短い休憩時間。バックオフィスの椅子に座った律は、資料を手にしたままうつらうつらと目を閉じていた。
「……寝ちゃってる」
そっと近づいた華は、足音を殺して立ち止まる。
厳しい表情ばかり見てきた律が、今は穏やかに眠っている。
まるで別人のように柔らかい寝顔に、胸が高鳴った。
そのとき、不意に律の手が動いた。
「……ん」
寝ぼけたように伸ばされた指先が、華の腕を掴む。
「きゃっ……!」
引き寄せられるように身体が傾き、顔がすぐ近くまで迫った。
吐息が触れそうな距離。
「……律さん……」
思わず名前を呼んだ瞬間、華の心臓は破裂しそうなくらい跳ね上がっていた。
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