テラーノベル
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■読まれる前の注意書き
・本作は「カントリーヒューマンズ(CountryHumans)」の二次創作(ファンフィクション)です。
・実際の歴史、国家、政治団体、宗教、および実在の人物とは一切関係ありません。
・かつて対立していた国々が、現代風の平和な世界線でひとつ屋根の下、あるいはご近所さんとして仲良く「ほのぼのとした日常」を送っているパラレルワールドを舞台にしています。
・キャラクターの口調や性格に独自の解釈(マイルド化)が含まれます。
・以上の点をご理解いただける方のみ、お進みください。
■第10話
題名:鉄血の風邪引きと、過保護な看病同盟
ジャンル:日常・看病ほのぼの
それは、秋から冬へと季節が移り変わる、肌寒い朝のことだった。
いつもなら誰よりも早く起きてリビングの椅子に端然と腰掛け、洋書を読んでいるはずのナチの姿がなかった。不審に思った日帝が彼の部屋のドアを静かに叩くと、中から聞こえてきたのは、いつもの冷徹な声ではなく、ひどく掠れた弱々しい咳払いだった。
「……日帝か。気にするな、ただの微々たる体調不良だ。数分後には合理的に自己修復して、予定通り居間へ向かう」
「ナチ殿、声が完全に潰れていますよ。失礼します」
日帝が慌てて部屋に入ると、そこには軍服ではなく寝間着のまま、ベッドの中で布団を頭まで被って身を縮めているナチの姿があった。おでこに手を当ててみれば、驚くほどの熱が宿っている。普段どれほど厳格で強靭に見えても、彼もまた一人の存在であり、風邪を引く時は引くのだ。
「完全に高熱です。今日は絶対にベッドから出てはいけませんよ。大人しく寝ていてください」
「馬鹿な……。この私が、このようなウイルス風情に生活リズムを狂わされるなど、我が誇りが許さん……うっ」
「誇りよりも、今は睡眠と静養が最優先です」
日帝がナチを布団の中に押し戻し、氷嚢を準備するために部屋を出ると、廊下には事態を察知したソ連とイタ王が心配そうな顔(一人は少し面白がっている顔)で立っていた。
「ナチの奴、風邪を引いたのか? あの頑固者が病床に伏すとは、明日は天変地異でも起きるんじゃないか?」
ソ連が腕を組み、ニヤニヤと笑いながら部屋の中を覗き込もうとする。
「大変だよ! ナチが死んじゃったらどうしよう! 僕、お見舞いに特製のトマトスープ作ってくる!」
イタ王が涙目でオロオロと右往左往し始めた。
「ソ連殿、からかってはいけませんイタ王殿も落ち着いてください。ナチ殿は非常にプライドが高いですから、弱っている姿を見られるのを嫌がります。そっとしておいてあげるのが一番なのですが……」
日帝の言葉が終わる前に、ソ連はずんずんとナチの部屋へ入っていってしまった。その手には、なぜか並々と注がれたお馴染みの無色透明な液体――ウォッカのボトルが握られている。
「おい、ナチ。我がロシアの格言を教えてやろう。風邪を引いた時は、ウォッカに大量のペッパーを混ぜて一気飲みし、毛布を十枚被って汗をかけば一発で治る」
「……貴様、病人に対して暗殺未遂を起こす気か……! 出ていけ、シロクマ……頭に響く……」
布団の中から枕が飛んできたが、ソ連はそれを片手で軽々と受け止め、ガハハと笑った。しかし、その目はどこか楽しげでありながらも、不器用な気遣いに満ちている。ソ連はウォッカのボトルを引っ込めると、日帝が持ってきた氷嚢をナチの額にそっと載せてやった。大きな手が、少しだけ乱暴に、しかし優しくナチの頭を撫でる。
「フン、冗談だ。大人しく寝ていろ。お前がいないと、チェスの相手がいなくて退屈だからな」
「……言われずとも、明日には完璧に復帰して貴様を叩きのめしてやる……」
そこへ、イタ王が「お待たせー!」と大きなお盆を持って部屋に飛び込んできた。お盆の上には、湯気を立てる真っ赤なトマトスープと、日帝が用意した白粥が並んでいる。
「ナチ、これ食べて! おばあちゃん直伝の、元気になるハーブを入れたスープなんだから!」
「イタ王……、私は今、味の濃いものは受け付けんと言って……」
「まぁまぁ、ナチ殿。イタ王殿があなたのために一生懸命作ったのです。一口だけでも召し上がってください。その後に、このお粥をどうぞ」
日帝にスプーンを握らされ、三人の視線を一身に浴びたナチは、観念したように小さいため息をついた。ゆっくりと上体を起こし、イタ王のトマトスープを一口、口に運ぶ。
じわりと温かいスープが喉を通り、体の中に染み渡っていく。
「……少し、塩気が強い。だが……悪くない」
「やったぁ! ナチが美味しいって言ってくれた!」
イタ王が嬉しそうに日帝の手を握って はしゃぎ、それを見たソ連が「どれ、私にも毒見させろ」とスープを奪おうとしてナチに睨まれている。
日帝はお粥を机に置き、スポーツドリンクのペットボトルを枕元に添えた。
「さあ、食事の後は薬を飲んで、ゆっくり眠ってください。私たちがついていますから、何も心配いりませんよ」
「……ふん。余計なお節介だ」
ナチは再び布団を深く被り、そっぽを向いた。しかし、額の氷嚢の冷たさと、部屋を優しく満たす仲間の気配に、彼の強張っていた身体は自然と弛緩していく。
普段は言い合いばかりしている不気味な同居人たち。けれど、自分が弱っている時にこうして側にいてくれる存在の温かさを、ナチは心の奥底で静かに噛み締めていた。
数時間後、静かになった部屋で、ナチは穏やかな寝息を立て始めた。
枕元には、イタ王が置いていった手折りの不恰好な折り紙の鶴と、ソ連が置いていった(日帝に没収されかけた)小さなマトリョーシカ、そして日帝が優しく淹れてくれた白湯の湯呑みが、静かに彼を見守るように並んでいた。
コメント
3件
安静にしてくれナチ!! プライド高いのいいねぇ……シロクマ呼びすぎ
第10話、読みました! ナチがまさか風邪でダウンするとは思わず、最初からびっくりしました。日帝の冷静ながらも慌てた対応、そこにソ連の乱暴だけど不器用な優しさが混ざって、さらにイタ王の真っ赤なトマトスープ! 「少し塩気が強い。だが……悪くない」って、あのナチが素直に受け入れる姿にじんわりしました。三人のキャラが生きてて、こういう緩い看病シーンが凄く良かったです。続きも楽しみです!