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オルタナがエイアと共同研究をしていたある日のこと。
ルナの元パーティメンバーであるセルトとベルガがようやく日常生活を送れるまでに回復し、ルナとユリアと共に久しぶりに集まって食事会をすることとなった。
ここしばらくの間、互いの状況を知ることがなかったために彼らはかなり積もる話が合ったようで食事の席での会話がとても盛り上がっていた。
「いや~、ようやく自由になれたな!」
「確かにずっとベッドで横になっているのは退屈だったからな。こうやってみんなと当たり前に食事をとるのも新鮮に感じる」
セルトとベルガは久しぶりにこうして楽しく食事を出来ることをとても喜んでいた。ルナとユリアも久しぶりにみんな集まっての宴会に気分が高揚していた。
「そうよね~、みんな無事に生きて一緒に食事が出来ているのって奇跡かもね」
「本当に楽しいね!」
「そういえば、ルナは冒険者の方は上手くいっているのか?あのオルタナさんとパーティ組んでるって聞いたけど」
セルトがルナに近況を尋ねるとベルガもユリアも気になっていたようで一斉にルナの方へと視線が向いた。ルナはみんなの注目が集まっているのに少し戸惑いながらも笑顔で答える。
「オルタナさんにはとても良くしてもらっていて、とても順調だよ!でもオルタナさんとのパーティは次のパーティが見つかるまで一時的に…っていう約束だから頑張っていいパーティを見つけないといけないんだけどね」
「そうなのか…ルナを必要としてくれるパーティが見つかるといいな」
ルナの話を聞いた他のみんなは一斉に彼女のことを励ました。セルトもベルガもユリアも一人だけ冒険者を頑張って続けていることをとても応援しているのである。
ルナは仲間たちの言葉を聞いて自分は本当に良い仲間とであったなと感じていた。
「ユリアは今どうしてんだ?前に新しい仕事を探すって言ってたような気がするけど」
「それの事なんだけどね、実は私…王都の学園で働こうと思ってるの」
「「「王都の学園?!」」」
三人の驚きの声が思いのほか大きく響き渡る。
だが周囲もかなり盛り上がっていたので特に注目を集めることはなかった。
「そうなの。この前、偶然にも王立学園で教員助手を募集してるっていう張り紙を見つけてたの。それで思い切って手紙を出してみたらつい昨日返事が返ってきて、面談したいから近々学園に来てくれって書いてあったの!」
「まじか!すごいじゃん!!」
「ああ、それはめでたいな」
「おめでとう!ユリアちゃん!!」
「ありがとう、みんな!でもまだ確定したわけじゃないから分からないけど、頑張って助手で経験を積んでいつかは私も教鞭を振るう立場になれたらな~って…」
ユリアは少し恥ずかしそうになりながら将来の夢を語る。他のみんなも次々に彼女を応援する言葉を彼女にかけてみんなでその夢を共有しているような感じになっていた。
「そういう、セルトとベルガはどうなの?これからどうするつもりなの?」
「そうだな…」
「う~ん、とりあえず故郷に帰ろうかなって二人で話してたんだよな~」
セルトとベルガは同じ村出身の幼馴染であり、共に冒険者になるためにオリブの街へとやってきた。そんな彼らは昨日までいたベッドの上で一緒に故郷に帰るかどうかについて話していたようだ。
「俺たち良くも悪くも冒険者になりたい!ってしか考えずにこの町に来たからそれが出来なくなった以上、帰るしか考えられないんだよな」
「まあ村に帰れば畑仕事や動物の世話とか色々仕事はあるだろうし、食うには困らないだろうからな」
「そ、そうなんだ…」
「なんかごめん…」
ルナとユリアは少し悪いことを聞いてしまったかのように少し落ち込んでしまった。その様子を見たセルトとベルガは慌ててテンションを盛り上げようと話し始める。
「いやいや、別に落ち込む必要ないって!短い期間だったとはいえ、俺たちは冒険者になるって言う夢を叶えていろんな冒険者したんだ。今回のことも俺たちに取ってみればいい思い出さ」
「ああ、セルトの言う通りだ。ドラゴンと戦って奇跡的にでも生きて帰ってきたんだ、これは俺たちにとって立派な武勇伝になるさ。むしろ胸を張って村に帰れる」
セルトもベルガもとても満足そうに笑い合っていた。
その笑顔を見たルナとユリアも釣られて笑顔になっていた。
「そうね、きっと村の人たちからしたらドラゴンと戦っただなんて信じられないでしょうけどね」
「ああ、違いない。どうせ『そんな冗談言ってないでさっさと畑耕してこい!』って言われるだろうな」
セルトの冗談にみんなが笑いだす。
その後も互いの話で盛り上がり、楽しすぎて時間を忘れて飲み耽っていた。
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そしてその宴会から数日後。
セルトとベルガは彼らの故郷に、ユリアは王都に向かって出発する日がやってきた。
途中まで方向が一緒のため、彼らは共に乗り合い馬車に乗って早朝にオリブの街を出発することになった。ルナはそんな彼らを見送るために朝早くから街の門の近くにやってきていた。
「お~い、ルナ!こっちこっち!!」
「ユリアちゃん!」
ルナが市壁の門付近で辺りを見渡していると、遠くからユリアの呼ぶ声が聞こえた。声の方を向くとユリアたちがルナに手を振っていたので急いでルナは彼らの元へと向かった。
「こんな朝早くからごめんね」
「そんなことないよ!みんなとのお別れが出来ないなんて絶対に嫌だから!」
「おいおい、二度と会えないって訳でもないんだぞ」
セルトの突っ込みでみんなが思わず笑いだす。
そうだね!とルナもとびっきりの笑顔で笑っていた。
「まあ、でも今までみたいに簡単には会えなくなるだろうからな。俺もルナと同じく別れの挨拶ぐらいはちゃんとしたいと思う」
「まあ、そうだな」
「ええ、そうね」
ベルガがそう言うとセルトもユリアも少し寂しそうな顔で呟いた。彼らは心の中の寂しさを紛らわすために笑ってごまかしていたのかもしれない。
「じゃあ、業火の剣…最後の任務だ!」
セルトがみんなの前に立ち、自らの拳を高く空へと突き上げた。
そして笑顔でパーティメンバーの方を見て告げる。
「新たな旅立ちは笑顔で!そして『さよなら』じゃなくて『また会おう』だ!」
セルトのその言葉に少し涙ぐんでいたルナやユリアは涙を拭い、笑顔でセルトと同じように拳を天高くつき上げる。ベルガも同じく拳を上げる。
「冒険者パーティとしての業火の剣は解散しても、俺たちはいつも業火の剣だ!これからそれぞれ歩む道は違えど、みんなが幸せな人生が歩めるように願っている!!」
そして彼らは空へと突き上げていた拳を下ろして、みんなでその拳を突き合わせる。それぞれが互いの顔を見合わせて新たな旅立ちを祝福する。
「それじゃあ…業火の剣、出発!」
「「「おう!!!」」」
それぞれの道を歩き始める彼らの顔はとても希望に満ち溢れていた。
そうしてセルトとベルガ、そしてユリアの乗った乗り合い馬車はオリブの街を出発していった。そんな様子をルナは馬車が地平線の彼方に消えるまで見続けていた。