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「突然ですが、今日は魔法のお店に行きたいです」
「わたしは大丈夫ですよ!」
「私も問題ありません。何か用事でも?」
朝食中、今日の行き先を早速提案してみる。
そう、昨晩からどうしても魔法のお店に行きたくなっていたのだ。
その理由は――
「アーティファクト系の錬金術にハマって、素材が無くなってしまったのです」
昨晩はルークのブレスレットを2回試したところで、素材が尽きてしまった。
それ以来、どうにも不完全燃焼で落ち着かないのだ。
「そういえば、昨晩やるって言ってましたもんね。どんな感じでしたか?」
「エミリアさんと私の分には変わったものが付きました。
でも、ルークのにはまともなものしか付かなくて……」
「アイナ様……。それは何か問題があるのですか?」
「え? せっかくだし、オンリーワンなやつを付けたくない?」
「……ということは、アイナさん!
わたしのはオンリーワンになったんですか!?」
エミリアさんが、目をキラキラさせながら聞いてくる。
「はい。思えばエミリアさんのイヤリングに変なのが付いたところから始まったんです。
というわけで、これを差し上げますね」
アイテムボックスからイヤリングを取り出して、エミリアさんの手に乗せる。
「わーい♪
……おぉ、綺麗な水色ですね!」
「ミラエルツでアクアマリンを買っていたので、それに置換してみました。
あと、こんな感じでステータスが付きましたよ」
そう言いながら、私は鑑定のウィンドウを出した。
──────────────────
【イヤリング(S+級)】
一般的な装身具
※錬金効果:エコー
※追加効果:精神力が1%増加する
──────────────────
「ふむふむ、精神力が上がるのは良いですね!
……あの、ところで『エコー』って何ですか?」
「魔法を使うと良い感じになるみたいです。
ちょっと、ヒールあたりを使ってみません?」
「えーっと、それじゃちょっと付けさせて頂いて……。
えへへ、どうですか?」
「アクアマリンの淡い感じの色合いが良いですね!
やっぱりサファイアは、青色が強かったかな?」
「そうですよね!
……さて、それじゃいきますね。ヒールっ!!」
ブワッ!!
「おぉ!?」
エミリアさんがヒールを使うと、今までに見てきた以上の強い輝きがその場を包み込んだ。
今は誰も怪我をしていないから分からないけど、見るからにすごく回復しそうな気がする。
「な、何だかいつもよりすごい力が出た感じだったんですけど――
……でもちょっと出すぎというか、力が抜けるというか……?」
「やっぱりそんな感じなんですね。ちなみにエコーの効果はこうです」
──────────────────
【エコー】
魔法使用時、その効果と消費が2倍になる
──────────────────
「おぉ……これはまた……」
「偶然付いたんですけど、この効果ってどうなんでしょう」
「わたしも初めて見ました! これってすごいんじゃないですか?
疲れやすくなるのは調整しなきゃいけないと思いますけど……。
でも、どちらかといえば魔法使い用の気がしますね」
「うーん。エミリアさんは攻撃魔法も使うし、ちょうど良くないかなぁ……。
それはそれとして、エミリアさんのプレゼント用に買って作ったものなので、エミリアさんが使ってくれると嬉しいです」
「うぅ……、それではありがたく!
一生大切にします! ああ、でも失くすのが怖いですね……」
「そうですね、イヤリングって失くしやすいですし……」
「むむむ、これはあれですね。装飾魔法を覚えないと!」
「え? 何ですかそれ?」
「少しマイナーなのですが、装飾に関する魔法があるんです。
これを使うと、イヤリングを落としにくくなるんですよ」
「そんな魔法があるんですか……?」
「簡単に言うと、イヤリングみたいな小物にマナを分け与えて、自分の身体と離れにくくする……みたいな感じですね。
それ以外にもアイテムボックスと組み合わせて、一瞬でお着替えができるようになったりします」
「それ、良いですね!」
話を聞く限り、魔法少女や変身ヒーローみたいな感じで着替えができるんだよね?
すごく面白そう!
「アイナさんはアイテムボックスをお持ちですからね……。
わたしは持ってないから、とってもうらやましいです」
「そういえばアイテムボックス……収納スキルって、覚えられないものなんですか?」
「うーん、割と人を選ぶスキルなんですよね。
努力を続ければ、大体の人は覚えられるっていう話なんですけど……」
「ふむー、なるほど?」
私は最初からレベル99だから、ちょっとその辺りの苦労は分からないかな……。申し訳ない。
「ところでアイナ様のアクセサリは、指輪……でしたっけ?
それにはどんな効果が付いたんですか?」
「うん、魔法が付いたよ。えぇっと、かんてーっ」
指に嵌めていた指輪に、鑑定スキルを使ってウィンドウを出す。
──────────────────
【リング(S+級)】
一般的な装身具
※錬金効果:風魔法『クローズ・スタン』使用可
※追加効果:ダメージを1%増加する
──────────────────
「どやっ!」
「おお、クローズ・スタンですか!」
「あれ、ルークは知ってるの?」
ルークは魔法はさっぱりだから、知ってること自体に驚きだ。
「はい、これは敵を無力化するにはうってつけの魔法なんです。
同僚にも使える人がいましたので、これは知っていますね」
「なるほど、やっぱりそういう使い方になるよね。
護身用にも良いと思ったんだけど、どうかな」
「とても良いと思います。
アイナ様の身は私が守りますが、いざというときの保険になりますので」
「まぁ密接しないと使えないみたいだから、魔物討伐には向かないけどね。
いや、そういうところがむしろ私らしいのか……」
未だに魔物討伐では、無力のままだ。
どこまで続くのだろう、この無力の道は。
「まぁまぁ、アイナさん。戦闘なんてわたしたちにお任せください!」
「むぅ、そうですね。エミリアさんもパワーアップしましたもんね」
案外、高い威力を誇るシルバー・ブレッド。
これの攻撃力が2倍になるのであれば、戦闘ではエミリアさんがさらに活躍することになるだろう。
「……となると、やっぱりルークさんのもパワーアップさせたくなりますよね!
アイナさんがハマった理由、とっても分かりました!」
「どんな効果が付くのかは分からないので、それっぽいものが出たら終わるつもりなんですけどね。
そんなわけで、素材が無くなってしまったのです」
……まるで、スマホアプリの課金石のように綺麗さっぱりと。
早々に補充して、錬金ガチャを再開しなければ!
「それではのちほど、外に出たらお店を探してみましょう。
私とアイナ様はこの街は初めてなのですが、エミリアさんはそういったお店をご存知ないですか?」
「すいません、わたしもメルタテオスは詳しくなくて」
「みんな、メルタテオス初心者みたいな感じですね。
ひとまず今日は予定も無いことですし、観光がてら探してみましょうか」
「そうですね!」
「そうしましょう」
……というわけで、今日は魔法のお店探しと観光をすることになった。
魔法のお店、すぐに見つかると良いなー。