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青桃短編集

13 - キスの日青桃

♥

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2025年05月23日

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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります

この言葉に見覚えのない方はブラウザバックをお願い致します

ご本人様方とは一切関係ありません


5月23日はキスの日らしいということで、青桃さんがキスするだけの話。

1年前(2024年)のキスの日に書いたお話です。




「へー今日って『キスの日』なんだって」

事務所で打ち合わせを終えた後、珍しくメンバー全員のその後の予定が空白だった。

久しぶりだしせっかくだからと、そのまま夕飯を食べに出た帰り道。

夜道を歩きながらスマホを弄っていたいむが、ふとそんな声を上げた。



へぇそうなんだ、とでも流しておけばいいのに、そんないむの隣を歩いているまろは鼻であしらうようにして笑う。



「相手もいねーくせに色気づいてんなぁ、お前」

「はぁ!? 何で相手いないとか分かんのさ!」



案の定いむが応戦する形で声を荒げるから、夜の静寂がたやすく破られてしまう。



「いや分かるやろ。俺らに隠しとるだけで実は相手おるとかありえる?」

「……ないけど…でもそんなん言ったらいふくんだって同じじゃん! どうせキスする相手もいないくせにさぁ」

「大きなお世話ですー、『でこちゅー』を『おでこでちゅー』やなくて『おでこにちゅー』やと勘違いしたお前に言われたない……いや待って、この話ナシ」


反論しかけて急に口を噤んだまろの方を、それまで黙って先頭を歩いていたりうらが振り返る。

それからおかしそうに声を上げて笑った。



「あはは、自分で言ってダメージ受けてんじゃん、まろち」



いつだかのライブ会場で流した実写映像。

その時のいむの「でこちゅー事件」を持ち出そうとしたらしいまろは、その相手が自分だったことを思い出してげんなりとうなだれる。

それを反撃の好機と取ったのか、いむは少し身を乗り出してまろに詰め寄った。



「はいはい確かに僕はでこちゅー間違えたかもしれませんけど? いふくんからしたらお子様かもしれませんけど? でもあれだよねぇ、そういういふくんは余裕ぶってスカしてかっこつけたキスしそうだよねぇ。僕と違って大人だもんねぇ?」



ぷーくすくす、と笑いながら口元にわざとらしく手を当てるいむ。

まろとは反対隣のそのいむの横で、初兎が意味ありげに首を左右に振る。

それから「いやいやいや」と話に割って入った。



「いむくんいむくん、意外にまろちゃんみたいなタイプがねっちょりべっとりな濃厚なちゅーするんかもしれんで。あまりにもしつこすぎて彼女にフラれそうな」



どうやら今日のいむしょーはまろをいじることでタッグを組むことにしたらしい。

案の定、まろも口元を歪めて「あぁん!?」と初兎に言い返そうとした。

だけどその時、りうらの隣を歩いていたあにきが勢いよく振り返る。



「お前らさっきからくだらんことでうるさいねん! 大体メンバーのキスなんか想像すんな! きしょいわ!」



あにきの怒号にいむしょーは「はぁい」と首を竦め、まろは「ふん」とそっぽを向いた。

ここまでがテンプレ通りのうちのグループのやり取りみたいなものだ。


一番後ろでそれを眺めていた俺は、思わず苦笑いを浮かべてため息をついた。





「じゃーね、また明日」



分かれ道に来て、いむがその場にいた全員に向けて手を振る。

いむしょーはこのまま直進する方向へ帰っていく。

あにきとりうらだけはここからまだ電車に乗らなくてはいけないため、左方向の駅へ向けて歩き出した。



「おつかれー」


俺もそう短く応じて、街灯の少ない暗い道を右折する。

他に誰もいないその割と狭めの道路は、静かすぎる余り自分の靴音がコツコツと響いた。



「……ふ」


しばらく歩いたところで、堪えきれずに小さく笑みを零す。



「『余裕ぶってスカしてかっこつけたキス』に『ねっちょりべっとりな濃厚なちゅー』だって」



独り言のように呟いたそんな俺の言葉に、半歩後ろをついてきていたまろが「…何がおもろいねん」と不機嫌そうに言った。

それから少しだけ大きく一歩を踏み出し、俺の隣に並ぶと眉を寄せてこちらを見下ろす。



「いや、おもろいだろ。冗談とは言えお前そんなイメージ持たれてんの」



あはは、と声を上げて言うと、まろの眉間の皺は更に濃くなった。

笑う俺を一瞥したかと思うと、そのまま割と強めな力でぐっと肩を引かれる。

おかげで歩みを進めていたはずがその場に留められた。




肩を掴んだまろの手が、今度はくるりと翻されるものだから、それに付随するように俺の体も方向転換させられる。

向き合う形になったかと思った瞬間、大きな両手が包み込むように俺の頬に触れた。



そのまま頬を一撫でしたかと思うと、するりとその手が斜め上へと上がってくる。

ピンク色に染め上げられた俺のサイドの髪をくしゃりと指先で握ったかと思うと、大きな手のひらは耳を覆った。

キスする前の、まろの癖だ。

俺の耳が好きなのかなんなのか、絶対に毎回愛おしそうに触れてくる。



「…ま…」

ろ、と呼びかけた声はその唇に塞がれた。


微かに開いたままの唇で、まろは噛みつくようなキスをする。

それもいつものまろの癖。

ちょんと触れるだけの爽やかなキスでも、ねっちょりとこっちがドン引くような濃いキスでもない。

余裕がありそうなのに余裕なくこちらを求めてくるその感じが好き。

歯列を割って入り込んでくる舌に、自分の舌を絡める刹那の高揚感はいつまでたっても褪せない。



何度も角度を変えてのキスを繰り返した後、満足したのか唇を離したまろはこつんと俺の額に自分のそれを寄せる。

そんなまろに、俺はからかうような笑みを浮かべてみせた。



「…ふ、『キスの日』だって。まろ、今日はキスしかダメ縛りでもやってみる?」



俺の放ったそんな言葉にまた眉を寄せるかと思ったまろは、意外にもにやりと笑ってみせた。



「ん、いいよ? その代わり日付変わった瞬間にないこがどうなってもしらんけど」



…そう来たか。

思いもよらない回答が返ってきて俺は思わず首を竦める。



「…やっぱなし、普通でいいわ普通で」

「んー? 普通って何? どんなん?」


なぁなぁなぁないこたーん、なんてふざけた声を出し始めるものだから、今度はこちらが眉を顰める番だ。




「うっさいな、さっさと歩け」


その長い足に蹴りを入れるフリをして、俺は先を歩き出す。


「んははは」と楽しそうに笑ったまろが俺の隣に再び立ったから、街灯が照らす足元の影も重なり合うように横に並んだ。




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コメント

2

ユーザー

本日はキスの日なのですか…✨知識と時間さえあれば今日書けたのにという後悔が凄まじいです😖 水さんと白さんのイメージが真逆で色んなキスの仕方があるのだなぁとまた良いものか分かかりませんが知識が増えた気がしますꉂ🤭︎‪💕 「いつもの」という言葉が多いのも熟年夫婦感増し増しになってて好きです…💕 あおば様の短編は短編とは言えないくらい長いですからね!?毎度のことながら幸せ気分もらってますっ💓‪

ユーザー

今日ってキスの日なんだ!? 初めて知った!更新ありがとうございます!

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