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かんな
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第1話、読みました……。冒頭のステージのまばゆい光と歓声から一転、ひび割れた天井と母親の介護に追われる現実の落差が、すごく心に刺さりました。夢の中で「生きている」と感じる瞬間と、現実で作り笑いを貼りつける柊吾の切なさが痛いほど伝わってきて……。まだ1話なのに、この生活の中でどうやって彼が誰かに“執着”されていくのか、すごく気になります。続き、静かに待ってますね🌙
――まばゆい光の濁流が、全身の皮膚を灼くように包み込む。耳の奥を突き破り、心臓の底を直接叩き割るような、熱狂の歓声。
舞台中央。無数のスポットライトを一身に浴びた「朝倉奏」は、汗ばんだ指先が白くなるほど強くマイクを握りしめていた。
歌い出し――。喉の奥を滑り落ちる熱とともに、突き抜けるような高音が空間を切り裂く。吐き出す息の一つ一つが光の粒となって会場の隅々まで染み渡り、押し寄せた観客の顔が、喜びと快楽にぐずぐずと歪んでいくのが見えた。
(――あぁ、僕は今、生きている)
脳が沸騰するほどの多幸感。全身の細胞が歓喜に震え、視界の全てが白く跳んでいく。この輝きの中に溶けてしまいたい。永遠にこの歌声で、誰かを満たし続けられたなら――。
けれど、その声は。 もう、二度と。
ガタンッ!
激しい落物音とともに、視界がチカチカと火花を散らした。
喉の奥からせり上がってきた鉄の味を、生唾と一緒にぐっと飲み込む。心臓がドロリと溶けて足元へ落ちていくような不快感に、全身の毛穴が開くのが分かった。
(――夢、か)
ぼんやりとした頭で、柊吾はゆっくりと目を開ける。
目に飛び込んできたのは、ひび割れた天井と剥がれかけた壁紙。湿り気を帯びた埃っぽい空気が、鼻腔をつんと刺した。先ほどまでいた眩しい光の渦とは、あまりにもかけ離れた惨めな現実。
身体を起こそうとするが、鉛のように重い。手足がジンジンと痺れ、頭の奥で誰かが金づちを打ち付けているような鈍痛が走る。
(なんでこんなに疲れてんだ、僕……)
枕元に転がっていたスマホの画面をタップすると、表示された時刻はすでに午後五時を過ぎていた。
「っ……嘘だろ」
慌てて身体を起こす。疲労困憊のまま畳の上に倒れ込み、そのまま泥のように落ちてしまっていたらしい。
自己嫌悪が胸の奥で泥のように渦巻く。
ここ最近、昼間にこうして落ちるようなうたた寝をしてしまう頻度が、異常なほど増えていた。
原因は分かっている。以前なら一度寝れば朝まで起きなかった母親が、夜中になると不安そうに室内を徘徊し、時には錯乱して部屋の物を叩き壊すようになったからだ。
その度に心臓を跳ね上げ、飛び起きて宥め撫でさする夜が続いている。まとまった睡眠など取れるはずもなく、脳も身体も常に悲鳴を上げていた。
(――夜に寝てくれないから、昼間に耐えきれなくなって落ちる。で、また夜に起きてなきゃいけない……)
完全に悪循環にハマっている。分かっているのに、限界を迎えた瞼と重たい体躯は、自分の意思では制御できなかった。
ぎゅっと拳を握りしめ、爪が掌に食い込む痛みに耐えながら物音のした台所へ向かう。
案の定、コンクリートのように冷たい床の上に、割れた茶碗の破片が散らばっていた。その横で、母親の真理子が困ったように眉を寄せ、小さく身を縮めている。
「……ごめんなさい、柊吾。また、やっちゃったわ」
「ううん、大丈夫だよ母さん。怪我はなかった?」
朝倉柊吾は顔の筋肉を無理やり引き上げ、完璧な「優しい息子」の笑顔を作った。母親の細い二の腕をそっと引き寄せる。
「破片が危ないから、リビングで座ってて。すぐに片付けるから」
母親をソファに座らせ、柊吾は膝をついて割れた陶器の破片を拾い集める。指先に触れる冷たい陶器の感覚が、嫌でも昔の記憶を呼び覚ました。