コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
突然の事で思考が追い付かないムームーだったが、状況がそれを許してはくれない。
「させっかよおぉぉぉ!!」
争っている集団の片方の男が、いきなりムームーに襲い掛かる。
しかし、横から放たれた光が命中。それを予測していたのか、小さな光の壁を展開し、光を防ぐ。だが、衝撃は防げないのか、そのまま吹き飛ばされた。
「ちょっと貴女。もう戦いは始まっていますよ。しっかりしてください」
「だから──」
何の事?と問おうとするも、さらなる攻撃がムームーを襲う。
察知したムームーは慌てて回避。その時、急接近して手を伸ばしてきた男と目が合った。男はリーゼントを揺らしながら、その瞳の奥に憎悪の色を込めて、睨みつける。
「……チッ」(今のを避けやがったか)
(ああもうコイツらっ)
対するムームーもその目に怒りが宿る。そしてバックステップをしながら右手を縦に一閃した。
「?」
「なにを……──」
その行動の意味が分からず、リーゼント男とツインテール少女が眉をひそめた。次の瞬間、リーゼントが輪切りになって地面に落ちた。
『!?』
「話が全く理解できないんだけど?」
今は手の内を明かさない方が良いと判断したムームーは、大きく動いて自分に注目を集めたまま、硬くした糸を一瞬で回収。
こうすれば、目の前の人物が糸を操るという前提情報が無い限り、そうそうバレる事は無い。その証拠に、リーゼントを切られた男は大きく下がり、目を見開いて汗を流しながら、光の壁を展開して睨みつけている。
(なんだ今のは……オレは何をされた? 朝に2刻かけてセットしたリーゼントが、こうもアッサリと……)
男が警戒で身動きが取れなくなった一方で、ムームーに声をかけた少女は唖然としている。
「貴女、一体……」
「通りすがりの観光客です。一体これは何ですか」
ムームーは再度質問した。ツインテール少女は慌てて応える。敵軍と出会い、この場で戦闘開始した事を正直に話しながら、思考を巡らせていく。
「あ、ごめんなさい。状況を説明します。実は先程──」(観光客と言ったけど、今の実力を見る限りそんな筈は無い。慌てる余り見逃していたけど、見た事のない武装だわ。それに、援軍のリーダーは私と同じくツインテールにしていると、打ち合わせで決めていた)
ムームーの髪型はツインテールである。だからこそ、少女は援軍が来たと思ったのだ。
説明を続けながら、少女はムームーの周りを見る。
(こちらもよく見たら新しい武装。こんな幼い子まで……まさか、一般人を装って捜査中? ならば納得出来る! この人達は絶対に正体を明かさない! そして私は試されてる! 舐めるなと言いたいけれど、逆にこれはあの人に戦果を知らしめるチャンス!)
少女は全く関係の無いミューゼ達を前に、勝手に盛り上がっていた。
新しい武装と思っているが、ミューゼ達4人の付けているパーツは、全てファナリアで加工されたハリボテである。ビームも出なければ空を飛ぶ事も出来ない。
そんなハリボテパーツに過度な期待を込めて、『一般人(隠蔽)』のムームーが動きやすいように、無関係という前提で言葉を選んだ。
「あの連中はこの辺りを縄張りとしていて、通るには蹴散らすしかありません。捕まえて大人しくさせるのが私達の仕事です」
「なるほど……えっと、手伝いましょうか?」
「よろしいのですか!?」(よしっ! 正解ね! こんな強い人を寄越してくれるなんて、あの人にお礼を言いに行かなきゃ!)
(前に来た時に見なかったけど、隠れてたのかなぁ? まぁ安全にした方が、アリエッタちゃんに危険もなくなるし、花屋さんも近くだし)
なんとなく利害が一致し、ムームーが手を出す事になった。
目的地が近いから、さっさと終わらせた方が良いと説明すると、ミューゼ達は納得。今も争っている連中の動きを見て、ここはムームー1人で大丈夫だろうと判断し、ミューゼとパフィはアリエッタを守る事にした。
ここまでの会話は、先程のリーゼント男に聞こえるように行っていた。その思惑通り、男はムームーの立ち位置に戸惑っている。実力的にも立場的にも、手を出したのはまずかったのではないかと、後悔さえ始めていた。
「さて、敵はどれ?」
「どうやら識別用に青いアームパーツを付けているようです。分かり難いのであれば全員に命令できますけど」
「ん-、大丈夫。間違えたらゴメン」
「あ、いえ、巻き込まれないように伝えておきますから」
勘違いのせいで、すっかり部下みたいになったツインテール少女。妙な気分になりながらも、ムームーは単身で前に出た。
「なななんだテメー! やんのかぁぁここここコラァっ!」
訳も分からずリーゼントを切られたショックで、目の前の男が怯えながら声をあげる。何しろ相手の武器が意味不明。理解出来ない敵に恐怖を抱くのは、ごく自然な事である。
そして、そこまで1人に対して警戒していては、周りから見ると隙だらけなのだ。
バシュッ
「ぅごうっ!?」
上空から頭に光を打ち込まれ、リーゼント男は倒れた。
「なんか気の毒……街中でこんな危険な戦い、さっさと止めてしまおう。終わらせる為には誤射もやむなしっ」
ムームーは両手を広げた。すると、ムームーの体に付いているパーツが4つ、体から離れ、宙に浮かんだ。その全てが三角の形をした、少し鋭い刃状となっている。
『えっ、なにそれ』
ミューゼ、パフィ、ツインテールの少女が驚いた。と、同時に、離れたパーツが一斉に飛んでいった。
どこかのアニメで見た兵器っぽいと、アリエッタは大喜びである。
「うわー! うわー!」
『!!』
アリエッタの様子を見て、ミューゼ達は驚愕し、嫉妬心を高めた。
高速で飛び交うパーツは、もちろんハリボテ。しかし、硬度がどうしても必要なので、金属を壊れやすい先端や角にコーティングしている。部位によっては完全に金属製のものもある。
例えそれ自体に何も機能は無くても、ムームーには自在に生産し操る糸がある。その糸で硬いパーツを操れば、立派な武器となるのだ。
「んなっ、かはっ」
「えっ、なに!?」
「うわああっ!」
「ひいっ!」
いきなり飛んできて、次々に武器やパーツを叩き落としていく小さな物体に、戦場は大混乱。
動きが速く、大きく回り込んで来たと思ったら、いきなり直角に曲がり、ぶつかって装着したパーツを落とされる。避けたと思っても、死角から他の物体に武装を貫かれ、ついでとばかりに叩かれる。あっという間に、数人が無力化された。
「アイツだ! 全員でかかれ! 間違いなく幹部だ!」
『うおおおお!』
敵側のリーダーと思しき男が、勘違いをしてムームーに総攻撃をかけた。
すぐさまムームーは空へと舞い上がる。もちろん離れた場所に糸を引っ掛け、自分を引っ張って移動するワイヤーアクションである。
飛ぶ相手には慣れているのか、数名が背中のパーツを光らせ、ムームーを追いかけた。こちらはバーニアによる飛行である。
「おっと」(全員エーテルガン持ちか)
「まちやがれ! 逃げんな!」
ムームーが空中に逃げた理由は、敵が持つ『エーテルガン』という武器の為。後ろにアリエッタ達がいる状態で撃たれたら、流れ弾が当たってしまうかもしれないと考えたのだ。何度かクォンに付き合ってサイロバクラムに来ている為、その辺りの事は把握済みである。
その結果、思惑通り自分を追跡し、全員が撃ってきた。
弾速はそこそこ速いが、ムームーは慌てずに対処していく。
バキッ
「ぐあっ!」
「チクショウ、速え!」
バーニアよりもムームーの攻撃の方が速い。空中では飛行方向を変え難いので、高速で飛び回るパーツの突進を、咄嗟に回避する事が出来ない。しかも、迎撃のために撃っても、パーツが速すぎて当たらない。
「うわああああ!」
殺生を目的としている訳ではないので、狙いはパーツ。しかし、空中で落としてしまうと大怪我どころでは済まない……が、ムームーに抜かりは無い。
「……なんで壁にくっついてるの?」
パーツを壊され、落ちてくる筈の者が落ちてこない。
それを見たミューゼとパフィが小声で話し合っている。
「あれって壁に縫い付けてるのかな?」
「建物ごと縛ってるんじゃないのよ?」
「針と糸があれば何でも出来るのね」
「むーむー、しゅごい」(サイキックな兵器の再現とか、最高過ぎるよ! 心の友よ!)
ムームーに妙な親近感を覚えているアリエッタは、既にムームーを心の友として認識している。
それにまたまた嫉妬するミューゼとパフィだが、自分達に向けられる視線とは違うことも分かっているので、時々いじる以上の事をする気はない。
そんな呑気な3人を見ている者がいた。
「……あぁ、上のヤツらが全員落とされる前にだ……急げ」
そんな動きがあるとも知らず、ムームーが空中にいる最後の1人をビルに縫いつけた。
これで一安心と下を見ると、ミューゼ達の周りに男達が隠れて集まり、エーテルガンを構えているのが見えた。
「パフィ! 狙われてる!」
「くそっ、撃てっ!」
リーダー格の男が慌てて命令。同時にパフィがナイフを抜き、ミューゼが杖を振り、ツインテールの少女が光の壁を展開した。
ズオッ
ガガガガッ
杖から出た蔓が周囲を囲い、みんなを守る。ツインテールの少女は突然現れた蔓に驚くも、今はエーテルガンによる攻撃でそれどころではない。パフィは反撃のタイミングを見計らいながら、光が抜けてこないか警戒中。だが、
「きゃうっ!」
様々な方向から撃たれた光のうちの1発が、運悪く死角から防御の隙間を抜け、アリエッタに命中してしまった。
『…………え?』
小さな体が、とさりと地面に倒れた。