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#追放
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火竜の辰美です。サクラさん推し!
──バグ大岩を粉砕したクレーター跡地の休憩スペースにて。
現在、私たちは絶賛パワーアップ作戦(?)の真っ最中です。
岩陰から外のクレーター中心部を見やると──
空中で延々と回転し続けているツバキさん。
しかも全方位にビームを垂れ流している。
「わあああ!! 世界の理がッ! 逆巻く混沌がッ! 我が左目よ目覚めよぉぉぉ!!」
ドガーン! バチバチッ!
吹っ切れた?ツバキさんが空中で高速回転しながらビームを乱射。
あのセラフィム状態になってから、もう3時間近く。
「……RPM(回転数)がまた上がってますね……」
「嗚呼……ツバキ様……天使様……」
私とローザさんが、暴走するツバキさんを見上げたその時──
「んほぉおお!!
回転数が! 音速を超えたッ!!
宇宙が見えるぞおおお!!」
ズバァァァン!!
破裂音と共にソニックブームが発生し、
奈落の底が「ゴゴゴッ!」と激しく揺れた。
「……そもそも、なんで空飛んで回転してビーム放射し続けてるの?」
元凶であるカエデさんが、不思議そうに首を傾げました。
《天の声 : 作者の愛だ》
「なんか聞こえた! なるほど!」
エストちゃんは謎の納得を見せた。
「ツバキ様……尊すぎます……」
ローザさんは祈りのポーズ。
「納得しないで止めないと!!」
心配してるの私だけ!?
*さらに1時間後
「さあ、我が魂を貫けホーリービーーーム!!
次元を裂くううう!! 宇宙の扉よ開けえええ!!」
ツバキさんの周囲には、空間の歪みから生じたホログラムのような魔法陣の文字。
【回転数:INFINITY】
【絶叫時間:04:07:33】
【聖女魔力暴走:危険域突入】
【創世事象カウントダウン:02:59……02:58……】
「あ、そろそろツバキお姉ちゃんが宇宙創造しそう」
エストちゃんが見上げながら言った。
「ビッグバン!?」
私は思わず叫ぶ。
「宇宙かぁ、凄すぎてわからないやー
……ウィルソン(石)、ぶつけてみる?」
カエデさんがのんびりとお茶をすすり、危険な提案をした。
「友達じゃないの!?」
「サクラお姉ちゃんなら辰夫を投げてるよね」
エストちゃんの恐ろしい推理に、私は言葉を失う。
「……じゃあ、また奥の手を使うね」
一同の視線がカエデさんに集中。
“どうせろくでもない”と全員が同時に確信した。
新生魔王軍、見事に一枚岩。
カエデさんは空のツバキさんへ向かって叫ぶ。
「ツバキーッ! ずっと聞きたかったことがあるのー!」
「我が封印せし邪眼が宇宙を……
って、嫌な予感しかない!?」
空中のツバキさんがビクッと反応した。
「中学の卒業アルバムの撮影の日に──左目に包帯巻いてきたのなんでー!?」
ツバキさんが一瞬止まる──。
「……!? その話しないでぇええ!?」
……ツバキさんの回転が、明らかに乱れた。
「嗚呼……ツバキ様……またしてもカエデ様の試練が……」
目を輝かせるローザさん。
「でさ──」
無邪気に続けるカエデさんが楽しそうだ。
「もうやめ──!?」
ふらつくようにツバキさんの軌道が揺れた。
「成人式の前の日、その卒アルを庭で燃やしてたよね?
一ページずつ『私の青春、安らかに眠れ……』って呟きながら!」
「いやぁあああ!?」
「あとさ──」
一拍の間を置いて、カエデさんが首を傾げる。
「やめてお願──」
ツバキさんの悲鳴を無視して、カエデさんがさらに畳みかける。
「成人式の日!
ツバキは会場に【漆黒のロングローブ、背中に謎の黒い羽、そして巨大な漆黒のサングラス】っていう、“世界を滅ぼす魔王降臨”スタイルで来てさー?」
「……ぐはぁ!?」
「式場の警備員さんに『あの、こちらは……城じゃなくて式場ですよ?』って真顔で言われたじゃん!」
「やめろぉぉぉ!!」
「で、サクラが『この人は私の友達で、こういう種族なんです』って助けてくれて、警備員さんが『今日から大人なんだからな?』って中に入れてくれたよねー!」
「種族は人だしぃいい!!」
「警備員さんの言う通り……あれから変われた?」
「……」
──奈落の底にツバキさんの回転音が静かに響く。
「夜のニュースの成人式特集で、その時のツバキが全国デビューしてさ! 【#魔王さん(20歳) 】がトレンドになって、成人式ヤンキーより強いヤツが居たってSNSがざわついたよねー!」
[挿絵:成人式に異界より君臨した魔王さん(20歳)]
「カエデ?カエデぇええ!?」
「私、ツバキと友達で、本当に良かったと思ってる! これからも友達でいてよね?」
カエデさんが満面の笑みでトドメを刺すと──。
ツバキさんの回転が、ピタリと止まった。
空中で静止するツバキさん。
なんで飛べるのかはもうツッコまない。
「…………」
みんなが空中のツバキさんを見上げる。
──誰かがゴクリと唾を飲み込む音だけが響く。
「動かない? 心を殺された?」
エストちゃんが無邪気に首を傾ける。
「世界は守られた……?」
私が安堵の息を漏らすと、
「ツバキ様……どうか安らかに……」
ローザさんが胸の前で静かに祈る。
「ふぅ。止まった?
ツバキー? 降りてきてご飯食べようよー?」
カエデさんが呑気に手を振った。
「…………トモダチ」
ツバキさんが、うわ言のように呟く。
──カチッ。
ツバキさんの中で、何かのスイッチが入る音がした。
そして、ツバキさんの体が──
今度は猛烈な勢いで【縦回転】を始めた!
「あああああーッ!!」
⤵︎ぐるん。⤴︎
⤴︎ぐるん。⤵︎
⤵︎ぐるん。⤴︎
⤴︎ぐるん。⤵︎
──ツバキさんが、裏返る。
チュンッ!
放たれたビームが地面をえぐる。
チュンッ!
巨大な岩が真ん中からスパッと切れ──
ズズ……と音を立てて倒れた。
「わぁ! すごいよツバキ! 私もやる!」
カエデさんがなぜか前転しながらはしゃぎ回る。
(※カオス再び)
「縦……っ!? 尊い……!
まさに天地を統べる聖女様の御技!」
ローザさんが感極まってひざまずく。
「カエデお姉ちゃん、事態を悪化させてて笑う」
エストちゃんが楽しそうに笑っている。
「地面すれすれ! 危険すぎる!」
私は慌てて炎の壁を作り、飛んでくるビームを防ぐ。
「天地がぐるんぐるんするぅ!」
このままじゃ、ツバキさんが自分を焼き尽くしちゃう!
(※地面に顔面を強打して、とても痛い思いをするという意味)
そしたら──サクラさんを探しにいけない!
《天の声 : バカはほっといて探しに行けよ》
なんとかしないと!
その時──私の胸の奥で、サクラさんの声が蘇った。
『仕事も人生も、ノリと勢いで突っ込んだやつが、あとで“あれ正解だったわ”って世界にするんだよ』
──ん?
意味がわからない。でも、それがサクラさんだ。
(正解じゃなくてもいい)
(突っ込んだあとで、正解にすればいい)
ノリでもいい。勢いでもいい。
ここで動かない理由が無い。
──行こう!
「サクラさん……私はッ!!
この暴走を止めて、サクラさんを探しに行く!!」
私が叫んだその時、胸の奥で何かが弾けた。
「……あとでいい──あとで全部、“正解だった”って言ってやる!!」
「……あれ? 辰美さん、目が怖い……」
カエデさんが少し怯えたように言った。
「これは……進化の予兆……?」
ローザさんが聖典を握りしめて息を呑む。
「モンスター図鑑的には、次のページに行く瞬間だね」
エストちゃんが興味津々で私を見つめる。
足元の石畳が、じわじわと赤く光り始める。
ゴウ……ゴウ……。
足元から炎が駆け上がる。
皮膚に紅蓮の鱗模様が浮かび上がり、
背中から炎の巨大な竜翼が大きく広がる。
「サクラさんのように生きるッ!!」
「ゴォォォオオオッ! ヴァァァアアアッ!!」
私の咆哮は炎の唸りを伴い、奈落の底を軋ませた。
【辰美がアークドラゴン〈紅蓮神竜〉に進化しました。】
そして──私の咆哮に応えるように、縦回転するツバキさんの周囲を赤い光が渦を巻く。
炎と風が絡み合い、回転する光の輪が形を成し、輝きを増しながらツバキさんを包み込む。
「……体が勝手に回ってるのに、この熱が心地いい……これは何?」
ツバキさんが空中で呟く。
私の炎とツバキさんの光が絡み合った。
炎を光が追いかけて、追い越して、また追いかける。
それはまるで──輪唱(カノン)。
無限の魔力を炎が引き上げ、
その炎を光がさらに押し上げる。
(なんだか特別な感じがする……)
(これ……制御できる)
ツバキさんの無限大の魔力を炎が束ね、導いている。
あぁ──これなら、すべてを撃ち抜ける!
(これは私がサクラさんのために掴んだ、新しい力だ!)
私はキッと、ツバキさんと向き合う。
(呼気が重なり、鼓動が揃う――)
「……これって」
「……うん」
『『これは《共鳴》!』』
私とツバキさんの声が重なる。
「ツバキさん! 止まれぇッ!」
「ふんぬぅううううう!!」
無限に増幅する力を炎で包み込み、聖女の力を安定させた。
ツバキさんの体がゆっくりと失速し──
最後は私の両腕の中に、温かく落ちてくる。
「……辰美……大丈夫。もう止まった」
その瞬間、ツバキさんの瞳に、神々しい金色の光が宿る。
──聖女の覚醒。
もう、暴走じゃない。
私の炎に包まれた、穏やかな覚醒。
「辰美……ありがとう」
「うん、一緒に戦おう」
私は微笑んで頷きました。
空中の魔法陣のカウントダウン表示が『00:00』で停止した。
【SYSTEM:創世事象=回避/聖女覚醒=安定】
──表示は一瞬の残像を残し、スッと溶けて消えた。
「ツバキ様、これは……故郷キューシューに古くから伝わる言い伝え『紅蓮の神竜の咆哮とともに聖女が降臨する』です」
ローザさんが感動で震えた声を漏らす。
私とツバキさんは顔を見合わせた。
「“卒業の光に包まれし邪眼、今や聖女の瞳として世界を見守りたまう”──聖典の記録に残します」
「ほら、卒アルを燃やした甲斐あったじゃん。立派な聖女になったよ」
「ローザは記録するな! カエデは黙れ!!」
ツバキさんが二人に鋭くツッコんだ。
そうか──
私たちの出会いも、この力の共鳴も、きっと偶然じゃない。
「カエデ……あとで話があるからな」
ツバキさんが青筋を立てて低い声で凄むと、
「うん! なに?」
カエデさんは、きょとんとしていた。
「あれ? 私たち……魔神族が来たわけじゃないのにピンチだったの?」
エストちゃんが今更ながら驚いたように目を丸くした。
*
……ここから遥か下の方に、サクラさんの気配を感じる。
力が解放されたから?
……うん。あれは絶対にサクラさんだ。
「絶対に見つけ出す。たとえこの命を燃やし尽くしても」
私は静かに拳を握った。
奈落の底に、温かい風が頬を撫でた。
*
……ちなみにその後、ツバキさんはカエデさんを正座させて説教してた。
「私たち、ズッ友だよ? ……だから全部覚えてるし、忘れないよ?」
「……忘れてぇ!」
(つづく)
《天の声 : ローザの言ってたキューシューの伝承は #008 を参照》
◇◇◇
──【今週のサクラ語録】──
『仕事も人生も、ノリと勢いで突っ込んだやつが、あとで“あれ正解だったわ”って世界にするんだよ』
解説:
正解を見つけてから動くのではなく、
動いたあとで正解にしてしまうという逆転発想。
ノリと勢いは一見無責任だが、
「行動した者だけが結果を上書きできる」という現実は確かにある。
つまりこの言葉は、「迷うくらいなら動け。世界はあとからついてくる」というサクラ流の強引な前進理論である。