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#コスプレ
#ドS
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「——怜さん、週末は空けておいてください。実家の両親が、急に『結婚相手に会わせろ』って言い出して」
夕食後、リビングでくつろいでいた真壁くんが、爆弾を投げ落とした。
私は手にしていたココアをこぼしそうになる。
「え、ええ!? お義父様とお義母様に会うの? 無理よ、そんなの……! 嘘がバレたらどうするのよ!」
「大丈夫ですよ、いつも通りにしていれば。……俺が、怜さんを愛してやまない新婚の夫を完璧に演じて見せますから」
真壁くんは茶化すように笑ったが、その瞳の奥には、どこか決意のようなものが宿っていた。
◆◇◆◇
そうして迎えた当日───
真壁くんの実家は、驚くほど厳格な佇まいの邸宅だった。
私の心臓は口から飛び出しそうなほど跳ね、冷や汗が止まらない。
そんな私の震える手を、彼はテーブルの下で
力強く、そして優しく包み込んだ。
「……父さん、母さん。紹介するよ。俺の妻、怜さんだ」
真壁くんの両親を前に、彼は信じられないほど饒舌だった。
私がいかに仕事熱心で、それでいて家庭では可愛らしい一面があるか
もちろんコスプレのことは伏せてを、愛おしそうに語る。
その熱のこもった演技に、私はいつしか「これは本当に演技なの?」と錯覚しそうになる。
しかし、帰り際。
真壁くんが席を外した隙に、お義母様が私にそっと声をかけた。
「……湊が、あんなに必死な顔をするなんて驚いたわ。あの子、最近ずっと、憧れの『年上の女性』がいるって言っていたけれど……。怜さん、あなただったのね」
「え……?」
衝撃で言葉を失う私に、お義母様は微笑んで続けた。
「あの子、あなたの書いた記事や仕事の噂をずっと追っていたのよ。生意気なところもあると思いますが、湊を、どうかよろしくお願いしますね」
帰りの車内、私は沈黙に耐えられず、ハンドルを握る彼に問いかけた。
「……真壁くん、お義母様から聞いたわ。あなた、昔から私のことを……?」
真壁くんは一瞬、ハンドルを握る手に力を込めた。
そして、路肩に車を止めると、深くため息をついて私を見た。
「……バレちゃいましたか。…そうですよ」
「契約結婚なんて、怜さんを俺の側に縛り付けるための口実です。コスプレの弱みを握ったのも、酔った怜さんを介抱したのも……全部、怜さんを独り占めしたかったからです」
「じゃあ…あの契約書は……」
「……あんなの、ただの紙切れです。俺は、最初から本気だった」
真壁くんの告白は、あまりに真っ直ぐで、熱かった。
でも、その告白は同時に「嘘から始まった関係」の終わりを意味していた。
「契約」という盾を失った今、私たちは本当の、剥き出しの感情で向き合わなければならない。
幸せなはずなのに、私は言いようのない不安に襲われた。
だって、彼が愛しているのは「理想の上司」としての私?
それとも「秘密を抱えた」私?
本当の愛が、偽りの誓いを壊そうとしていた。