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まなみ 伊予弁
そらと 博多弁
「…まなみ、まじ大丈夫なんか?」
ソファに座るまなみを見下しながら、そらとは少し眉をひそめた。
さっきまで飲んでいたため頬は赤く、潤んだ瞳でこっちを見上げてくる。
「だいじょーぶやけん…そらとんとこ来たら安心するんよ」
まなみはふにゃっと笑って、ソファにもたれた。
「…安心するんはええけど、そんな顔でこっち見られたら、なんか…落ち着かんっちゃんね」
そらとは頭をかきながら、距離を取ろうとする。
けど、まなみの指先がそっとそらとのシャツの裾をつまんだ。
「ねぇ、そらと…」
「…なん」
「さみしいけん、こっち来て…?」
その一言で、そらとの理性が揺れる。
何年も幼なじみとして一緒にいたはずなのに、こうやって甘えられると、意識しない方が無理だった。
「お前なぁ…そんな、あざとい声出すなって」
「えぇ?うち、普通やのに~」
わざとらしく首をかしげるまなみに、そらとは小さく舌打ちして近づいた。
そっと、まなみの肩に手を置く。
その体温の近さに、心臓が跳ねる。
「な、なんしよるん…」
まなみが小さく笑って、目を細めた。
頬にかかった髪をそらとが指先で払うと、まなみの吐息がふわりとかかる。
「……動かんで。くすぐったがりやろ?」
そらとが低い声で囁き、まなみの脇腹を指でなぞると、
「ひゃっ……!や、そらと…っ」
と、甘い声がこぼれた。
その声に、そらとの呼吸が一瞬止まる。
胸の奥で何かが弾けそうになるのを必死で抑えながら、顔をそらしてつぶやいた。
「……そんな声、簡単に出すなや。…やばいっちゃろ」
まなみは真っ赤になって、そらとのシャツをぎゅっと握る。
その仕草に、そらとも堪らずまなみを引き寄せた。
二人の距離は、息が触れ合うほど近い。
でも、そらとはギリギリで踏みとどまる。
「……ほんと、お前のこと、子どもん時から好きやけん…今、これ以上したら…もう止まれんばい」
その言葉に、まなみの目が大きく見開かれた。
でもすぐに、ほんのり笑って、そっと囁く。
「…まなみも、ずっとそらとが好きやけん」
お互いの想いが重なった瞬間、鼓動だけがうるさいほど響いていた。
だけどその夜は、それ以上、何も起きなかった。
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