【○○温泉付き旅行ペアチケット】
○○温泉
大浴場・室内露天風呂あり
夕食は地元の海の幸懐石料理!
●●駅から徒歩15分
駅周辺には観光スポットがたくさん!
友達、恋人とぜひお楽しみください!
「一眼レフは外せないよな…」
あれから一週間が経った。久しぶりの旅行に俺はワクワクしている。一泊二日にしては少し多いか?というくらいのキャリーバッグのキャパ。カメラが趣味の俺としてはもちろん一眼レフカメラは絶対に持っていきたい。
他にもなにかあったら困ると思って念のために入れてみたら、とてつもない量になってしまった。またあいつに笑われてしまうだろうか…
「室内に浴衣はあるんだな…じゃあ下着だけで充分だな…」
チケット内容を見ながら準備を進める。旅行に行くことはメンバーには言っていない。あいつにも聞いてみたけど、
『言うわけないじゃん。めんどくさい』
なんて言っていた。もちろん俺だって自分から言う必要はないと思うし、聞かれたら答えるくらいでいいと思う。
俺があいつを誘うのには理由がある。旅行好きだからと言うのは当たり前のことだけど、もう一つ明確な理由があった。この年にもなって独り身の俺にとっては、ここに書いてあるとおりの“恋人”というのには縁がないと思っている。
学生時代はそりゃ、そんな恋人の一人や二人いたけれど、大人になった今、それより楽しいゲームにハマってしまって。そんな俺に恋人ができるはずもなく、ましてや結婚なんてものは夢にも思わない。
でも最近、ちょっと気になることがあったりする。ライブの練習やリハで一緒になることが多い仮面の奴。性格は正反対なのだが、何故か一緒にいると落ち着く。他のメンバーみたいに騒がしくないし、無理に会話をする必要もないから楽なんだ。
たまに、そいつといると心臓がチクッとなったりすることがある。いい年して乙女か?なんて思うなよ?
俺だってびっくりしてるんだ。
そんな気なんて今までなかったのに。
「ふふ…楽しみだな…」
持っていくカメラを磨きながら、旅行の景色を想像する。これでいろんな景色を撮りたい。被写体もいる。
いい旅行になるといいな…
Prrrrrrr…
電話だ。
(夜中の2時だぞ?誰だよこんな時間に…)
そう思って画面を見る。
(あろま…)
まさかのあいつだった。それにしても珍しいな。向こうから電話かけてくるのなんてほぼないと言っていいくらいなのに。
「もしもし?」
『あ…起きてた?』
「うん、どうした?」
『いや…旅行のことで…』
一週間後に迫る旅行のことはちゃんと覚えててくれたらしい。そりゃそうだよな。スケジュールにメモってたもんな。
『部屋着ってあるの?』
「あー…浴衣あるみたいだけど。それがどうかした?」
『俺さ、浴衣大きくて脱げちゃうんだよね。だから部屋着持っていこうかと思ったんだけど』
正直困った。別にやましいことを考えているわけではないのだが、せっかくなら二人浴衣がいいに決まってる。だってそのほうが…温泉っぽくていいんじゃない?
「そんなにデカくないだろ」
『そうかな』
「部屋着持ってくと荷物かさばるんじゃない?」
『それもそうか。わかった』
そんなことか、と思ったけど、ちゃんと考えてくれているとわかると少しホッとした。
「楽しみにしてる」
そう言うと、電話口からの声は聞こえず、黙ってしまった。
「聞こえてる?」
電波が悪いのか?と思っていたら
『ん』
とだけ返事が来て切れてしまった。相変わらずドライなやつ。
あと一週間がどれだけ長く感じるんだろう。ワクワクして寝れない…ことはないんだけどな。
To Be Continued…
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