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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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仮面を剥ぎ取られたチャンスの顔は、計器が放つ微弱なルビーとエメラルドの光に遮られ、彫刻のような陰影を帯びていた。
そこにあるのは、いつも人を食ったような軽口を叩いている男の余裕などではない。
狂おしいほどの飢餓感と、男としての剥き出しの野心だった。
「あんたが自分で外したんだ。……もう、引き返せないからな」
チャンスの掠れた声が、マフィオソの耳腔を震わせる。直後、二人の衝動はそれまでの追随を許さないほどに苛烈さを増した。
「ひ、あ……、っ、んん……ッ!」
背中を打ち付けられている配電盤が、ガタガタと悲鳴のような金属音を立てる。
その振動がダイレクトにマフィオソの脊椎へと伝わり、脳髄を容赦なく揺さぶった。
銀色の仮面の奥で、マフィオソの切れ上がった瞳が大きく見開かれ、やがて視界が涙で歪んでいく。
強固な意志で組織を束ね、幾度もの修羅場を潜り抜けてきた男のプライドが、狂おしい刺激に一枚ずつ、無残にも剥ぎ取られていく。
チャンスの手が、マフィオソの漆黒のタキシードジャケットを肩から強引に引きずり下ろした。
動きを制限された両腕が、衣服の檻の中で微かにあがく。
シャツの隙間から露出した、大人の男らしい無駄のない引き締まった胸元に、チャンスは容赦なく自らの歯を立てた。
「あぐっ、……ぅ、あ……!」
痛烈な刺激。
だが、肉体に鋭い痛みが走った瞬間、全身を貫く独占欲が爆発的な熱量となってマフィオソの身体を灼いた。
痛みが快楽へと反転し、全身の細胞が歓喜に震える。
マフィオソは自らの唇を噛み切りそうなほど強く結び、声を堪えようとしたが、チャンスはその顎を大きな手で強引に掴み、逸らさせた。
「声、隠すな。今ここにいるのは、ただの俺の腕の中にいる男だろ、ボス」
「だれ、が……っ、そのような、不遜な、……ん、あぁぁッ!」
否定の言葉は、最も敏感な昂りを容赦なく抉るような激しい抱擁によって、甲高い悲鳴へと変えられた。
チャンスの指が、マフィオソの手のひらに割り込み、指と指を深く絡ませる。恋人同士のような、しかし肉体の主導権を完全に握るための強固な拘束。
掴まれたマフィオソの手は、驚くほど熱く、微かに震え、縋るようにチャンスの手を握り返している。
この男が、自分だけに屈している。
その事実が、チャンスのなかの独占欲をどこまでも肥大化させた。
「なぁ、こっち見ろよ。仮面の裏で、どんな顔してんのか見せてくれよ」
チャンスは空いた手で、マフィオソの顔に未だ張り付いている銀色の仮面へと手をかけた。
だが、マフィオソはその手を、残された最後の力で拒むように、自身の顔をチャンスの首筋へと深く埋めた。
「……外すな」
掠れた、酷く甘い声が、チャンスの皮膚に直接触れる。
「これだけは……外す、な……。お前に、これ以上……っ」
すべてを見せるな。
そう懇願するボスの、精一杯の抵抗。
仮面一枚という最後の境界線を残すことで、辛うじて己の理性の形を保とうとするその痛々しいほどの執着が、かえってチャンスの胸を激しく突き動かした。
「……まじで、あんたって人は」
チャンスはふっと、諦めたように、しかし最高に獰猛な笑みを漏らした。
「わかったよ。その代わり、身体の芯まで、俺の匂いで全部塗り潰してやる」
宣言と同時に、チャンスはマフィオソの身体を抱き上げ、逃げ場を完全に塞ぐようにして、さらに深く、その熱い衝動を突き上げた。
「ひ、あ、っ……! ぁ、あ、ぁぁーーッ!」
重力に従って、チャンスの熱情の底へと自ら落ちていくような圧倒的な快感。
マフィオソの銀色の仮面が、激しい衝撃で上を向く。
天井の無機質な配管が視界の中で激しく揺れ、計器の点滅する光が万華鏡のように交錯した。
衣服が激しく擦れ合い、お互いの体温が激しく衝突する音が配電室の狭い空間に反響する。
充満する熱気は、船底の冷たい空気さえも完全に圧殺していた。
「チャンス……、チャンス……っ!」
マフィオソはついに、自ら男の名を呼んでいた。
それは命令でも拒絶でもなく、ただ快楽の濁流へと引きずり込まれる恐怖と悦びに耐えかねた、純粋な叫びだった。
「あぁ、ここにいるよ。あんたの目の前にいる」
チャンスはボスの濡れた髪をかき上げ、仮面から露出した額に、幾度も熱い接吻を落とした。
その熱い衝動はすでに人間の理性を超え、本能のままに互いを貪り合っていく。
マフィオソの身体が限界を迎えたように大きく硬直した。
「あ、っ、もう、無理、……狂う、あ、あぁッ!」
「俺も……、ボス、一緒に行こう……!」
最後の一際深く、狂おしいほどの一撃が重なる。
二人の身体が同時に激しく跳ね上がり、暗闇の中で、熱い情熱の奔流が溢れ出た。
「……は、あ……っ、……ぁ……」
長い、長い高揚の余韻が、激しく震える二人の吐息となって静寂に溶けていく。
マフィオソの手が力なく離れ、彼の銀色の仮面が、ようやく床へと滑り落ちた。
カラン、と虚しい音を立てて転がった仮面の先には、涙と汗に濡れ、完全に快楽に蕩けきった、一人の美しい男の素顔があった。
チャンスは、すべてを出し尽くして自らの胸に倒れ込むボスを、壊れ物を労るように強く、深く抱きしめた。
外では、未だ何事もなかったかのように、絢爛豪華な舞踏会のワルツが響いている。
しかし、この暗い部屋のなかで、二人の絆は、決して元の因縁の関係には戻れないほど、深く、濃密に結ばれてしまっていた。