テラーノベル
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[まもなく、発進いたします.まもなく、発進いたします.…]
ひんやりとした空気を機械音声の様な声が振るわせた。ゆっくり、なんども反復する音声は、やがて静寂に包まれて、消えていく。
いつも通り空いている電車内に、今日も人はいない。遠くからは、乾いた風でひび割れた愛の鐘が聞こえて来、窓からは、赤い夕陽の光が差し込み、薄く、鋭利な影が琥珀色の床に落ちる。
もう、見慣れすぎた、何気ない、いつもの光景だった。
ただ、違うことを挙げるとするならば、まだ小さい子供がうずくまって寝ているということだ。
やがて、子供の睫毛が震えた。
ゆっくりと体を起こし、冷え切った空気のなかで辺りを見渡す。
「ここ、どこ…?」
子供のつぶやきが、電車内に木霊した。
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