もう無理に触れたりしないって
決めたはずだった。
さっきまで、泣きじゃくる元貴を
無理やり追い詰めて、その小さな心も、
身体も、俺のものだと刻みつけていた。
あの日からずっと、元貴の不安や拗ねた心を、
ちゃんと溶かしたくて、
それでも言葉もキスも止まらなかった。
でも今――
腕の中に、熱と安心が溶けていくのを感じる。
元貴が、俺の胸に顔を埋めて、
小さな手でシャツの生地を必死に握りしめる。
背中に流れる手の感触、
抱きしめるたびに伝わる体温。
やっと、俺のことを恐がらず、
頼ってくれているのが分かる。
元貴『……若井…』
掠れた声と、涙交じりの可愛い泣き声。
そのたびに、胸の奥がぎゅっと苦しくなる。
滉斗『もう大丈夫だから、元貴…
心配かけてごめん、…ごめんな、』
目線を合わせると、
潤んだ目でじっと見上げてくる。
服をぐいっと掴んだまま、
今にも泣き崩れそうな顔――
堪らなく可愛かった。
滉斗『怖くないよ、ちゃんと傍にいるから』
元貴は小さく首を振り、
さらに俺にしがみついた。
細い腕で、俺を離さないように、
懸命にぎゅっと抱きついてくる。
どこか壊れそうなほど、細く、柔らかな感触。
溶けてしまいそうな体温。
頼られていることが、
どうしようもなく嬉しかった。
元貴がまた、甘えるように胸に顔を沈め、
『ひっく……』と可愛い声を漏らす。
泣き声がこんなにも胸を焦がすものだなんて、
知らなかった。
滉斗『元貴、苦しい、?大丈夫、?』
元貴『ううん……苦しくない…』
精一杯掴んでくれてる手は、
時折小さく震えてる。
それでも決して離さない。
涙で濡れた頬越しに、熱い息が伝わってくる。
柔らかな体を抱え直すと、
元貴はさらに服を強く掴み、
元貴『……若井……やだ…』
掠れ声は、どこか甘えているようでもあった。
もう、限界だった。
この子に求められる喜びも、愛しさも、
優しさだけじゃ抑えきれない衝動も―
―全部まとめて飲み込まれそうになる。
滉斗『元貴……』
名前を呼ぶ声が、少し低くなってしまった。
止められなかった。
俺の手が、自然と元貴の太ももに触れていた。
布越しの柔らかい感触。
繊細な体温を確かめるみたいになぞると、
元貴が『……あ……っ』と小さく息を零した。
その声が、思った以上に甘く、
切なく空気を震わせる。
びく、と太ももが震え、俺の手をぎゅっと挟む。
元貴『や……若井……、?//』
恥ずかしそうに揺れる瞳と、
耳まで染まった赤さ。
まるで拒絶でも、完全な拒否じゃなくて――
ただ俺だけに見せる、特別な顔だ。
可愛い。
壊してしまいたいくらい、愛しい。
けれど、これ以上は――と、
かすかに理性が囁く。
でもその小さな声は、
もう、どこか遠くで霞んでいる。
俺の指は、そのまま太ももの柔らかいラインを、
そっと滑らせてしまう。