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回想の続きです、
「…うっわ、無理無理無理…。」
3人でPCの前に座り、デモ音源を聴いていると、若井が早々に音を上げた。
「とかいいながらなんだかんだ毎回仕上げてくるじゃん。若井。」
そう俺がツッコむ。
若井が毎回たくさんの努力で仕上げてきている。
そんなの勿論知ってる。
それを知ってるうえでバンド組んでるんだから。
すると涼ちゃんが
「まぁ…覚悟を決めた上で僕と若井は元貴についてってるから!」
そう笑うと、元貴ちゃんと後でデモ送っといてね〜楽譜におこせないから〜、と言う。
「まぁ、俺も頑張って練習するよ。」
そう言って若井は立ち上がり、荷物から何かをガサゴソと取り出す。
「まぁ、息抜きに〜、」
「ゲームしよーぜ!」
その時のくしゃっと笑った顔は中学の頃から何も変わっていない。
懐かしいな。
涼ちゃんのふにゃっとした、優しい笑顔とはまた違う、元気をくれるような笑顔。
もちろん涼ちゃんも若井も大好きだけど、若井は、涼ちゃんへの好きとは また違う「好き」だ。
さっきデモ音源のギターパートで悶絶していた若井に、いたずらっぽくこう言う。
「…若井が負けたらギターソロ増やすね。」
若井は焦ったように
「おい!、いや、負けねぇから!今回は!」と言う。
涼ちゃんはそんな僕らを見て優しい笑顔で笑っている。
あぁ、幸せだ。
こんな日々がずっと続きますように。
チーン
その願いは、数日後に散ってしまった。
花を入れ替えてから、
リンを鳴らし、
仏壇に手を合わせる。
ぎゅっと目をつむり、
少しして眼を開けると、
写真の中であのころと変わらない笑顔をこちらに向けている二人。
その2人に、
こう言った。
「…もうすぐ、其方に行くからね。」