「高地、今日は行ける?」
いつも来る部屋、いつもの優吾のベッド。
ジェシーが声を掛けると、「うん。なんか今日はね、いい感じ」
「良かった!」
2人で部屋を出て、朝ごはんを食べに食堂へ。
「今日のお粥さんはなにかなぁ」
「お前毎朝それ言ってるよな」
「だって楽しみなんだもん。樹と北斗いるかな」
「どうだろう」
今朝のメニューは、フルーツ粥だ。1口サイズの果物が、宝石みたいに散りばめられている。たまにこういう珍しいものも出てくる。
少し離れたところに、2人がときどき見かける男性と話している樹を見つけた。
「あ、樹だ」
「ほんとだ。あれは……京本さんだっけ」
「たぶんそういう名前だった」
会話してるから呼びかけるのはやめておこう、となった。
「うん、うまい」
「美味しいね」
目を見合わせ、にこりと笑う。
すると、「あの…」
控えめな声が前方から聞こえる。2人が顔を上げると、
「お水ってどこにありますか?」
トレイを持った男性が聞いてきた。
「あ、奥のほうのテーブルに置いてありますよ」
ジェシーが答え、立ち上がって案内する。
「すみません、昨日来たばかりで……」
水を取りに行った2人が戻ってくる。
「良かったらお隣どうぞ」
優吾が空いた席を勧める。
「いいんですか?」
嬉しそうに言い、優吾の隣に座った。
「俺、ジェシーっていうんだ。カタカナで。こっちが高地優吾。高地って呼んでて」
「ジェシーくんに、高地くん。俺は、森本慎太郎です」
まるで子どもみたいなあどけない笑顔で言う。
「じゃあ慎太郎!」
旧知の仲かのように、いきなり距離を縮めるジェシー。彼もまんざらでもない表情だ。
「俺もジェシーって呼んでいいかな?」
「もちろん! こいつは苗字でオッケー」
「こいつって言うなよ笑」
慎太郎は2人と一緒にニコニコと笑った。
ジェシーが建物の中を見て回ろうというので、3人で歩き出す。
「ここが樹の部屋。田中樹っていって、俺の最近できた友達。隣は松村北斗っていうの。北斗も新しい友達。2人一緒の日に来たらしいよ」
「へえ」
慎太郎は興味がありそうな目で、ネームプレートを見る。
「でこっちが俺の部屋」
少し行ったところで、優吾が言う。「ジェシーはあそこ」
1つづつ指をさしていく。
「じゃあ俺の部屋はみんなより奥だね」
慎太郎は、もう少し歩いたところで立ち止まった。
「うん、ここだ。もう覚えた」
振り返って笑う。
「じゃあまたね」
ジェシーと優吾も笑顔で、ドアの向こうに消える彼を見送った。
「…なんか弟みたい」
「そうだね」
初対面の人にそう感じるのも、「家」のような施設の効果だろうか。
続く
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