正月早々に、渡辺は頭痛がする。最初は、あれ?って程度だった。岩本は実家に帰っている。
連絡するのも、申し訳ない。ベッドで丸くなって眠っている。
大人しく寝てるのに、どんどん酷くなっていく。
渡辺ーひかる・・。
いない恋人を呼ぶ。
次の日、ますます酷くてベッドから、動けない。朝から何も口にしていない。夕方になって、そろりと歩き、水を飲む。
頭が痛くて涙が出てくる。
いつもなら、岩本が抱きしめてくれる、酷いときは、病院へ連れて行ってくれる。
渡辺ーひかる・・痛い・・。
岩本ー頭痛か?
渡辺ー・・ひかる・・?
岩本ー何ですぐ連絡してこない?
渡辺ー実家に帰ってたから。
岩本ー今日、こっちに帰るって言っただろ?
渡辺ーんっ・・痛い・・。
岩本ー熱は?
渡辺ー知らない。
黙って体温計が出される。
受け取ってソファに座る。岩本が体温計を見て渋い顔をする。
渡辺に、熱のある自覚はない。
渡辺ーひかる?
岩本ー微熱だけど、この家じゃ何も出来ないから、うちに帰るぞ。
渡辺ーん。
携帯だけ持って、岩本の家に帰る。
渡辺の服なら、置いてある。
ジャージにサンダル履いて帽子を被る。ゆっくり運転して帰って来た。すぐ、服を脱ぎ捨て岩本のベッドで丸くなる。
岩本ー翔太?
渡辺ー寝る。
岩本ー何も食べてないんだろ?
渡辺ー痛い、いらない。
岩本ーもぅ!
渡辺の隣りに入り抱きしめて眠る。
寂しかったのと、頭痛がして、心細かったのと会えて安心したのと、混ざり合って涙が出ている。
岩本は、何度、泣きながら眠る渡辺を見てるだろう。
代わってやりたいと思うほど、酷い頭痛の時もある。
出来れば、正月早々に病院に、連れて行きたくない。熱が上がらないことを願う。
岩本は、渡辺が深く眠ったのを確認した後、晩ご飯の準備をする。渡辺が食べるか分からないが、朝から何も口にしていない。
岩本ー翔太?食べれるか?
渡辺ーんっ。
岩本ーちょっとでいいから食べよう?
渡辺ー熱い。ひかる・・。
38.4度。唸る岩本。
渡辺はポロポロ泣いている。
毛布ごと渡辺を抱え、病院に向かう。
看護ーあらっ、お正月早々?
岩本ーすみません、今38.4度です。
看護ーいつもの部屋に入って?
岩本ーはい。
医師ー新年おめでとう。
岩本ーおめでとうございます。
医師ー薬、ちょっと変えようか?
岩本ーん〜。
医師ー今の、効いてないみたいだし。
岩本ーお願いします。
医師ー強い薬だから、胃薬も出しておくから。
岩本ーありがとうございます。
渡辺は静かに眠っている。
新しい薬で、少しでも、頭痛が治まり、熱が出なければいい。
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