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〈kiriyan side〉
噂を流すのは決まって次の太陽が顔を見せる時
つまりそれまでに祓う必要がある。
空が闇へと包まれてからしばらくした時間。
夜には厚い雲が退けて、月明かりが青白く不気味さを纏わせていた。
別に一人行動なんて珍しい話じゃない、でもなぜか不安になる
トンッ
狐 「坊や,今からかい?」
kr 「びっ、、、くりしたぁ。あんま引っ付くなよ」
肩に飛び乗る小さな妖。しかし人を惑わすような裏の顔は見受けられなかった。
なぜ俺に懐いているのかは、、、まぁわからなくもないが。 この夜が一人ではないと思うと少し安心してしまった
狐 「懐かしき仲間との再会なのよ。行くのは当たり前でしょう?」
kr 「あーはいはい、、え仲いいの?」
狐 「七不思議界隈は狭いのよ、あなたも知っているでしょう?」
kr 「、、まぁね」
なんの生産性のない話をしながら気づけば例の教室に着いた。
少しばかり空が曇り始め、窓から吹き抜ける風が雨の予感を連れてくる。
瞳を閉じてイメージする。
奥そこで眠る彼の姿。助けてと口を開けるのも叶わずに、ただひたすらに待つことしかできない彼の姿。
優しさを交えた温かい霧雨を連れて、呪縛の紐から解く手を差し伸べる。
怪異だってもとは人間だから。
俺たちと同じ、
人間だから。
〈smile side〉
夢か朧げな記憶か、定かではないがあの景色が忘れられない。
ただ、ただ心地が良い。
それはまるで母さんがしてくれるハグのようで、狭くてそれでも温かい。
それはまるで父さんが頭を撫でてくれるようで、ワシャワシャと強引だけれど涙が込み上げるほど沁みる。
それは単なる雨のようだけれど、草木を育て、花を鮮やかにし、動物たちを潤した。
まえにきりやんがそうしているのを見て、天使が降りてくるのを見て、初めてじゃない気がした。
それは多分この朧げな記憶だか夢だかのせい
いや、おかげなのか
〈kiriyan side〉
噂は、どこからか聞こえるあの声の主。
小さな鳩だった
鳩 「ん、、ここは」
狐 「長い悪夢からのおかえりよ、坊やに感謝しないとね」
kr 「そうだよ」
鳩 「こんな幼子に助けられるとは参ったものだ」
kr 「俺が幼子なら、これから生きていくうえで驚くようなことがたくさんあるだろうね」
kr 「、、、あぁ。もう死んでるか」
狐 「あんまり調子に乗るんじゃないわよ坊や?」
kr 「明日には新しい噂がまわる。俺が関与できるのはそこまでだけど、もう平気でしょ?」
鳩 「ふむ、我儘をいうと茶が飲みたいな」
kr 「狐と仲良く茶でもしばいときな、んじゃ俺帰るから」
鳩 「霧雨はあんなにも優しいのに、内面はあんなにも無愛想なのか」
五月蝿いなぁ。
別に七不思議や怪異のこと嫌いなわけじゃない。特に七不思議なんかは理由が理由だから。
かと言って馴れ馴れしくするのも見えるはずのことが見えなくなってしまうから、するべきじゃない。
そんなことを考えながら二人を置いて廊下の静けさを纏いつつ歩いていた。
ドンッ
kr 「いっ、、は?」
なんで、、、?
なんでお前がここにいるんだよ
kr 「スマ、イル、、?」
sm 「、、、ぅ」
寝ぼけてるのか?
そもそもこんな時間に学校にいるのがおかしい。ていうか、どうして?
---君たちこんなところにいたのー?
kr 「っ!」
先ほどまでいた理科実験室の前から幼子の声が響き渡る。ツンツンしていて耳に残るあの声。
笑い方はキリキリとしていたまるで悪魔のようなあの声。
まずい、、、。
---狐 「あら、ごきげんよう」
---鳩 「全く久しく見るなぁそのお顔」
---ははっ、そうだったっけぇ?
なんで今に限ってっ、
焦る、判断が鈍くなる
よってミスを犯す。
焦りが禁物という言葉は誰しもが知っているほど単純で、常に気を付けておいた方がいいほど重要なことだった
kr 「ちょっ、一旦スマイルこっち」ボソッ
階段下の小さな倉庫に駆け込んでは息を潜める。そこは少し狭くて、俺たち二人でもつめつめになってようやくの場所だった。
---狐 「それにしても、こんな時間にお会いするなんて珍しいじゃないの」
---「最近、人間が好き勝手やってくれてるみたいでさ?」
---「君たち何か知らないの」
空気がピリついて、鼓動でバレてしまいそうだ。
---「匂いがするんだよ、人間の匂い」
---「ここをずっと辿って階段のほうにいっているね」
バレていた、どうする、?
スマイルをここに隠して、俺だけでも姿を現すか?
いや、それで奴かまた満足するわけがない
だって彼の狙いは俺じゃないのだから。
---この辺から感じるなぁ
鼓動が早まる。
息を殺してても五月蝿い。
冷や汗が頬を伝う。
細い指が俺の頬を撫でる
sm 「しーっ」コソッ
彼は覆い被さるようにして俺を隠す。
なぜ彼の方が落ち着いているのか、なぜ俺を隠すのか、その紫炎色の瞳には何が映されているのか。
混乱する頭
暗く冷たい倉庫の中
ほのかに照らされる輪郭を、
その綺麗な横顔を、
その深い瞳を、
眺めることしかできなかった。