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紅葉@物語作成中
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#能力
めんだこ
802
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「よいしょ…っと…」
重くて、少し大きな植木鉢を抱えて中庭を歩く。世の中は六月中旬…段々と夏に向かって暑くなってくる頃だ。今日も太陽が出て、とても暑くて、少し汗が滲む。
「ここら辺でいいかしら…」
抱えていたのは、紫陽花の咲いた植木鉢。半日陰に着くと、そこにゆっくりと置く。
「今年も綺麗に咲いてくれたわね」
我が子を愛でるように、花を愛でる。純白の花びらが満開になっていた。
「紫陽花?」
ふと、この子達に水やりをしている時に現れたのはいつものアイツ…カトラーだった。
「正解。でも、正確には“アナベル”ね」
植木鉢から溢れるほどの水をあげる。そんな中、アイツはピンと来てないような表情をしていた。
「アナベル?それって君の事じゃ…」
そう…コイツの言う通り、私も“アナベル”。そして、この子達も“アナベル”。
「アナベルっていう、紫陽花の品種よ。私の名前も、この子達から来てるの」
誇らしくなってか、私は花を撫でる。
「君の名前は、花から来ていたんだね。なるほど、通りで綺麗なわけだ」
ビク…と、水をやる手が止まる。隣にいるこの人は、いったい何を言っているんだ。
「ど、どういう意味よ!」
照れ隠しかどうかももう分からないけれど、ホースをアイツに向けて水をかける。
「うわっ!濡れるだろう?!」
気付けばアイツはびしょびしょ。想像以上に勢いよく水が出ていたらしく、アイツだけ…と言うよりは、アイツを中心にして至る所が水に濡れてしまった。
「アナベルのせいでびしょ濡れだよ…」
びしょびしょになった黒いコートを脱いで、絞る。いくら暑いとはいえ、濡れたままの服を着ていると風邪をひいてしまうのだろう。
「ふん!あんたが変な事言うからでしょ!」
ふと、ホースを持つ手が緩んでいたのか、私がそんなことを言っている間に、ホースを取られてしまった。
「あっ!」
ニコッと、笑顔を向けられては同じように水をかけられる。
「お返しだよ」
くすくすと笑いながらそんなことを呟かれる。気付けば私も全身びしょ濡れで、服が重く感じた。
「あんたねぇ〜〜〜〜!!!!」
重くなったコートを脱ぎ捨てて、私はアイツを追いかける。私が怒っていることに気づいたのか、あいつもホースを投げ捨てて逃げようと走る。
「わっ、あんまり濡れたまま走ると滑って怪我するよ!」
なんてそんなことを言いながら全力で走っているのはどっちだ。
「お互い様よ!」
体力面では私の方が上…このまま走り続ければいつかアイツが疲れて私が勝つ。…なんて、思っていたのに。
「うわっ…!」
奇しくもアイツの言う通りなのか、私は濡れて重くなったスカートに足を取られそのまま横転した。
「ほら、だから言ったのに」
笑いながらアイツが近づいてくる。
「笑わないでよ!」
ムッと頬を膨らませてそう叫ぶように言う。
「ごめんごめん、ほら、立てるかい?」
なんて、全然誠意の伝わらない謝罪をしながら、アイツは手を差し伸べてくる。
「一人で立てるわよ」
そう言いながら、私はアイツの差し出された手を取る。立ち上がった後、ほんの少しの間気まずい沈黙が続く。
「本当にごめんよ?」
その沈黙を破るように、彼はそう悲しそうに謝ってきた。
「……ふっ、ふふ、何本気で謝ってんのよ。怒ってなんかないわ」
あまりにも悲しそうに謝るものだから、私はそう笑ってしまった。
「驚いたじゃないか…。本気で怒らせたかと思ったよ」
安心した…とでも言うようにほっと息をついている。
「そんなことで怒るほど、子供じゃないわよ」
少しムッときてそう呟く。
「さっきまで追いかけ回していた人が言うことかい?」
そんな私の様子を見て揶揄うように、アイツはそう言う。
「うるさい!」
子供扱いされている気がして、なんだか面白くなかった。あの時、追いかけっこで揺れた白いアナベルが、何事もなかったように風に揺れていた。
だけど、そんな平和な一日は、すぐに過ぎ去っていく。夜になれば二人とも仕事で、まともに顔を合わせてこんな穏やかな会話なんて、しないから。
神様、今だけは幸せでも、いいですか?
コメント
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第2話、めっちゃ良かったわ…。朝のほのぼのしたやり取りから水の掛け合い、そして最後の「神様、今だけは幸せでも、いいですか?」がガツンと来た。表向きは軽い日常だけど、夜には別の顔があるみたいな描写で、まだ何か隠してる感じがして続きが気になる。紫陽花のアナベルと主人公の名前を重ねたのも綺麗だなって思った〜🌿