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翌日、セリーナは教師たちと委員会長を集めたミーティングに割り込んだ。 「佐伯は、文化祭の資金を流用している人物を追っていた。 そして、それを知った誰かが、彼を殺した」
「証拠は?」と、保健委員長の桜と教頭が眉をひそめる。
「佐伯は、図書館の防犯システムの弱点を調べていた。非常口のロックは、カードで解除できる。 教職員用のIDカードなら、夜間でも入れる」
「つまり、教師が……?」
「いいえ。IDカードのログを見れば、誰が使ったかすぐわかる。 でも、使われていない。 ということは――」
セリーナは、教頭の胸元に視線をやった。
「教頭先生、あなたのネクタイピン、昨日と違う形ですね」
教頭はぎくりとした。
「昨日のネクタイピンは、蝶番式でしたよね?
でも、今日のは一体型。
壊れたんですか?」
教頭の顔が青ざめた。
「佐伯君が拾った金属片――それは、あなたのネクタイピンの一部です。 あなたは、佐伯君が図書館に忍び込んでいるのを知って、 同じくIDカードで中に入った。
そして、彼が予算の不正を暴露しようとしているのを止めようとした。 言い争いになり、机の角に彼の頭をぶつけた――」
「違う! 私は……彼を助けようとしたんだ!」
教頭が叫んだ。
「彼が倒れたのを見て、助けようとした。でも、もう……手遅れで……」
「なら、なぜネクタイピンを交換した?
なぜ、自分のIDカードのログを消そうとした?
なぜ、佐伯君のスマートフォンを壊した?」
セリーナは、スマートフォンのデータ復元に成功していた。
そこには、教頭が会計ソフトのデータを改ざんしている動画が残っていた。
「あなたが文化祭の資金を、個人の借金返済に使っていた。 佐伯はそれを突き止めた。 そして、昨日、図書館で直接問い質した――あなたを呼び出したのは、彼だ」
教頭は、膝をついた。
「……彼が、『先生、辞めさせてください』って言ったんだ。 でも、俺には選択肢がなかった……」
山本紗世が言う。
「署までご同行願います。」
山本が教頭を連行していった。
図書館の静けさが、再び戻ってきた。
数日後、セリーナは図書館の片隅に立っていた。
佐伯が最後に読んだ『図書館の構造と防犯システム』の隣に、一冊のノートが置かれていた。
彼の手書きのメモ。
『誰かが正義を貫こうとするとき、世界は静かに抵抗する。 でも、だからこそ、声を上げるべきだ』
セリーナは、そのノートをそっと閉じた。
「君の声は、届いたよ、佐伯」
そして、彼女は新たな本を手に取った。
表紙にはこう書かれていた。
『未解決事件の謎』
静けさの中、また一つ、好奇心をくすぐる本を見つけだろうか?その時ポツリと呟く
「さようなら佐伯亮太」