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第16章:魂の檻と雷帝の記憶
アーカ=ヴェスの深奥――
雷帝ゲル=オルドの記憶が眠る場所へ向かうゲズ。
その空間は、彼自身の“心”を映す鏡だった。
空は灰色。地は割れ、見渡す限りの荒野。
そこに、もう一人のゲズがいた。
⸻
―試練の始まり―
「……お前、誰だ」
そう問うと、鏡のような“もうひとりの自分”が言う。
「お前の中の“恐れ”だよ。
お前は力が欲しい。でもその力で何を守れる?
誰も救えず、また――大切な人を失うんじゃないか?」
ゲズは唇を噛む。
過去の後悔、リオンを失った日。
誰も助けられなかった日々の記憶が、空間に浮かび上がる。
「お前は“英雄になりたい”んじゃない。
“英雄だったと思われたい”だけじゃないのか?」
ゲズの拳が震える。
「……ちがう……!俺は――!」
⸻
―雷帝の声―
空間に、低く重々しい雷鳴が響く。
次の瞬間、空から雷帝ゲル=オルドの魂が現れる。
その姿はゲズによく似ていたが、
目には炎のような雷と、深い静けさを宿していた。
「恐れを認めろ。それが“力の核”だ」
ゲズが叫ぶ。
「怖いよ!また誰かを失うのは!でも、それでも俺は――
あいつらと一緒に未来を見たい!!」
その瞬間――鏡の“恐れのゲズ”が砕け、
雷がゲズの全身を貫く。
⸻
―覚醒・魂を断つ雷―
《ソウルスレイヴ》――覚醒。
雷の刃が、ゲズの腕に宿る。
それは剣ではなく、魂の意志を具現化した“雷の鎖剣”。
「これは、“魂を切る力”。
不死の存在の心核に届く唯一の手段だ」
雷帝がそう語り、霧の中に消えていく。
⸻
―その頃、セレナにも異変が―
ゲズの試練と同じ頃。
アーカ=ヴェスの別の間で、セレナは一冊の古文書を見つける。
開いた瞬間、彼女の瞳に――血のような光が宿った。
「セレナ・=ルクス。
あなたの系譜は、ルシフェルの“鍵”に繋がる」
「あなたの存在は、彼女の“不死の回路”と共鳴する因子を持つ。
いずれ、あなたの命が“彼女の器”として選ばれる可能性がある――」
セレナの身体が崩れ落ちる。
その手が、震えた。