この作品はいかがでしたか?
21
この作品はいかがでしたか?
21
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
休日。ドレークさんと街に買い物に来ていた。今日の俺はいつもよりもラフな格好をしている。ドレークさんも海軍のコートやらを脱いで、シンプルな私服姿だ。
2人で並んで歩いていると、周りの人がチラチラと見てきているのがわかる。ドレークさんはもちろんカッコいいし、俺も不細工じゃないからな。視線を集めてしまうのは仕方がない。
誘ってくれたのはドレークさんなのだが、先ほどから俺の行きたいところばかり回っている気がする。今いるカフェも俺がフルーツタルト食べたいって言ったから来たわけだしな。まあ美味しいからいいんだけど。
それにしても、ドレークさんは俺を甘やかしすぎだと思う。今もほっぺについたクリームを拭われたし。恥ずかしいんだが。恋人かっつーの…。
俺がそんなことを思いつつ、紅茶を飲んでいると、ドレークさんが口を開いた。
「ジェディ、ここを出たら次は靴屋に行ってもいいだろうか」
「もちろんいいですよ」
フルーツタルトをごく、とのみこんでからそう答える。うん、やっぱり美味いな。
「ドレークさんの食べてるパウンドケーキも美味しそうですね」
「一切れ食べるか?」
「え、良いんですか?」
「ああ」
やった! と思いながら差し出された皿を受け取る。
「ありがとうございます!」
そう言いながら、俺はフォークで切り分け、口に運ぶ。ふむふむ、これは中々……。
俺がモグモグと咀噛していると、視線をひしひしと感じた。なんだと思って見てみると、そこには俺のことを凝視しているドレークさんの姿があった。
「ま、またクリームついてます?」
「いや、ついていないぞ。随分美味そうに食べるなと思っただけだ」
と、目を細めて笑うドレークさん
「そ、ソウ、デスカ……」
恥ずかしくなってしまって俺はドレークさんに皿を返しつつ顔を手で覆い隠す。クッソ恥ずかしい。顔あつ……。ドレークさんは天然なんだろうか。さらっとこういうこと言えちゃうあたりさぞおモテになるんでしょうな……。
ちら、とドレークさんの顔を見ると、まだこちらを見ていて目が合う。すると、ドレークさんは俺の頭をぽん、と撫でてから微笑んだ。だからそういうのは止めてくれませんかね!?俺の心臓がもたないんですよ!!
その後、食べ終わるまで俺は自分はノーマルなんだと自己暗示をかけていた。
そして靴屋に着いたのだが、俺は思わず感嘆の声を上げる。お洒落な店だなぁ。ショーウィンドウに飾られている靴たちもすごく綺麗だ。俺は思わずガラスに張り付くようにして眺める。
すると、後ろでくすりと笑い声が聞こえたので振り返ると、そこには笑みを浮かべているドレークさんの姿があった。そこでハッとして、俺は慌てて姿勢を正す。子供みたいにはしゃいでしまった。恥ずかしい。
先に店に入ったドレークさんの後ろについていく。店内に入ると、店員さんが「いらっしゃいませ」と笑顔で迎えてくれた。
「ジェディ、好きな色は?」
「え? えーっと、寒色系が好きですね。あとは白とか、黒とか…」
俺がそう言うと、ドレークさんは店員さんを呼びつけていくつか靴を持ってくるように言った。
運ばれてくる靴はどれもドレークさんには履けないようなサイズ。……ってことは、俺のサイズの靴ってことだよな?
「あ、あの、俺こんな高い靴買えるようなお金持ってなくて……!」
俺が焦った様子で言うと、今度はドレークさんがきょとんとした表情をした。いや、きょとんとする場面じゃなくないですかね……?
俺の心の中のツッコミは届くはずもなく、ドレークさんは何事もなかったかのように俺の足に触れて靴を脱がせる。
「どっ、ドレークさんっ」
「じっとしていろ」
「はい……」
有無を言わせないその言葉に、俺は大人しく従う。……なんか変に緊張してきた。
そのまま何足か試した後、ドレークさんはようやく納得したのか、1つの靴を手に取った。その靴は、黒い革で作られた短いブーツだった。足首までの丈があるそれは、シンプルながらも洗練されたデザインで、一目見ただけで高級品だとわかる。
俺は恐る恐る手に取り、まじまじと見る。これ、絶対高いだろ……。俺みたいな一般市民が手を出せる値段じゃない気がするんだけど……。
そう思ってチラッとドレークさんの方を見るが、当の本人は満足げな表情をしている。
「立って見せてくれ」
「は、はいっ」
言われるがままに立ち上がり、俺はその場でクルッと回って見せる。
「どうですかね……?」
「よく似合っている」
ドレークさんはそう言って柔らかく微笑む。俺はそれに照れてしまい、「あ、ありがとうございます……」と言って俯いた。
会計はすべてドレークさんが済ませたらしく、店を後にするときに店員さんから靴の入った袋を渡された。俺が戸惑っていると、ドレークさんが代わりに受け取ってくれた。
「あっ、あのっ、ドレークさん、なんで靴をプレゼントしてくれたんですか?」
歩きながらそう尋ねると、ドレークさんは前を見たまま答える。俺が答えを待つと、やがてドレークさんの口が開かれた。
「俺があげたいと、思ったからだ」
そう言ったドレークさんの耳が少し赤くなっていることに気付いて、俺はなんだかくすぐったくなった。