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#儚い
nanaha.
205
今もあくあクルーの風真隊🫧
40
#ミセスグリーンアップル
鮭(JAM.S)
60
駅前の夕焼けは、あの世界の夕方によく似ていた。
オレンジ色の空。
少し涼しい風。
違うのは、人の声があることだった。
車が通る音。
誰かの笑い声。
信号機のメロディ。
世界はちゃんと動いている。
でも蒼は、その全部より先に悠真を見ていた。
三年間、ずっと隣にいた存在。
別れてまだ数日しか経っていないのに、妙に久しぶりに感じる。
悠真も同じみたいだった。
少し笑っているのに、どこか安心した顔をしている。
「……よ」
悠真が照れくさそうに手を上げる。
蒼も小さく手を上げ返した。
「おう」
そのやり取りだけで、少し笑ってしまう。
三年間も一緒にいたのに、再会の仕方が妙に普通だった。
悠真が近づいてくる。
そして。
途中でふっと立ち止まった。
「……なんかさ」
「?」
「会えるまで、ちょっと怖かった」
蒼は黙って聞く。
悠真は夕焼けを見る。
「向こうの世界、夢だったみたいになりそうで」
人がいる街。
明るい店。
車。
普通の日常。
全部が現実すぎて。
逆に、あの静かな世界が幻だった気がしてしまった。
蒼は少し笑う。
「でもいたじゃん」
「?」
「俺も、お前も」
悠真は数秒黙る。
それから小さく笑った。
「……確かに」
風が吹く。
駅前の人混みが流れていく。
でも二人の周りだけ、少し時間がゆっくりだった。
悠真が突然言う。
「確認していい?」
「何を」
次の瞬間。
悠真が軽く蒼の肩を叩く。
ぺしっ、と小さな音。
蒼は少し驚く。
「……何してんの」
悠真は笑った。
「実在確認」
蒼も吹き出す。
「意味わかんねぇ」
「だって、電話だけだと現実感なかったし」
そう言いながら。
悠真の目は少しだけ赤かった。
たぶん、安心していた。
蒼も同じだった。
そのまま二人は駅前を歩き始める。
コンビニ。
飲食店。
自転車。
全部、人がいる。
それだけでまだ少し不思議だった。
悠真がぽつりと言う。
「静かじゃないな」
「うるさいくらい」
「前なら嫌だったかも」
蒼は少し笑う。
「今は?」
悠真は周囲を見る。
歩いていく人たち。
明るい店。
夕焼け。
そして隣の蒼。
「……悪くない」
途中、自販機で缶コーヒーを買う。
三年前、夜の屋上でよく飲んでいたやつ。
悠真が缶を見ながら笑う。
「懐かし」
「まだ売ってたな」
プシュッ、と音が鳴る。
その瞬間。
三年前の夜が少しだけ蘇る。
誰もいない街。
静かな風。
二人だけの世界。
悠真が空を見る。
「なあ」
「ん?」
「俺ら、戻ってこれたんだな」
蒼も空を見上げる。
夕焼け。
ちゃんと流れる雲。
普通の世界。
「……うん」
その返事には、色んな意味が入っていた。
世界へ戻ってきたこと。
再会できたこと。
三年間を越えて、ここに立っていること。
全部。
しばらく歩いたあと。
悠真が小さく笑う。
「でもさ」
「?」
「たぶん俺、夜の世界もちょっと好きだった」
蒼も少し笑った。
「俺も」
誰もいない雪の公園。
夕焼けの学校。
雨の屋上。
静かな夜。
あの世界は終わった。
でも。
二人の中には、ずっと残り続ける気がした。
夕焼けの街を歩きながら。
二人は、やっと本当に“再会した”気がしていた。
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