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Jinto side
彼が卒業して何日たっただろうか
「あ、先生!今日も可愛い!大好き!」
変わったことと言えば、保健室の扉は開かれず
彼は私服で
好きに大きいという字がついたこと位か
「君、ほとんど毎日のように来てますけど…、授業受けてます?」
「受けてる!今までサボったことないよ、俺案外真面目だよ?」
「…真面目なのは、知ってますけど」
なぜか僕の退勤時間を知っているらしい佐野くんは、狙ったように僕が校舎を出たところに話しかけに来る
「不法侵入になりますよ」
釘を刺しておこうと思ったのに
「俺、守衛さんと仲良かったから顔パスだよ」
「え…」
どうも失敗したようで頭を抱えたくなった
「…ごめんね、また来るね」
…時々謝るのはなんだろう
いつも決まってまた来るねと言い残して帰っていく
「…また来るのか」
青い背中を見送るしかなかった
ひと月たち、少しずつ佐野くんの来校が減ってきた
2か月たち、1週間おきの間隔だったのが2週間姿を見ていない
大学生だ
忙しくなってきたのだろう
それでいい
外の世界は楽しいだろう
それでいい
そう思っていたのだが
「あ、先生!今日も可愛い!大好き!」
…デジャヴだな
「聞いて!俺、カフェでバイトはじめたの」
「へえ、君が」
…似合いそうだけれども
「先生は?なんかない?あ、俺みたいなやついない?」
毎日学校と家の往復
君みたいなトピックスはなにもないものですよ
「毎日保健室に顔を出すような物好きは君くらいですよ」
「へへ、そっか」
困ったような顔で笑うから、調子が狂う
「じゃあね、先生」
後ろ姿が小さくなっていく
…彼はとうとう、「また来る」と言わなかった
ひと月丸々姿を見なくなって、もうすぐ夏休みになる