テラーノベル
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いつの間にか、楽屋に佐久間くんが立っていた。
しかも、めちゃくちゃ固まっている。
(えっ……もしかして今の会話、聞いてた?)
佐久間くんの顔は驚きと混乱でいっぱいだった。
「……え? え? え???」
明らかに思考が追いついていない様子。
「おい佐久間、いつからそこにいた?」
「……わかんないけど……なんか……すごい話してなかった?」
「いや、あの、その……」
焦ったが、どう誤魔化していいのかわからない。
佐久間くんは俺を見つめたまま、
「え? え? え?? 蓮、もしかして……その……」
言葉に詰まりながら、混乱しているのが伝わってくる。
(やばい、完全に聞かれた……)
と、ここでふっかさんがすっと立ち上がる。
「まあまあまあ、落ち着けって」
と佐久間くんの肩をポンポン叩いた。
「……とりあえず、座ろう? な?」
「え、あ、うん……」
佐久間くんは言われるがままにソファに座る。
ふっかさんがチラッと俺を見た。
(……目黒、どうすんの?)
(えぇ……)
逃げるわけにもいかず、観念して口を開いた。
「……あの、佐久間くん、びっくりさせてごめん」
「う、うん……」
「その……俺、岩本くんのことが好きで……」
「えええええええええ!!??」
佐久間くんが目を見開く。
「お、蓮、ちょ、マジで?」
「はい……」
「え、えぇ……まじか……」
佐久間くんは呆然とし、ソファに深く座り込んだ。
「ごめん、急にこんな話聞かせちゃって……」
「いや、いやいや、全然いいんだけど……ただ、思ってた以上に衝撃が……」
完全に混乱している佐久間くん。
すると、ふっかさんがクスクスと笑いながら肩をすくめた。
「な? 佐久間もびっくりするだろ?」
「うん……やばい、ほんとに思考が追いつかない……」
「まあ、でもさ、目黒も本気だからさ。そこはちゃんと受け止めてやって?」
「うん……そりゃもちろん……」
少しずつ落ち着きを取り戻した佐久間くんは、改めて俺を見つめる。
「……いや、すごいな蓮……マジで……」
「……はい」
「こんな大事なこと、話してくれてありがとう。でも、マジで驚いた……」
「ごめん、佐久間くん……」
「いやいや、謝ることじゃないって!」
佐久間くんは大きく息をついて、
「でも、そうなると俺、今後照と蓮を見る目が変わっちゃいそう……」
と苦笑する。
「それは……ごめん……」
「いや、でも、応援するから!! なんかあったら言って!」
そう言って、佐久間くんは笑った。
(……よかった。ちゃんと受け止めてもらえた)
ふっかさんが、「ほらな、大丈夫だろ?」とばかりにウインクしてくる。
そこからしばらく佐久間くんからの質問攻めにあった。
「ってことは蓮さ、照に対して気持ちをまだしっかり伝えてないだろ?」
少し驚いて、思わず答えた。
「まだどう言えばいいのか分からなくて……」
佐久間くんは肩をすくめて、ため息をついた。
「蓮、何でそんなに遠回りしてるんだよ。言いたいことちゃんと言わないと、照は鈍感だからさ、気持ちが伝わらないぞ」
少し戸惑いながらも、うつむいた。
「でも、いきなり好きって言うのも恥ずかしいし、なんか怖くて……」
「うーん、それも分かるけど、今のままだと、結局、友達と同じような接し方になっちゃう気がする。友達としての関係を維持したいのか、それとも照にもっと意識してもらいたいのか、はっきりさせた方がいいんじゃない?」
その言葉に少し考え込む。
「確かに、今のままだと岩本くんにも気づいてもらえないまま終わりそう……でも、告白とか、よくわかんないし…」
その時、ふっかさんが口を開いた。
「佐久間の言ってること、俺もそうだと思う。目黒、今のままじゃ照には、ただのメンバー、友達でしかない。お前の気持ちを、意識させるためには、もう少し大胆に行動しないと。例えば、目を見て話すとか、ちょっとした触れ合いを増やすとか、そっちの方が伝わるかもな」
しばらく黙って考えていたが、やがて覚悟を決め、顔を上げる。
「大胆にか……分かった、やってみる。岩本くんに、俺が意識してることを伝えたい」
佐久間くんは笑顔で、俺の背中をポンっと叩いた。
「それでいい! 思い切って、もうちょっと自分の気持ちを出してみろよ! 今のままだと、照も、気づかないままでいるぞ?」
ふっかさんも頷きながら言った。
「お前が頑張らなきゃ、何も変わらない。照に気づかせるだけでも、距離が縮まるはず」
深く息を吸い込み、決意を新たにする。
「ありがとう、二人とも。俺、もっと頑張ってみる」
二人の言葉に背中を押され、改めて自分の気持ちに正直になろうと思った。
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