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数分後。悪魔型モンスターチルドレン|製造番号《ナンバー》 一の『ベルモス』が手と足を同時に出しながら、やってきた。なんでそんなに緊張《きんちょう》してるんだ?
「おーい、大丈夫かー? ベルモスー」
「わ、私は大丈夫だよ! 師匠《ししょう》! 今、そっちに行くからね……って、うわっ!」
「ベルモス!」
緊張《きんちょう》のあまり、足がもつれて、こけかけたベルモス(悪魔)を助けようと俺は瞬時に体を動かした。
幸《さいわ》いにも俺は立っていたため、瞬時《しゅんじ》にベルモスの両肩を支えることができた。
「大丈夫か? ベルモス。ケガはないか?」
「私は大丈夫……だけど」
「ん? どうしたんだ? どこか痛《いた》むのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……」
「じゃあ、どうしたんだ?」
「だ、だって、師匠《ししょう》の手が……私のか、肩《かた》をガッシリ掴《つか》んでる……から」
「え? あー、すまない。非常事態とはいえ、びっくりさせたよな。ごめん」
その時、ベルモスの顔が真っ赤になっているのに気づいた。
「えっと、もしかして他人に触《さわ》られるのは嫌《いや》だったか?」
「ち、違《ちが》うよ! 師匠《ししょう》は全然悪くなんかないよ! 私が勝手に緊張《きんちょう》しちゃっただけだから、その……心配しないで!」
「いや、そうはいかないな」
「え?」
「今日は【正直になってもいい日】なんだからさ、いちいち遠慮《えんりょ》する必要なんてないんだぞ?」
「そ、そうだね、そうだよね。あははははは」
「それで? お前は俺に何をしてほしいんだ?」
「私が師匠《ししょう》にしてほしいこと?」
「ああ、そうだ。性行為とキス以外ならなんでもいいぞ」
「……えーっと、それじゃあ、私の名前をつけてくれないかな?」
「名前? ああ、そういえば、お前はまだ仮名だったな」
「うん。まあ、今の名前でもいいんだけど、ベルフェゴールとベヒモスを合わせただけだからね」
「そうか。『怠惰《たいだ》の姫君』である、お前にふさわしい名前だと思っていたのだが、お前が改名を望むのなら、そうしよう。でも、本当に俺が名付けてもいいのか?」
「うん! いいよ! 私は、師匠《ししょう》に一生ついていきたいからね!」
「そうか。なら、ちょっと待ってろ。今考えるから」
「うん! 分かった! じゃあ、それまで私は、師匠《ししょう》を『よしよし』しててあげるね!」
「いや、別に俺は……」
「こんなんじゃ物足りないの? じゃあ……脱《ぬ》ごうか?」
「今、座《すわ》るから勘弁《かんべん》してくれ」
「分かった! それじゃあ、行くよー! よしよしー!」
俺がその場に座《すわ》って、ベルモスに新しい名前を考えている間、ベルモスはずっと俺の頭を撫《な》でていた。
____数秒後。(体感時間だから、詳(くわ)しくは分からない)
「……ベルモス」
「なあに?」
「新しい名前、思いついたぞ」
「本当!」
「ああ、本当だ」
「じゃあ、早く教えて!」
「待て待て、そう焦《あせ》るな。というか、座《すわ》れ」
「うん! そうする!」
ベルモス(悪魔)は、俺と向かい合うように座(すわ)った。
先端(せんたん)が尖(とが)っている黒いしっぽをフリフリとうれしそうに揺《ゆ》らしながら……。
俺はその様子を見てから深呼吸した後《のち》、少し間(ま)を置いてから、ゆっくりとこう言った。
「今からお前の名前は……『ライカ』だ」
「……えーっと、漢字で書くと、どういう字なの?」
「『雷《かみなり》』と華《はな》やかな方の『華《はな》』と書いて『雷華《らいか》』だ」
「えーっと、ライカの雷《らい》は、私が使う固有武装の属性が雷《かみなり》だから?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ、華《はな》は?」
「ん? ああ、それか。それはな、お前が『怠惰《たいだ》の姫君』とは思えないくらい明るいからだよ」
「へえ、そうなんだー! ありがとう! 師匠《ししょう》! ハグしてあげるー!」
「おっとと、急に抱きつくのは危ないぞ?」
「えへへー! 平気だよー! だって、師匠《ししょう》は絶対に私を受け止めてくれるんだもん!」
「ははは、ライカは本当に甘えん坊さんだな」
「あー、やっぱりいい名前ー! もっと呼んでー!」
「はいはい、分かったよ。その代わり、大人しくしてろよ?」
「はーい!」
こうして、モンスターチルドレン十人分の『心の暴走』……いや、『心の解放』状態を何とかすることができた。
俺は、この後、朝の八時まで寝《ね》るつもりだ。だって、もう深夜を過ぎているのだから……。
俺の鎖《くさり》の力は使えば使うほど、体が化け物じみていくが、使いすぎると体が敏感《びんかん》になったりするため、休息が必要となる。
だから、一刻も早く寝《ね》たいのだ。
さてと、それじゃあ『ライカ』を寝室に連れて行きますか。