⚠学パロ
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雪が降り始める12月
鈴の音が町から聞こえる。
ホワイトクリスマス。叶うといいな
「クゥーリスマスが今年もやぁーってくるぅー」
「気怠げに歌うね~。彼女さんがいるのに。」
「「お前がそれを言うな」」
「おうおう。見事にハモりますなぁ」
12/23というクリスマス間近の日にレトさんの家へと遊びに来た。
レトさんの家に来る機会がなかなか無かった俺は前のケーキのお礼をしに、おばあちゃんの元へと向かった。
「お邪魔してます。おばあちゃん?」
「…?あ、キヨ君。いらっしゃい。」
会うと毎度のごとく微笑んでくれてとてもいい気分になる。
「お礼言うの忘れてたんですけど、ケーキ美味しかったです。ごちそうさまでした。」
「まぁ、ありがとう。」
うふふと言って俺の方に手を伸ばしてきた。
「こっち。おいで。」
ーーー
キッチンの方へと呼ばれて来た。
そうするとある物が目に映った。
「見て、これ、ケーキなのよ。」
「…クリスマスケーキですか?」
真っ白なクリームを土台として、その周りにはマカロンが丁寧に敷き詰められている。
マカロンも細かいところまで作られていて売っている物みたいだ。
「違うわぁ。あれ、もしかして聞いてないのかしら?」
「?」
「レトルトね。お誕生日なのよ26日。」
なんだって…そんなの初耳だ……
「あの子目立ちたくないから、言ってなかったのかもね。」
「あ、あの…い、祝ってもいいですか?」
それを聞いておばあちゃんはポカンと口を開け
「…お願い……しちゃっていいの…かな……?」
目を伏せて遠慮気味に言った。
こういう所はレトさんもそっくりだ。
「はい。任せてください。」
にっと笑って俺はそう答えた。
ーーー
俺達はレトさんの家から出て、帰り道。
「あのさ、レトさんさ、誕生日なんだって。」
「26」
「…マジ?」
「ヤバいじゃん。」
二人とも驚いてる様子でこちらをガン見してくる。いやー、人気者は辛いなー。照れてしまうよ。
ふざけている俺の顔を見かねてかガッチさんが話を戻してくれた。
「どうする?26日空いてる?俺はいけるけど」
「俺は、いける」
「俺も」
「よし、じゃあ、俺んちで祝ってやろう。ぱーっとね?」
適当な感じで言っているが至って真剣なようだ。なにせ、ガッチさんが自主的に家に誘ってくることなんて滅多にないからな。
「あ、これがいいんじゃね?」
ーーー
時が経ち、26日。
クリスマスには雪なんて降らなかった。
皆、クリスマスは彼女さんやら、家族とかで過ごしたらしい。まぁ、俺も家族と過ごしたんだけどさ。
ま、そんなことはどうでもいい。
よし、作戦決行だ。
「レトルト、見ろ。コレ。」
「ん?なに?」
うっしーがチャラチャラと音を鳴らしてレトさんにキーホルダーを見せる。
「え、なにそれ?!いいな!」
「いいだろ~?限定なんだぜ?」
まじまじとそのキーホルダーを遠目で見てみるとその手には、「蟹缶」と書かれている蟹缶型のものがキラリと光っていた。
「限定かぁ。うっしー、蟹好きだっけ?」
「……おうよ。」
ぷいっとあからさまにアイツ目をそらしやがった。わっかりやす!!!
「ねぇ、レトさん。レトさんってさぁケーキ好き?」
「ま、まぁ、人並みには」
「ならさ、チーズケーキ余ってて……良かったら食べてくれないかな?」
「いいの?!」
「こっちも、そっちの方が有難いよ」
流石、ガッチさん。こういう所だけはちゃんとしている。
いよいよか…
「レトさん。」
「あ、今度はキヨ君か。なに?」
ガッチさんがケーキをとりに言っている間に俺は自分の役目を終わらそう。
「…レトさんはさ、おしゃれあんましないよね。」
「……なに、突然に。」
「そんなに、服に気づかってないなー…なぁんて……」
はぁ…と小さく息をついて、レトさんは指をビシッとさして口を尖らせて口を開く。
「お洒落はな、我慢してこそなんだよ?」
「持っている服でどうやるかがポイントな訳ですよ。」
「いや、分からんでもないけど持っている服少なすぎでしょ?!レトさんの場合はよ!」
「パーカーと、スウェットの2個あればいいでしょうが!」
「しまった」と言わんばかりの顔をそれを言った瞬間レトさんはした。
「れ、と、さ、ん?」
「これは違うから…ね?ね?」
「………」
呆れるままに喋っているとやって参りました。本番。
ーーー
「レトさん。ほら見て」
ガッチさんがレトさんの上からそっとケーキを下ろす。
「は?………え?………」
「レトルト、誕生日だろ?おめでとう。皆で奮発したんだからな?」
「一切れしかかってないけどね~」
「レトさんおめでと。」
「…………皆、ありがとな。」
なぜ知っているのかはなんとなく状況を察したのだろう。レトさんはうつむいてお礼をポツリと零した
ガッチさんがチーズケーキを。
うっしーがさっきのキーホルダーを。
俺は……
「なぁ、馬鹿にしてる?」
「してないしてない!」
「ふーん。じゃあ貰っとく。」
「おい、感謝しろよ。」
「www」
俺があげたのは服。ちょっとワンポイントが入ったやつ。
あと、ブレスレット。あんまり派手じゃないの。
それを渡したらレトさんは言葉とは裏腹に声が弾んでいた。
そのことを言うと怒られちゃうから言わないんだけどね。
ーーー
27日。俺は出かけることにした。
いや、新しい写真集出るらしいんだよ。コレが限定生産。だから急ぐ。
ーーー
買えた。表紙だけでも可愛い。くぅ~最高かよ!
ルンルン気分で歩く。そうすると声をかけられた。
「キヨ君?」
あの人だ。
「れ、レトさん?」
「随分とたのしそうだね。どうせ、アイドルなんじゃない?」
「あ、当たり…」
「ね?」
喋りながら、歩いて意地悪っぽくにししと笑ってくれる。
あぁ、前とは違う。
前は全く「似たような」笑顔ばかりだった。
柔らかく笑うようになった君がもっと好きになってしまった。
ふいに、上から雪がふんわりと落ちてくる。
「あー、後2日早ければね。ホワイトクリスマスだったのに…。」
「そうだね」
いつもの感じで相槌を打つ。
俺は雪ではなく、レトさんの方を見た。
俺は驚いた。
レトさんが、昨日あげたパーカーを着て、ブレスレットをしていた。
鞄にはうっしーのキーホルダーもついている。
寒いはずなのにパーカー一枚って…ばかじゃねーの……
お洒落には我慢が必要って…………
風邪ひかれたらたまったもんじゃないよ。
それでも嬉しいと思う俺が居る。
ホワイトクリスマスじゃなかったからって落ち込むなよ。
俺は君が、あなたが、レトさんが、
俺のあげた物を大事に身にまとって、優しい様な柔らかな笑顔を見せてくれて
雪の中俺と二人で歩いてくれている事が嬉しいんだよ。
レトさん。
今日が
俺にとってのホワイトクリスマスだよ。
ーーー
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