぶ鳥をも落とす勢いで夫が跡を継いだとして、
現状維持でも夫の年収は軽く一億くらいはいくのではないだろうか。
何故にこんなことを知っているかといえば、以前何かの時に夫から聞いたことが
あったからだ。
それで慰謝料やら養育費なども満足のいく額をポンと出すことに
したのだろう。
この話を知った後、不思議と悩みに悩んでいた小説のこと、何を書くのかが
すんなりと決まった。
そして義父から連絡をもらった2週間後、夫との離婚協議が進展し、
夫の婚外子が小学校に上がるまでには離婚届に判をつくと約束。
違反した場合は貰う予定の財産分与を返却すると明記し、私たちの離婚に
向けての取り決めは成立した。
コメント
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第12話、めっちゃ沁みた〜😭💕 百子さんの「これからは自由だ」ってセリフ、14年分の感情が詰まってて鳥肌立ったよ! へそくりの額に「かかってこいカモーン」って心境になるところ、痛快すぎて何度も読んじゃった!義父からの電話で小説のテーマが決まる流れも、運命感じてエモすぎる…!! これからの百子さんの人生、めっちゃ応援したくなる話でした🌸✨