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「それでは、いいですか」と山田先生。

美緒は続けた。

「武家時代が終わったとき、『四民平等』となりました。元お侍さんも町人も一緒に汗水たらしたことで、江戸は東京に生まれ変わり、今日の繁栄が育まれました。

アタシは、提案します。『二民平等』を。大人と子供の共存共栄、新しいボーダレスの時代を生きる町づくりを、この東京の南の一角、江東区から世界へ」

美緒の棒読みと不釣合いに大きな言葉がちぐはぐだ。

「二民平等、ってのがいいね。いいキャッチだ」と老紳士が言った「誰の原稿ですか」

校長先生は、副校長に君かと尋ねた。いえ、と副校長。

「あ、お恥ずかしいながら私です」と中年の男が答えた。

「なかなかいいフレーズ使うじゃないかぁ。でも、『ボーダレス』はいただけないな。今時、使い古されてるんじゃないかね。今のはやり言葉なら……『レス』」と老人。

「『レス』?」

校長と副校長が顔を見合わせる。

「それも、じき古くなるとしたら……『ス』か」

「『ス』??」

「これも、どの層を取り込むかによりますよね」と中年。

「一応、党とも意見を摺り合わせておいてくれ」と老人。

「かしこまりました」中年は指先まで伸ばして答える。

「ところで、議員」

校長先生が、老紳士の耳を借りた。しかし、校長の声の大きさでは教室中に聴こえている。

「ちょっと小耳に挟んだことなんですが。なんでも、『子供』が差別用語にあたるとか」

「ああ、その件ですか」老紳士は首を軽く上下し、それから中年に言った「ちょっと君、先生に説明してさしあげてくれ」

「校長。あの、あれですよね、『子供』ってのがコレで」中年は胸の前で人差し指どうしをクロスさせた「『開発途上人』にってことですよね?」

「それも、そのうちまずくなるんじゃないかな」と老人。

「一考の余地はあり得そうです」中年は足元の鞄から書類を引っ張り出し、何枚かページをめくる。

「そうすると、そ・う・で・す・ねぇ……『ハノズダイ、ハッセーメー』ですかね」

「あの、失礼ですが」と副校長「その、あの。はの。何ですか、それ」

校長は弱々しい声で、副校長、生徒の前で恥ずかしいですぞと言う。副校長は、すみません、私の勉強不足ですと、生徒にではなく校長に頭を下げた。

中年は続ける。

「まだ人によっては聴き慣れない言葉かもしれませんが、最近の辞書には出てるものもあります。『一般に背丈が濃縮され、頭部が体長に比して大きめの、学習を旨とする日々を暮らす、法によって平等な権利を付与された、霊長類ヒト科に属する発展途上にある自由な生命体』の略です。漢字でこう書きます」

中年は「背濃頭大発生命(ハノズダイハッセーメー)」と書かれた藁半紙を掲げて見せるが、その小さな字が読めるのは健太の席からくらいのもので、それもこの中年がたまたま健太の方にこの紙を向けたからだった。

副校長は見もせずに、わかりました、結構です、と頭上に手をかざす。

「で結局、どちらにしたらいいんでしょう」と校長。

「そこはですね、実はまだ、党でも意見が分かれてるんですね。まあ、今回の選挙ではまだ『子供』で大丈夫だろう、というのが大方の意見です。一部の人がいろいろ言い出してるのは、私も知ってます」と、中年の男は言った。

「でも、一応無難にいったほうが」と校長。

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