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病院を後にし、夕闇が降り始めた駒場東大前の坂道を、僕たちは並んで歩いていた。オレンジ色の街灯が、隣を歩く彼女の横顔を淡く照らしている。
「……かっこよかったです。今日の陽一さん」
「……いや、美咲の攻撃をまともに食らったの、数年ぶりだったよ」
僕が苦笑して答えると、彼女は足を止め、さらに僕の方へ歩み寄った。
「それだけじゃないです。私、同僚の佐藤さんから聞きましたよ。会社で、役員から私を庇ってくれたこと。……陽一さんはいつも自分のことをモブだって言うけど、私にとって、たった一人の『主役』なんです」
彼女の指先が、僕のシャツの裾に触れた。前腕を、彼女の細い指が愛おしそうになぞる。そのまま、彼女は僕の胸に顔を埋めるように一歩踏み出し、潤んだ上目遣いで僕を捕らえた。
「私……明日、誕生日ですよね? プレゼント、早めにもらっちゃダメ……ですか?」
頭の奥で、何かが焼き切れる音がした。
──部屋の扉が閉まりきる音さえ待てず、僕たちは深く唇を重ねた。
#ワンナイトラブ