春先の4月が終わった頃4/30。4月最後の登校日だった。セリーナ・ノヴァック・綾瀬は、図書館の静けさが好きだった。
本棚の間に差し込む午後の光、埃が舞う空気、ページをめくる音。それらすべてが、彼女の好奇心を刺激する。
しかし、この日、図書館の静けさは、死の静寂に覆われていた。
* *
午後四時。放課後の図書館は、いつもより閑散としていた。
セリーナは、文学部の推薦図書コーナーで、19世紀の詩集を手にしていた。
そのとき、図書館員の叫びが、静寂を引き裂いた。
「死体です! 三階の自習室に、生徒が倒れてる!」
セリーナは詩集を放り出し、三階へ駆け上がった。
自習室のドアの前には、数人の教師と生徒が集まっていた。
中を覗くと、机に突っ伏す男子生徒――文化祭実行委員の佐伯亮太が、動かずにいた。
頭部から流れた血が、机の上に広がっていた。
セリーナは兄のエドガー・ノヴァック・綾瀬に連絡する。5分後すぐに到着するとエドガーが言う。
「打撃による頭部外傷。即死ではないが、意識を失ってから数分〜数十分で死亡した可能性が高い」
「つまり、誰かが彼を殴った。 」
近くにいた野次馬たちがコソコソ話す。だがセリーナはそれに耐えられないのか声を荒げる。
「少し黙ってろ」
セリーナはイヤーマフを普段しており過敏にそういうのに反応してしまう感覚過敏を持っていたそれと引き換えに膨大な記憶ができる。そして警察が到着する。佐伯亮太は誰も気づかぬうちにさみしく人生を終えた。
セリーナは、現場を観察した。
机の上には、文化祭の企画書と、割れたスマートフォン。
床には、小さな金属片が落ちていた。
彼女はそれを拾い上げる――それは、眼鏡の蝶番の一部だった。
「あいつは眼鏡をかけていたのに、眼鏡がない……」
山本が言う。山本とは山本紗世という刑事だセリーナとは腐れ縁だ。
「なぜ知っている」
「よくあっていたんだ私は教室に入らないからなだから図書館にいてたまた会うことが多かったんだ。」
余談は束の間セリーナはあることに気づく。
図書館の監視カメラは、三階の自習室の前だけが死角になっていた。
「わざと?」
セリーナの頭に、疑念が灯る。
呆然と立ち尽くしていた少女の名前は佐伯の恋人である女子生徒・小野寺美月に声をかけた。
「あいついや佐伯は最近変なこと言ってなかった?」
美月は顔を曇らせた。
「……実は、文化祭の予算を誰かが流用してるって、佐伯が言ってたんです。 でも、証拠がないから、誰にも言えないって……」
「誰かに脅された?」
セリーナは気づく。
「いえ……でも、昨日、佐伯が『図書館で会議がある』って言って、夜遅くまで残ってたんです」
セリーナが問う
「何時くらいだ?」
「十時くらいです」
セリーナは涼しい顔で「なぜ一体」とつぶやくその時セリーナを嫌う一人である保健委員の桜がくる。
「なぜここにいるの?貴方が何処かに行きなさい2年生のくせに」
「3年だったら偉いのか?」
桜の逆鱗に触れる。
「普段私たちから仕事を奪うくせに!!」
そして夜の図書館。
セリーナは、図書館の利用記録を調べた。
佐伯のカードは、前日の午後9時17分に返却処理されている。
しかし、図書館の閉館は午後8時。
「どうやって入った?」
彼女は、図書館の裏口――非常口のロックを調べた。
鍵は壊されていなかったが、ドアの下に、薄いカードが差し込まれていた痕跡がある。
「コピー用紙を切ったやつ……?」
――生徒が非常口を不正に開けた可能性。
次に、セリーナは佐伯が最後に借りた本を確認した。
『会計管理の基礎』――経理に関する専門書。
彼は文化祭の予算管理を担当していた。
「予算のズレを追っていたのか……」
そして、彼が借りたもう一冊の本に、セリーナの目が止まった。
『図書館の構造と防犯システム』
「これは、偶然じゃない」