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「……フェリ?」
至近距離で優しくアルフォンス様に微笑まれ、私は両手で口元を覆って俯く。
「どうした? 嫌だったか?」
「……う、嬉しくて……、体が爆発四散してしまいそうです……」
モゴモゴと答えると、彼は「爆発しないでくれ」と噴き出した。
アルフォンス様はひとしきり笑ったあと咳払いをし、「とにかく」と話題を戻す。
「フェリは十分魅力的だ。誤解を怖れずに言えば、聖女のレティシアより君のほうが口説きやすいと思って、変な輩が寄ってくる可能性が高い。だからずっと心配していたんだ」
「……確かにそれは一理ありますね」
聖女の側には常に警護の聖騎士がいるし、女官もいる。
彼女の威光に縋ろうとする貴族たちもいるし、下心のある男性が近づこうとしても、そう上手くいかないだろう。
けれど周りの人は〝ハズレ姫〟をそれほど大事に守っていない。
両親はレティだけじゃなく私も大切にしてくれているけれど、実際、身の回りにいる護衛はやる気のない人ばかりだ。
護衛たちだって、聖女を守るならやる気が出るだろうけど、皆から侮られている〝ハズレ姫〟なら、万が一の事も起こらないだろうし、仕事に張り合いもないのだろう。
それを残念だとは思わないけれど、アルフォンス様の言う通り、もしも変な人に絡まれた時に彼らがちゃんと私を守ってくれるかは疑問だ。
考えられる事として、私とレティは外見だけはそっくりなので、人違いする人はいるだろう。
聖なる力を持たない私は軽視されているけれど、私とレティを間違えて誘拐しようとした人は過去にもいた。
加えて「王族なら誰でもいい」と〝ハズレ姫〟でも求愛してくる奇特な人もいるかもしれない。
大抵の人は、私に魅力を感じない訳だけれど。
そんな事を思いつつ、私たちは少し世間話をした。
そのあと少し休憩させてもらい、夕食を共にした。
翌日はアルフォンス様とゆっくりお茶をし、宮殿内や庭園を散歩し、三日目になった。
**
「わぁ! 凄い!」
三日目の午前中、私はアルフォンス様に変身の魔術を使ってもらって歓声を上げた。
部屋を訪れた時、私は水色のドレスを着ていたけれど、彼が変身魔術を使うとまったくの別人になった。
鏡に映る私は茶色い髪に鳶色の目を持つ、純朴そうな顔立ちの女性に変身している。
ドレスも若草色に変わり、令嬢たちの間で流行している外出着に形を変えていた。
「この魔術はいつまで効果を発揮するのですか?」
「俺が魔術を解くまでだ」
そう言ってアルフォンス様は鏡を見ながら自分にも魔術をかけ、その姿を調整していく。
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プラチナブロンドにアクアマリンのような目は、みるみる黒髪と茶色い目に変わった。
彼は鏡を見ながら外見を変えていき、「これぐらいでいいか」と頷く。
実際にドレスや目、髪、顔立ちを変化させているのではなく、私、彼自身に魔術をかけて見る人の認識を歪めているらしい。
「じゃあ、デートしようか〝フィリア〟」
「はい、〝アルフレート〟様」
私たちはあらかじめ決めた偽名を呼び合い、クスッと笑い合った。
帝都デートはとても楽しかった。
貴族の女性が好むお洒落なカフェで、カラフルなクリームがのったケーキを食べ、様々なフレーバーのアイスクリームを贅沢に味わえるパフェも食べた。
魔術で専用の用紙に姿絵を焼き付けられる、焼き絵館で貸衣装に身を包んだ時は、楽しくなって何枚も記念の焼き絵を撮ってしまった。
女性に人気のアクセサリー店に入った時、アルフォンス様は光属性の加護があるペンダントを買ってくれた。
「つけてあげよう」
「……あ、ありがとうございます」
ドライフラワーや薄布で飾られた店内で、私はアンティーク調の姿見の前に立つ。
「髪を押さえていてくれるか?」
背後から彼の声が聞こえ、私はピクッと肩を跳ねさせてからウェーブがかった長い髪を左右に分け、胸の前に垂らす。
するとアルフォンス様は私の首にペンダントを掛け、小さな留め具に少し苦戦してつけてくれた。
「できた。……似合ってるじゃないか」
彼は私の髪をサラッと背中に流し、鏡を覗き込んで笑いかけてくる。
(うう……っ)
デートという体で楽しんでいるけれど、こんなふうに親しげにされると、慣れていないので恥ずかしい。
赤面して難しい顔をしていたからか、彼は私の顔を覗き込んできた。
「どうした? 気に入らないか?」
「いっ、いえっ! とても嬉しいです!」
返事をすると、アルフォンス様は「そうか」と嬉しそうに笑った。
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