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#歳の差
資料室の片隅で、類は結衣にひたすらキスを落とす。結衣は次第に力が抜けそうになるが、類が結衣の体をしっかりと掴んで支えていた。
~♪
突然、類のポケットから着信音が鳴り響く。類は無視していたが、結衣が類の胸元を叩く。類はムッとしながら唇を離した。
「ね、え、電話、鳴ってる」
「……はあ、出ればいいんでしょ」
類は小さくため息をついてからスマホを取り出し、電話に出た。
「はい、佐伯です。はい、ああ、佐々木さんならついさっき出て行きましたよ。ええ、あの量を一人で片付けるのは大変なんで、俺も資料片付けるの手伝ってました。はい、失礼します」
(誰だろう?課長かな?)
電話の内容からするに、恐らく結衣を探しているのだろう。資料を片付けに行ってなかなか戻らないから気にしたのだろうか。
「課長が戻って来いって。なんか急遽全体ミーティングするって言ってました」
「そっか、じゃ早く戻ろう」
(よかった、あのままだと本当にやばい気がするもん!)
「もしかして、電話来てよかったとか思ってるでしょ」
「うえっ!?」
結衣の慌てっぷりをみて、類は目を細める。それから、結衣の耳元にそっと顔を近づけて囁いた。
「今度の週末、覚悟しててくださいね」
(うっ、休みの前の日はどっちかの家に泊る約束してるんだった)
類をチラリとみると、にっこりと微笑んでいる。結衣は何とも言えない思いで小さくため息をつくと、資料室を後にした。
◇
結衣と類がミーティングルームに入ると、課長の隣に男性がいる。その姿を見て、結衣は大きく目を見開いた。明るいふんわりとした茶髪に人の良さそうなややたれ目がちな瞳。背は高く、スラリとしていてスーツを着こなしている。
「よし、みんな集まったな。明日からうちの支店にヘルプで来てくれることになった木田だ」
「本社から来た木田です。半年間、お世話になります」
「お世話になるのはこっちの方だ。お前は世話する方だろ。木田のことを知ってるやつも多いと思う。みんな仲良くしてやってくれ」
課長がそう言うと、木田と呼ばれた男は笑顔で会釈する。すると周囲から拍手が聞こえてきた。結衣も慌てて拍手をすると、木田は結衣に気付いて小さく微笑んだ。それを見て、結衣も小さく微笑んで会釈する。
二人の様子に気付いた類は、真顔で拍手をしていた。
「佐々木、久しぶり!」
「木田さん!お久しぶりです」
木田の紹介が終わり、みんながぞろぞろとミーティングルームを後にする中、木田が結衣に話しかける。
「まさか支店にいらっしゃるなんて思いませんでしたよ」
「支店が忙しいって聞いて、だったら俺が来ようと思ってさ。そしたら佐々木がいたから嬉しくなっちゃったよ」
「あはは、木田さんったら相変わらずうまいですね」
木田の言葉に結衣は思わずえへへ、と笑うと、木田も嬉しそうに微笑む。それから、ふと結衣の後ろに目を移した。その場にはもう木田と結衣、そして類しかいない。
「そう言えば、その子は?新人?」
「あっ!ええと、今年他部署から異動して来た佐伯類君です。私と一緒に仕事してます」
「……佐伯です。よろしくお願いします」
類はそう言って小さくお辞儀をした。
「へえ、あの佐々木にも仕事のパートナーができたか。もしかして、仕事以外でもパートナーだったりする?って、こういうこと言うのはセクハラか?駄目だよなぁ」
「あはは、そうですよ!何言ってるんですか、全く。今はそういうの厳しいんですから気を付けてくださいね」
木田がそう言って笑うと、結衣はごまかすようにして突っ込みを入れる。だが、そのつっこみを打ち消すように、類の声がした。
「ああ、バレちゃいました?他の人たちには黙っててくださいね。ここでは秘密にしてるんで」
「……え?」
「っ!佐伯君!」
「あ、そろそろ戻らないと、また課長から電話来ちゃいますよ。行きましょう、佐々木さん」
「え?あ、ちょっと」
類に押し出されるようにして結衣がミーティングルームから出て行く。それを、木田は唖然としながら見つめてている。そして、二人がいなくなると神妙な面持ちでつぶやいた。
「……マジかよ」