注意、この物語には以下の成分が含まれます
*自傷行為、流血表現
*似非関西弁
*性格等の捏造
side M
僕の頭を撫でる大きな手、僕はその手のぬくもりが大好きだ、だが今この時だけは嫌いになってしまいそうな気がした、なぜなら今その手からは血が垂れており、僕の頭を綺麗な朱に染めているから。
誠一の自傷癖を知ったのはほんの数分前で体調を崩してしまったから今日は休むと言っていた彼のことを心配して彼の家に入った時、声を殺して泣く誠一を見つけた、なんでどうしていつからと問いかけてきたのを無視して頰をひっぱたいてやろうかと迷ったが、僕のことを見て怯えている誠一の姿を見たらそんな気にはなれなかった。
「 ………何も聞かへんのか? 」
僕が色々と考えている間に、泣き止んでいたのか呼吸を落ち着かせた誠一はそう尋ねてきた。
聞きたいことなんて山ほどあるに決まっている。だがそれよりも今までずっと一緒にいた幼馴染がリストカットをしていることにすら気付けなかったことのショックが大きく声がうまく出てくれなかったのだ。いや、あの誠一だこれほどひどい状態になっていたら逆に前よりも上手く隠すだろう、だとしても幼馴染の変化にも気づけず何が名探偵だ、自分にそう問うことしかできないほど僕はある意味追い詰められていた、今まで誠一のことはすべてではないがだいたいは把握しているつもりだったし隠し事なんてされていないと思っていたのが崩れてどうしたらいいのかわからない、頭がどんどん真っ白になる感覚が僕を支配しているだけだった。
次第に僕は自分の情けなさや誠一の辛いというのを表に出さない性格への少しの怒りで涙が出てきた、それを抑えようと誠一が僕のことを撫でてきて今に至るというわけだ。
「 恵美……泣かんといてくれ………オレは大丈夫やから…。 」
何が大丈夫だ、こんなに傷だらけで、こんなのどこから見ても大丈夫ではないことなんてすぐにわかる。
「 ……バカ…何処が大丈夫なんだよ‼︎ 」
つい大声でそう言ってしまった、誠一は僕の声に驚いた後申し訳なさそうに笑った、そんな顔で笑われたりしたらこれ以上踏み込めなくなってしまう、彼は多分そんなことをわかりきった上で、もしくは無自覚でやっているのだろう。前者ならまだいいが後者は無意識な分タチが悪い。
「 今日はもう…帰ってくれ、明日にはいつも通りに振る舞ったるから。 」
違う、そんな言葉が欲しいわけじゃない。僕はただいつもみたいにこんなことがあったとか話して欲しいのに、何も答えることができないままいつの間にか僕は部屋の外に追い出されていた、赤黒い液のついた頭はとても違和感がすごく、誠一の家のシャワーを借りるわけにもいかないので上着のフードでうまく隠してなんとか家に帰った後シャワーを浴びていつも以上に丁寧に洗った、ここで雑に洗えばもし依頼か何かで司波仁と遭遇した時には髪の毛に血が付いていると指摘をされてしまうだろう。
そんなことは置いておくとしてまずどうやって誠一の話を聞き出すかだ、彼はきっと意地でも自分がこうなった原因など言わないだろう、きっと原因は外にあるのだからいっそ監禁でもしてしまおうか、なんてことを考えてしまったがそんなことをしたら誰かが気づくだろう、健三に認めさせたとしても他の友人達が電話をかけてきたりする可能性などいくらでもある、もしも誠一の性格が自分と同じようなものだったとしたら彼はきっと人望もあまりない人間だったのだろうが、誠一は明るく人当たりも良ければ笑顔も綺麗で顔も悪くはない上に長身で様々な人に好かれるような性格でスワロウテイルがまだ少し他のハウスと交流があるのは彼のおかげといっても過言ではなく僕はそんな彼のことが好きだった。だから彼のあんな姿を見てしまって後悔していないといえば嘘になる、だが彼の弱いところを見れたのは自分だけなのではないかと思うと後悔と同じ、あるいはそれ以上のなんとも言えない喜びがあった、自分はきっと傍から見たら最低なやつ何だろうがそんなことはどうでもいい、この気分のまま眠ることができたら幸せなのだろうがそれは僕の端末に入った電話によって阻止されてしまった。
side S
ついに自傷行為のことがバレてしまった、しかもよりによって幼馴染である恵美にだ、こんなことをしているだなんてあいつにだけは知られたくなかった。なにせオレは幼い頃から彼に弱いところなんて見せぬよう努力をしてきたからだだが今回の件で一気に今までの努力が水の泡になってしまったし事務所にもしばらくは入りずらい。
「 ほんまどないしよ………… 」
独り言が部屋に響く、ここが事務所だったら恵美も解決策を考えてくれたり健三も嫌味を言いつつ色々な提案をしてくれるだろうがここは事務所ではないし、第一こんなこと誰にも知られるつもりはなかったのだ。もし知られたとしても自傷についての相談なんて2人も困るだけだろうが。
◆
オレが自傷行為を始めたのは花屋に就職してだいたい五ヶ月くらい、つまりネストに入る前からやってはいたのだ。最初は同じ職場の人の自傷の跡が見えてしまい、変に言及をして傷つけたりしたら危ないということで一旦家に帰り自分も同じように腕に刃を押し当てこんなことは救いにならないときちんと証明してから声をかけるつもりだった。だからオレは自分の腕に傷をつけ、職場仲間を説得しようとした、だってその時は確かにオレにとっての救いはカミソリなどでは無かったはずなだから。だが今のオレは自傷に縋ることでしか生きていくことができないしその人も同じだったのだろう、その人には
「 あなたに分かるわけないでしょ……能天気に笑って馬鹿みたいに生きることしかできないあなたには私の気持ちなんて一生をかけても理解できないに決まってるわ。 」
と返されてしまったのをいまでも覚えている。
そこから頻度が増えていったわけでもなく花屋時代にはその時以降切ることはなかった。
だがネストに入ってから約二年が経ったころ、とある事件が起きてから大きく変わってしまった幼馴染と相変わらず嫌味を言ってくる片割れにオレの中の心のコップとでも言えばいいのだろうか、それが粉々になったように負の感情が溢れ、日に日に大きくなっていく希死念慮に抗うことができず、ネットを見てアンチの言葉がやけに刺さるようになり街に出ていろんな人の笑い声が自分を嘲笑っているように感じ何度も明るいと暗いを繰り返す自分の情緒に疲れついにはあの時のように刃を腕に押し当てて自分を傷つけるようになってしまった、今度は証明のためではなく生きるためなのだが。
よく自傷行為で勘違いをされやすい点なのだが自傷行為は死にたいからではなくむしろ生きたいからしているのだ。自傷というのはストレス発散方法の一つでありカラオケや運動などと大差ない、ただ自分に合っている発散方法が自傷だったというだけだ。死ぬ勇気がないから腕を切って満足している?そんなわけがないだろう、自殺に必要なのは勇気などではなく死にたいという大きな気持ちとそれを実行できる環境であり勇気なんて必要ないのだ。
まぁそんな話は置いておくとしよう、問題は今後どうやって恵美と関わるかだ、いっそのことネストをやめるというのも手だがそれはあまり取りたくない選択だ、自分が恵美に世界の醜さを見せてしまったからその責任として彼の願いであるネストの解体が叶うまではそばにいると決めているしやめるといったら健三からも色々言われるに違いない、恵美にもう二度とあの綺麗な絵を描けないようにしたことに関しては赦される気はないし、赦してもらえる日が来ないことはわかっているのだから。
「 嫌やなぁ……逃げ道が全くないわ。 」
こんな状態になったのは間違い無く自分のせいなので他の人のことを責めることも許されない。オレはそんな絶望と一緒に冷えた床で寝ることしかできなかった
side K
集合時間に事務所に着いてから誠一くんが体調不良で休むと連絡を入れてくるまでは天国のような幸せ空間が広がっていたのだがまどかさんはお見舞いに行くといい、一緒に行きます、と言ってももしかしたら依頼が来るかもだからその時には断ってほしいし、と留守番をさせられてしまった。だが依頼も来ていないし今日は紅茶のアドバイス役として呼ばれているわけでもない故に事務所にいるというのに一人きりで長い時間を過ごすことになって入りわけだがお見舞いにしてはかえってくるのが遅いと感じたので位置情報を確認すると表示されたのは誠一くんの住んでいるマンションではなくまどかさんの家だったため違和感を覚え、話を聞こうとまどかさんに電話をかけた。そしたら意外と早く通話が繋がり
「 誠一くんの様子はどうでした? 」
「 風邪が辛いのか結構辛そうにはしてたかな、まぁ風邪をひいていても誠一は誠一らしく僕の心配してたけどね。 」
「 そうですか……今一番心配されるべきは誠一くんだというのに。 」
「 ははっ、そうだね…誠一はちょっと心配性すぎるよ 」
「 それは違いありません。 あとまどかさん、なぜ今自宅にいるのですか? 」
「 ………健三はやっぱり見てたよね…実は事務所に帰る途中、昨日は雨だったから雨水が溜まってただろ?それが車のせいですごい跳ねて来ちゃって汚れたから体を洗ってたんだ。 」
「 そうでしたか、ではその車の運転手を処しましょう 」
「 健三落ち着いて⁇僕は怪我とかしたわけじゃないし服も替えはあるんだから、とりあえずもう少しで事務所に帰るからね 」
「 わかりました、美味しい紅茶を入れて待っていますね 」
まどかさんと誠一くんの家はある程度近い位置にあるのだから誠一くんの家のシャワーを借りたほうがいいだろう、事務所とまどかさんの家は反対方向なのだから。本人がいないというのにここで色々考えていても仕方ないのはわかっているので私は一旦紅茶の用意を始めることにした。
数分後、まどかさんのただいま〜という声が玄関からしてきたのでおかえりなさい、と返した。
まどかさんは珍しくベッドでは無くサンルームの方に移動して紅茶を飲むことにしたようでサンルームの花を眺めながら紅茶とクッキーを味わっている。
きっと誠一くんがいないのがさみしいから彼の育てた花を見ているのだろう、私がいないときはそんなこと、きっとしてくれないだろうに。そんなことを考えているとまどかさんが口を開いた
「 健三、もし誠一が僕たちに大きな隠し事をしていたとしたらどうする? 」
「 私はあまり深掘りはしようとしませんよ、お互い隠し事はしているものですから。わざわざ隠しているということはきっと誠一くんも私たちには知られたくないのでしょう。 」
「 そっか、ごめんね唐突にこんなこと聞いて 」
「 別に構いませんよ、私はまどかさんと会話ができるだけで幸せですから 」
本当は3人でいる時が一番幸せなのだがそれは秘密ということにしておく
「 まどかさん、私も聞きたいことがあるんです、さっきの通話どこまでが嘘でどこまでが本当なんですか? 」
「 …………秘密だよ、そもそも僕は嘘なんてついていないしね 。 」
「 そう…ですか。すみませんまどかさんのことを疑うような真似をして…… 」
「 大丈夫だよ、気にしないで、健三。 」
その日はただ2人で幸せな時間を過ごすだけだった
コメント
2件
偏食と秘密と焦りは続き出せたら出す予定です😚他は…🙂
この小説………pi◯ivで見たやつだ!! 全部、好きな小説だから、こっちでも見れて嬉しい! 何個か続き物がありそうですね!! 楽しみだな〜(*´ω`*)