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136
おきつね
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36 ◇書いて書いて書きまくり
小説は大抵フィクションで自由に創作して書くものだと思ってきたが、自分の
経験した日記のようなものを小説にしたからとて、ほとんどの人たちには、それが
ノンフィクションだなんて分かるはずもなく、だから百子は手っ取り早く書けそう
な自分の身近で起きたことを、つまり日記みたいなものを小説にしてしまえ、と決
めたのだった。
やっぱり物語の出だしは夫の伸之との交際が始まった頃からで、あの霊能者の話も
盛り込み、とにかく書いて書いて書きまくり小説として進めていった。
記憶の彼方から当時の自分の想いなどを引っ張り出してくる作業は
思っていたほど苦ではなかった。
百子は実は独身時代から子供たちが幼少期の頃まで腐女子でBL本を
愛読していた時期がある。
当時売れっ子BL作家があとがきで書いていた話がずっと心に残っていた。
『今回は主役キャラの言動が書いてるうちにどんどん勝手に動き出し、予想よりも
遥かに良い作品になりました』
という内容のことが書かれていた。
小説ってどういうことを書くか、っていうことは最初に決めて書くと
思うのだけど、書きながらキャラが勝手に動き出すってどういうこと?
そんなことが起きるなんて……すごい世界があるのだと知り、そんな世界感
を自分も体験できるものならぜひとも体験してみたい、というような望みが
あったため、自分の精神の安定を保つために何かを始めようと思った時、真っ先
に小説を書こうと思ったのだ。
書く練習を兼ねて自伝をフィクションの小説として出すべく、記憶の彼方から
書くべきことを引っ張り出してきて書いて書いて書きまくった。
小説の書き方とか、そんなの知ったぁこっちゃねぇ、って感じで。
だって日記なら好きに書いていいでしょ?
一通り書き終えて一旦は燃え尽きた。
37 ◇投稿サイトに掲載
折角完結させることができたので、ある投稿サイトに掲載することにした。
霊能者の登場が受けたのか、それとも夫に不倫され捨てられるという
お涙頂戴が受けたのか、そこそこいい感じのランキングに入る。
最高6位までいき、自分的には大満足だった。
次の作品こそ、自分で想像から生み出したものを書いてみようと思ったのだが
何も、ちらりとも書きたいものが浮かんでこない。
題材にできるようなものが何か、どこかに、ないものだろうか。
毎日毎日、どうすればいいのかを百子は考え続けた。
新作の題材が思い浮かばない中、たまたまコンテストがあったので
再度注意深く校正という名の見直しをし、コンテストに応募することにした。
初めての連載、初めてのコンテスト、毎日がドキドキするほど刺激的で、
百子の中で事実上の離婚などすでにどこ吹く風であった。
百子が切実にコンテストに応募して良かったと思えたのは誤字脱字を
これでもかというほどたくさん見つけたからだ。
次に書くネタが見つかるまでは、コンテストに受かろうが受かるまいが
個人で出せる電子書籍作りを頑張ってみることを目標にしようと決めた。
とにかく今の百子は過去に囚われぬよう、何かに邁進していなければ
ならないのだ。
そしてもしも次の題材がなかなか決まらなければまったく書くこととは違う分野に
なるが、夏の白いワンピースを縫うことに集中しようとすでに予定を組み入れてもいた。
ひとまずは電子書籍を作ることにした。
そのためにはwordに文章を転載し、その後pdfに変換しなければならず、
まだまだやることは目の前に山積されていた。
38 ◇フィクションじゃなくて実話なの
夫の伸之が家を出て3ヶ月、百子が投稿サイトへ掲載を始めて3週間ばかり
経った頃のこと、大手出版社の山下司という人物からメールが届いた。
その内容とは、百子にとって狐につままれたようなものだった。
要はこの時百子の書いた作品が編集者によってスコップされたということ。
気にいったのでできれば残りの文章を早急に送ってほしい。
最終的に百子の作品をコミカライズさせてほしい、という要望だったのだ。
『えー、最後まで読んでないのに?
そんなこと決められるものなの?
コンテストの結果待ちだって随分先なのに』
でも百子には分かっていた。
コンテストで受賞できるなどとは思ってなかったし、今回のように
もの好きな人から推してもらわない限りコミックにしてもらうなんて
この先一生ないだろうということは。
百子は翌々日の早朝に残りの文章をテキストにコピペして山下へ
メールに添付して送った。
この話はフィクションではなく実話である、ということも正直に書いた。
後はフィクションではなくて実話だという部分を彼がどんなふうに
取り扱うのか、任せてればいいだけ。
正直に白状したので、後はお任せだから百子は気が楽だった。
コミカライズされるなら、電子書籍は一旦中断よね、うん中断しようっと。
山下から翌日には連絡か届き、やはりコミックにしたいとのことで
早速打ち合わせの打診があった。
山下のほうからどこか外でという提案を貰ったが、外だと落ち着かないし
まだ息子は小学生で家を空けるのも躊躇われ、自宅での打ち合わせを百子は
提案した。
コメント
1件
第13話、一気に読んだわ…!百子の「書いて書いて書きまくる」感じがもう滚ってて、こっちまで熱くなった🔥 腐女子時代のBL作家のあとがきエピソードとか、めっちゃ分かる〜って共感したし、編集者から突然スカウトされる展開は胸熱すぎる!「実話です」って正直に白状するところ、百子の潔さがカッコよかった。この先どうなるか気になる…!