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「ねぇねぇ」
『天竺の姫はすっごく可愛いんだってさ。』
気まぐれな総長が何を言い出すかと身構えれば天竺の姫が可愛い…という可愛らしい内容であった。
物騒なことを考えたのは無敵のマイキーこと総長の日頃の行いのせい。
「あ、それ聞いた事あります!」
壱番隊副隊長の松野千冬は不良についてかなり詳しいので、今回の天竺の姫の噂も知っていたようである。
「だからさ、今から会いに行こうぜ」「でもどこにいるんだ?」
「岬公園ってとこによくいるらしいっす!」
何処によく居るかの情報まで知っている様だ。流石だなぁ…
・ ・ ・
そんなこんなで岬公園に到着した。
かなり汚れてるし、遊具もほとんどない。という理由からかいつも人が少なく、子供が遊んでいる所を見るのは1年に数回程度だ。
この公園によく居る…とは言ってもいつもいる訳ではないので天竺の姫と会えるとは限らない。
「どこにいるんすかね?」
「んー…あ」
そう声をあげた万次郎に、3人は万次郎の視線の先を見る。視線の先には恐らく天竺の姫であろう女性の後ろ姿。見たこともないから分からないけど「綺麗」という情報からこの方なのかなぁと思った。
本当に綺麗な人って後ろ姿から分かるんだなー…なんて考える。
すると4人が送る視線に気づいたのか天竺の姫がこちらを振り向いた。
目が合ったよに笑一瞬時が止まったかのようにぴたりと動きが止まった。まさに一顧傾城だ。
20秒、30秒、と言ったところだろうか。最初に自我を取り戻した万次郎が「きれぇ…」と一言零したのが聞こえた。
実際に見る葵は本当に綺麗だった。顔だけじゃなくて、雰囲気も全て。目を奪われる、ってこういうことなのか。
お世辞とかじゃなくて、本当に今までみたどんなに綺麗な女優さんやモデルさんもこの方と比べれば顔負けなくらいに綺麗で可愛く美しい。
シュッと整った鼻に、ぱっちりとした目。そして、バサバサと音がつきそうなくらいに長いまつ毛。唇も薄く、ぷるぷる。
まさに“理想”である。儚く綺麗な白っぽい髪色とも合わさり、「天使…?」と本気で思ったくらい。何秒…いや、分か?とにかくいくつか時間がたった時。「なに?」と、綺麗な声が視線の先から聞こえてきた。
「あー…天竺の姫…鬼灯葵がどんなヤツか見てみたかったから。それで見惚れてて。」
天竺の姫は鬼灯葵という名前らしい。
「そっか。鬼灯葵ってのは私。」
「って…灰谷兄弟!?」
そう驚き声をあげたのは千冬。
彼女__葵の両隣には、あの“六本木のカリスマ”が座っていた。夢中で全然気づかなかった…まさか此奴らも天竺か?
天竺の情報は「やべーやつら」「総長はイザナ」以外は何も知らなかったが…
天竺、ヤベーな。
「あ゛?」そう不機嫌な声をだしたのはそのカリスマ兄妹の兄の方、灰谷蘭だ。
「…何か話すなら中、入る?見たかっただけならどうでもいいんだけど。ずっとここでじーっと見られてんのも居心地悪いから。」
「……じゃあ、話す」
「り。じゃあ近くに行きつけの店があるからそこでいい?」
「おう。」
「ここ。」
案内したのは私の行きつけの店___天篤(てんとく)店。
「「「「おぉ……」」」」
そう、ここ…天篤店は、何か独特な雰囲気を纏っている。だが比して風貌が変わっていたり、などはないから不思議だよね。
ちなみに蘭と竜胆とは一旦解散したよ。
あ、そうだ。
『何か言っておきたいこと、ある?』
言っておきたいこと、というのはこれからの抗争の話。私達、幹部___上の立場から宣戦布告は出していないがきっと流れで東卍のメンバー達も察しているだろう。(電車で見かけたりウチの下っ端達が東卍狙って暴れたり……など。もちろん勝手に暴れた構成員は絞めたが。)
まぁ、敵同士の私がこんなこと聞くのもおかしいど思う。だが、私達天竺は東卍の主なメンバーを把握してるが、それに対して東卍が天竺に対して持っている情報は恐らく『ヤベぇ奴ら』『総長はイザナ』『天竺の姫は鬼灯葵』くらいだと思う。それプラス人数差に年の差…客観的に見れば東卍は圧倒的不利な状態にある。だから、というのもなんだがやはり戦うなら本気でやり合いたい。ので少しくらい情報を与えていた方が私も楽しめるし東卍は情報を得られて少しは不利さもマシになるし、でwin-winなのだ。
「…できれば主力メンバーが教えて欲しい」
主力メンバーね。
『他は、何かある?言える範囲で、なんだけど。』
「何で俺ら…東卍に情報を与えるんだ?俺らに教えても天竺にメリットは無いはずだ。」
『いや、あるよ。』
『客観的に見ると今不利なのは東卍。でも、私は本気で殺り合いたいの。私は卑怯な手を使ったりするのが嫌いだからね。例えそれで勝てたとしても虚しいだけだと思ってる、やるなら本気でやりあいたいと思ってるし。……ごめん、長々と話しちゃったね。これは私の考え方、だから天竺の他のメンバーがどう思うかは分からなんだけど。』『まぁ、私が楽しめるってコト。』
「なんか……かっこいいっすね!」
・ ・ ・1時間後。あれからは5人で雑談に花を咲かせていた。
存外、みんなと話すのは楽しかったので話題に尽きたりはしなかった。
『またね。』
「ちょっとまって。…連絡先交換しねぇ?」
もうそろそろ暗くなりそうだから帰ろうかなぁと思いまたね、と手を降ると連絡先を交換しないか、と引き留められた。
「連絡先…?いいケド」
連絡先を交換し満足したのか、今度こそ東卍の皆と解散した。