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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第85話 〚三日目に“決定的な差”を感じた〛
― 担任視点 ―
三日目の朝。
集合時間より少し早く、
廊下を歩きながら
各部屋の様子を確認していた。
大きな問題は、
起きていないことよりも、
「空気」だ。
——今日は、
その空気が違った。
澪が部屋から出てくる。
表情は落ち着いている。
眠そうではあるが、
怯えている様子はない。
そのすぐ横に、
海翔がいる。
距離は近いが、
触れない。
近すぎず、
遠すぎず。
意識的に
“守る位置”に立っているのが
一目で分かる。
(……この子は)
ずっと、
考えて行動している。
その後ろから、
真壁恒一が出てきた。
澪を見る目が、
一瞬だけ変わる。
言葉はない。
動きも派手じゃない。
でも——
視線が、一直線だ。
その瞬間、
海翔が半歩前に出る。
本当に、
自然に。
誰にも気づかれないほど、
さりげなく。
それで、
真壁の視線が
一度、止まる。
(……今の)
私は、
確信した。
これはもう、
「相性」でも
「誤解」でもない。
反応の差だ。
澪が声をかけると、
真壁は即座に反応する。
海翔や、
他の生徒が同じことをしても、
同じ反応は返らない。
それを、
本人は
「普通」だと思っている。
だから、
厄介だ。
一方で——
海翔は違う。
澪を見る目は、
一貫している。
独占でもない。
期待でもない。
ただ、
危険を避ける目だ。
守る側の目。
(……決定的だな)
この二人は、
同じ場所にいても、
全く違う立場にいる。
片方は、
自分の感情を中心に世界を見ている。
もう片方は、
相手の安全を中心に行動している。
同じ「近さ」でも、
意味が正反対だ。
私は、
心の中で決めた。
今日一日は、
配置を崩さない。
声かけも、
移動も、
席も。
全て、
「偶然」を装って
管理する。
澪には、
何も知らせない。
海翔にも、
言葉では伝えない。
でも、
私は見ている。
三日目で、
ここまで差が出たなら——
これ以上、
曖昧には出来ない。
修学旅行は、
“楽しい思い出”で終わらせる。
そのためなら、
私は
悪者になってもいい。
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