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※遥は日下部の前で「本当に笑ったことはない」。もし何か表情を見せたとしても、それはほんの一瞬、無意識に漏れたもの──そしてすぐに自分で打ち消してしまうはず。
遥にとって「笑う」という行為は、 自分が「無防備になる」ことであり、
人を安心させてしまう「偽りの顔」であり、
自分が“人間のふり”をするための仮面にすぎないと認識している。
蓮司が言った「笑ってたよね?」という言葉について。
これは、
遥を揺さぶるための意図的な捏造か、
ほんの一瞬の“気の緩み”を見逃さず、過剰に利用している、 いずれかの心理操作。
蓮司の観察眼は鋭いので、遥が「ちょっと表情を緩めた」「日下部の言葉に返事をした」「目線を逸らしながらも少しだけ安心した」……そんな“兆し”を「笑った」としてわざとねじ曲げている。
遥自身は、そう言われるたびに
「そんな顔、した覚えなんてない」
「もし本当にしていたなら──気持ち悪い」
とすら思う。
日下部視点での誤解も加わる。
日下部は、遥の小さな変化に対して、
「もしかして今、ちょっと笑った?」
「少しでも心を開いてくれた?」
……と“希望的な誤解”をすることがある。
でも遥にとってそれは
「期待された」
「見透かされた」
「わかった気でいられた」
という、逆に自己嫌悪と警戒を強める材料になる。
遥は、日下部の前で意図的に笑ったことはないし、心からの笑顔など出せる状態ではない。
そして蓮司の「笑ってた」は、遥の内面を破壊するための攻撃的な誇張である。