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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第84話 〚“声の差”を見逃さなかった〛
― 海翔視点 ―
朝。
目を開けた瞬間、
一番最初に入ってきたのは、
澪の声だった。
「海翔、朝だよ」
それだけで、
体が動いた。
考える前に、
目が開く。
「起きてる」
そう答えたけど、
正直に言えば、
半分は起きていなかったと思う。
それでも、
澪の声だけは
逃さなかった。
えまを起こす澪を横目に、
俺は反対側を向く。
「真壁、起きろ」
……反応なし。
もう一度。
「朝だ」
……動かない。
(やっぱりな)
少しだけ、
声を強める。
「集合あるぞ」
それでも、
何も変わらない。
そのとき、
澪が近づいてきた。
嫌な予感が、
一瞬で胸を掠める。
「……真壁くん。起きて」
次の瞬間。
勢いよく起き上がる、
真壁。
早すぎる。
あまりにも、
迷いがなさすぎる。
(……今の)
俺は、
無意識に一歩前に出ていた。
澪の前に立つ形になる。
澪は、
小さく驚いた顔をして、
それ以上何も言わなかった。
真壁は、
何事もなかったみたいに
笑っている。
でも、
俺の中では
はっきり線が引かれた。
同じ言葉。
同じ距離。
同じ朝。
なのに——
反応が違う。
それは、
偶然じゃない。
勘違いでもない。
(……声の差、か)
澪の声だけを
拾っている。
それが、
無意識なのか、
自覚があるのかは分からない。
でも、
危険なのは
どっちでも同じだ。
澪は、
何も悪くない。
ただ起こしただけだ。
それなのに、
澪の存在だけが
特別扱いされる。
それが、
一番危ない。
俺は、
何も言わずに
澪の横に戻った。
距離は、
少しだけ近く。
でも、
それは守るための距離。
三日目。
帰る日。
だからこそ、
気は抜けない。
俺は、
はっきり決めた。
今日一日、
この「差」を
澪に背負わせない。
気づいたのは、
俺だけでいい。