「入りなさい」
低い声が響き、重厚な扉が開かれた。
広々とした会長室。大きな窓から差し込む光に背を受けて、桜坂泰三がデスクに腰掛けていた。
その鋭い眼差しが、入ってきた二人を真っ直ぐ射抜く。
「……来たか、華」
華は喉が乾くのを感じながら、律と並んで一歩踏み出した。
「お父様……」
泰三の視線が律へと移る。
「藤井くんまで連れてくるとはな。……まさか、二人で私に意見するつもりか?」
重々しい言葉に、室内の空気が一気に張り詰める。
律はわずかに背筋を伸ばし、はっきりとした声で答えた。
「はい。そのつもりで参りました」
泰三の眉がわずかに動く。
「……ほう」
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