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「これで一通り終わったよ。ちょうどいい実験体が来たから君たちの実力もはっきり見れた。ん、今日はこれでおしまい。連絡するね。」というと、ふわふわのタオルを俺たちに渡してくれた。

連絡するためにバルドが208から出ていった。


「…」

「やっぱり研究員ってこんな人しかいないのか…?」

頭をゴシゴシ拭きながらディアさんは言う。

「よ、よくわからないですね…でも話してみると結構良い人だったじゃないですか。」

「それもそうだな…」


ーーーー

一方その頃。


「やっぱりあの二人には他とは違う感じがする」

「当たり前じゃないですかウィローさん、彼らは天界人なんですから。」

「いや、それとは違う。しかもなんか結構優しそうだったぞ。…そうだいいこと思いついた!」

「なんですか」

「それはな…」


ーーーー

帰り。

バルドは研究院の出口まで見送ってくれた。

「また次もよろしくねー」

車のドアを閉められバルドの姿が遠ざかる。


…あれ、次もあるの…?


まだ少し湿っている前髪を気にしていると風樹が言う。

「そんなにびしゃびしゃに…一体何があったんですか。」

「研究院の中に化け物が出て、それを我らとあいつでやっつけたのだ!」

ディアさんが自慢げに言うと風樹とウィローははあ、とため息をついた。

「またですか?あれだけ天界人が出たら出動要請をしろと言っているのに…」


「?」


「あの研究院いつもそうなんです。自分たちで処理してしまう。討伐記録はとらないといけないのに…」

と言ったあともう1回大きくため息をついた。

あたりはすっかり暗い。

「怪我は無いですか。うん?待ってください、さっきやっつけたって…」

「そう。我ら3人で倒した。」

カサカサと触っていた書類をバラバラにするほど風樹は驚いた。

「あなたたち天界人の討伐もできたんですか!!」

「あの化け物のことか?」

「化け物…まあそんなところです。」

「本当はあれもあなたがたと同じ…そういえばしっかり説明はしていませんでしたね。」

「あいつらは天界から堕ちて来たあなたがたと同じ天界人です。彼らは負の感情と言う強い怨念を抱いています。それらは彼らに絡みつき、彼らを凶暴化させるのです。その結果、その怨念のあて先が僕たち人間と。」


「ほ、ほう…」

「だから天界人は歓迎されないんですね。」


返しに困ったのか、一斉に全員が黙り込む。

「あっ」

運転席からウィローの声が聞こえた。

「そうだ風樹、これからの話を…」

「ああっそれだ!それを話そう。これからのことなんですけど。」

「あなたたち、2課に来ませんか!」


「えっ」「は?」


動揺する俺たちを置いてウィローが話し始める。

「実は書類とかの整理だけでも手伝ってもらおうと思ってたんだけど、討伐もできるんならいい人材だと思ってね。」

「ええっ」

確かに下界に堕ちてからは拠り所がない。それに霊力を抑えていたらもし戻れた時に使えないと見捨てられても路頭に迷うだけだ。発揮できる場所があるなら行かない選択肢は無い。

「ふん、翠。」

「そうですよね、ディアさん。」

2人とも顔を見合せて言う。

「ぜひお願いします!!」


ーーーー

「はっはっはっ」

ウィローは高笑いした。

「さすがだな!タダでさえ人手不足だってのに。」

続けて風樹が言う。

「ウィローさんの言う通りでしたね。」

「何か言っていたのか。」

ディアさんが聞くと、

「ううん、そんな大したことじゃない。聞いてもどうでもいい話さ。」

と言った。実際、どうでもいいが。


「人手不足って…二人しかいないんですか?初めに見た時は沢山いた気がしましたが。」

「あれは他の部署のやつだ。2課は合わせて3人しかいなくてな。」


「3人!」

ディアさんが驚いて言う。


「ということはあと一人いるのか?」

「ええ。今日はまだ寝ていますがね。」

「寝ている?」

「きっとメンバーが増えると言ったら彼女も喜ぶことでしょう。」

ディアさんは俺に小声で話しかける。

「まだ寝てる人…なんかボスっぽいぞ…」

そうか…?と思いながら窓の外を見る。

昼とは違う景色が見えた。もうすっかり夜だ。

「今日は一応宿をとりましたよ。こんな時の補助金とかないですからね、すいません。」

再び静かになる。

「そうだ、音楽でもかけよう」

誰かの提案で車の中には音楽が流れ始めた。

♪〜、♫〜♪♪…

2課の2人…いや、4人を乗せた賑やかな車は都市を駆け抜けて行った。


つづく




バルドは爆発好きです。俗に言うマッドサイエンティスト。

ウィローさんはお人好し。みんなの頼れる大先輩です。


下界は地獄です。

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