テラーノベル
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そして今、システム部のデスクに至るというわけである。だが、悩みはそれだけではなかった。
(ああっ、なんてことを……! 僕まで、彼女の肌に「跡」を付けてしまうなんて……!)
僕は普段の自分からはありえない「理性の消失」に、深い自己嫌悪に陥っていた。あの最中、白石さんの白い肩や鎖骨に、自分でも無意識に痕跡を刻んでしまったのだ。
『……いいんですよ。これ、陽一さんからのお返しですよね? 嬉しい……♡』
事後のベッドで、彼女は幸せそうに微笑んでいたけれど。
(はあ、いい年して……僕は一体何をやってるんだ……)
大きなため息をついて、重い頭を抱えながらモニターに向き合った、その時。
「――フッ」
背後から、不敵な笑い声が聞こえた。
「……お前、襟足から致命的な脆弱性(キスマーク)が露出してるぞ」
「……っ!」
慌てて首元に手を当てる。見上げると、そこにはニヤニヤしながら僕のデスクの端に腰掛ける佐藤がいた。
「嘘だって。秋とはいえ、この暑さで第一ボタンまで完璧に留めてるのは怪しすぎだろ。カマをかけたらやっぱりな。……俺だって新婚の頃は、嫁にキスマークくらいつけられたこともあったんだぞ。今じゃ遠い昔の話だけどな」
「あ、いや、これは、その……」
「ずいぶんとお盛んなようで。なるほど、営業部の女神様は、一度捕まえた獲物は絶対に逃さないタイプか。……ご愁傷様」
いつもの軽口。だが、今日の佐藤はどこか雰囲気が違っていた。その表情は穏やかで、どこか吹っ切れたような清々しさがある。
「……なにか、いいことでも?」
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芙月みひろ
92
#王子