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りん👾💛
桃 × 赤
「ねえ、起きてる?」
スマホ越しの小さな声。
午前二時。
桃は天井を見つめたまま 、
少しだけ笑った。
「起きてるよ。
どうしたの 、こんな時間に」
「…なんかさ 、急に不安になって」
「またそれ?」
「うん。またそれ」
受話口の向こうで 、
桃は小さく笑う。
でもその笑いは 、すぐに途切れた。
「ねえ 、私がいなくなったらさ 、
ちゃんとご飯食べる? 」
「いなくならないでよ 、まず」
「もしもの話」
「そういうの嫌いって言ってるじゃん」
「でもさ 、約束して」
少し間が空く。
いつもなら軽口で返すのに 、
その日はなぜか言葉が重かった。
「……食べるよ 。ちゃんと」
「嘘だ ~ 笑」
「なんでだよ」
「絶対コンビニばっかになる」
「いや 、それは今もそうだし」
「ほら」
桃はくすっと笑う。
その声に 、赤は少しだけ安心する。
「じゃあさ 、
逆に聞くけど」
「なに?」
「俺がいなくなったら 、どうする?」
「え」
「ちゃんと寝る?夜更かしやめる?」
「……やめる」
「嘘だ」
「うるさいな」
今度は、ちゃんとした笑い声だった。
「ねえ」
「ん?」
「会いたいな」
「今から?」
「桃も無理なのは分かってる」
「明日会えるじゃん」
「明日じゃ、遅い気がして」
「なにそれ」
桃は寝返りを打って 、
カーテンの隙間から夜の街を見た。
静かで 、何も起きていないみたいな
夜だった。
「ねえ」
「ん?」
「大好きだよ」
「……急にどうした」
「言いたくなっただけ」
「俺も好きだよ」
「“も”って何」
「え 、だめ?」
「だめじゃないけど」
少し沈黙。
でも、その沈黙は嫌なものじゃなかった。
「ねえ、電話切ったらさ」
「うん」
「ちゃんと寝てね」
「そっちこそ」
「約束ね」
「約束」
そのあと 、
少しだけどうでもいい話をして 、
電話を切った。
——それが、最後の会話になるなんて 、
思わなかった。
*
「昨日 、電話してたんだって?」
病室で、桃の母親が静かに言った。
「はい…」
「ありがとうね」
「いえ…」
白いシーツの上で 、
彼女は眠っているみたいに静かだった。
でも 、もう二度と
目を覚まさないことを 、俺は知っている 。
「ねえ」
返事はないと分かっていても 、
声をかける 。
「ちゃんとご飯v、食べてるよ」
嘘。
大きい嘘だ。
何も喉を通らない。
「夜更かしも 、してない」
それも嘘だ。
眠れない夜ばかりだ。
「約束 、守ってるからさ」
涙が落ちて 、
シーツに小さな染みを作る。
「そっちも守れよ」
返事は 、やっぱりない。
でも 、あの夜の声が 、
何度も頭の中で繰り返される。
『大好きだよ』
「……俺も 、大好きだよ」
今さら言っても 、届かないのに。
それでも、何度でも言う。
届かないって分かっていても。
それでも——言わずにはいられない。
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