テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
最初の拠点から出立後、
数十分馬を走らせた時だった。
ーパシュンッ
「煙弾!黒だ!! 奇行種か!?」
そして数分後。
ドシン ドシン ドシン…
「12m級!こっちに向かってくるぞ!
くそっ!索敵班取りこぼしたか! 」
足音のする方に視線を向ける。
…こちらに向かって走ってくる
知性のかけらも感じられない巨体 。
「ヒッ…!!」
あれが巨人…
心臓がバクバクと音を立てる。
体が動かない。
どうしよう。
こわいこわいこわい
その時。
グラッ
えっ嘘でしょ…
ドサッ!!
バランスを崩し落馬する。
巨人はすぐそばまで来ている。
あぁ、死ぬ。
すると先を走っていた班長が
きびすを返した。
「◯◯!立て!今すぐ馬に乗れ!!」
「は、はい!!」
そして班員に指示を出す。
「俺がこいつを引きつける!
お前はうなじを狙え!
これ以上新兵の方に
こいつを行かせるな!!」
間一髪のところで
班長たちが巨人を引きつけてくれ、
逃げることができた。
班長たちがいなかったら死んでた…
お礼を言おうと振り返る。
「…え?」
班長が…巨人に掴まれてる。
そして…
──バキッ
一瞬だった。
さらに…
「いやぁぁああ!!!」
今掴まれているのは
出立前、きっと生き残れると
気合いを入れてくれた同期だ。
なぜ?
なぜ私は何もせず
ただ黙って見てる?
──そこから先は
あまり覚えていない。
気づいたら今朝出立した
カラネス区に戻っていた。
本部に戻る道中で
話をする者は誰もいなかった。
馬をつなぎ、誰もいなくなった馬房で
#夢小説
さらん
3,884
さたん📖🕊️
22
#不定期更新
しゃがみ込んでいた。
「…なんてツラだ。」
ふと顔を上げると
彼は立っていた。
「へい、ちょう…」
「私、何もできませんでした。
兵長に教わったこと何も…」
「当然だ。てめぇはまだ弱い。
初陣で新兵ができることなんざ、
せいぜい生きて帰ってくる程度だ。」
「私は班長がいなかったら死んでました。
あの時、私が馬から落ちたりしなければ…」
…そう、私は班長に守られたから
生きてるだけだ。
そんな自分が、新兵としての仕事を
全うしたと言えるわけがない。
「◯◯、 」
唐突に名前を呼ばれ、
思わず顔を上げた。
兵長は表情を変えずに、
私を見据えたまま口を開く。
「生きてることを恥じるな。
助けてもらったことを恥じるな。
あいつらに守ってもらった命を誇れ。
それがあいつらの、生きた証だ。」
「兵長…」
私の目から涙が溢れる前に、
兵長は馬房を後にした。
…名前、初めて呼ばれたな。
ずるいなほんと、あの人。
立ち上がると、さっきよりも少しだけ
体が軽くなった気がした。
コメント
1件
読了しました。第13話、すごく重くて、でも温かい話でした。 初陣で巨人と遭遇し、班長や同期を失うという絶望的な場面。馬から落ちる自分の弱さに打ちのめされる主人公の心理描写が丁寧で、胸が締め付けられました。 そんな中、兵長が「生きてることを恥じるな」「守ってもらった命を誇れ」と言葉をかけるシーン、本当に救いでした。あの台詞、ずるいですね。最後に名前を呼んで去っていくという演出もグッときました。 戦場の過酷さと、それでも前に進むために必要な言葉が、静かに心に響く回でした。続き、楽しみにしています。